希望
16話 希望
ミカの腕を見て、呆然と立ち尽くす俺をよそにセピアはネルに駆け寄って腕を握った。
「私がこの子の全ての黒化を治す!」
セピアはミカの腕を握り深く深呼吸をすると腕から腕に移るように黒化がセピアに移っていった。
「セピア! やめろ! お前の体はどうするんだ」
「うるさい! もう誰も見捨てたくない!」
すべて黒化を移し終わるとセピアは床に疲れきって手をついた。 セピアの腕は片腕が完全に黒く染まっていた。
すぐにネルはミカに駆け寄り、体を起こし抱き寄せた。 体から黒化は引いたがまだ意識は戻ってない。
「まだだよ。 意識を引っ張らないと」
セピアは何とか立ち上がり再びミカに触れる。
「ダメだ。 もう意識がここにはない。 サナトみたいに生き返らせられないよ! でももう一回やってみる」
セピアは再び手を当てるがミカは目を開けなかった。
「サナトみたく、魂を引っ張れない体は治ったけど中身は空っぽのまま」
「誰だか、知らないけどありがとう。 ミカの体を綺麗にしてくれただけでもだいぶ私の気持ちは晴れたよ」
「私はセピアです。 この国の王族で直接ではないけれどこの子の死に関係していると思うんです。 申し訳ありません」
「いいよ、セピアはこうしてミカを綺麗にしてくれたし、私は貴族達全員を目の敵にしてるわけではないの少なくとも和解も出来るとは思ってる」
「ネルさん今日は王国の軍が明日ここを襲撃しに来るって事を伝えにきたんです。 それでアレクさんが広場で呼んでます」
「そっか、明日かその軍を率いているのはキルギス将軍?」
「そうです」
「そっか」
ネルさんは少し暗い顔を考えたような様子を見せたがすぐに顔を上げた。
「キルギスは私達に憎しみしか抱いてない。 あいつを殺さないと争いは終わらないだろう。 私がボドムサンズをイルムおじいちゃんに代わり指揮してこの争いを終わらせる」
「ネルさん俺もできる限りの事は手伝います。 どちら側にもつく気にはないけど争いを止めるためには戦います」
「戦力には数えないで期待しておくよ。 さぁアレクの所に行こう。 戦いの準備をしないと」