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第3話 社交界デビュー??

 



「さて何時までも皆を待たせる訳にも行くまい。会場へと、いざ参らん!!」


 意気揚々と立ち上がる王女殿下に色々思うところもあるが、王城まで来た目的を果たさなくてはならないもの本当で、促されるままに立ち上がる俺と美少女。


「そこな女医も共にくるがいい」


「え、あ……私もでしょうか?」


 突然、王女殿下に指名された女医は顔を真っ青にしてオロオロと俺を見る。

 いや、こっち見られても……

 正直いえば迷惑この上ないのだが、今にも死にそうな表情の女医を切り捨てることも出来ず、どうしたものかと思案する。


「王女殿下、どうしてこちらの女医殿をお連れに?」


 とりあえず理由がわからないと対策のしようもない。

 自分で言うのもなんだがシャンスは王女殿下の覚えがいい方なので、大抵の質問には快く回答してくれる。

 因みに覚えの宜しくない御仁達の末路は、正直理不尽この上ないものでしかない。

 権力者というものは異世界だろうがたいして変わらないようで、人間という種の業を嫌でも感じさせた。


「ん? シャンスこそ何を言う。怪我人に医者が付き添うのは当然であろう」


 キョトンとした表情でそう言い切られて、俺と女医は思わず顔を見合わせた。


「怪我人と言われましても彼女の治療は既に終えており、日常に支障をきたすことも無いものですが……」


「だが、完治したわけではあるまい。ならば最後まで付き添うのが医者としての職務であろう」


 王家の人間とその他の者ではその対応も違うものなのだが、どうもその辺のことを王女殿下は理解していないようで、だからと言ってここでの説得は恐らくできないだろう。


 王女殿下はもうそうする事を決定してしまっているのだから……


「女医殿。ここを任されられる者は他にいますか?」


 俺はすぐさま切り替えて女医の方へと質問を口にした。

『王女殿下の決定は覆らない』……そう言葉の裏に含めた意味を悟ったのか女医は机の上にある呼び鈴を鳴らした。


「自分一人では対応不可能になった時の緊急用の呼び鈴です。この呼び鈴の音には魔術が込められており、上層部へと直接伝わるようになっていなす」


 女医は不安そうな面立ちであるが、それでもしっかりとした口調でそう述べた。

 その言葉に俺は無言で頷き、開きっぱなしの医療室の扉の方へと視線を向ける。するとものの数分もしないうちにその扉の向こうの廊下に光の柱が降り立った。


「何事かね?」


 光の柱が消え去るったその場所に、白衣を身にまとった一人の男が佇んでいる。


「急なお呼び出しをして大変申し訳ございません」


 女医はすかさず白衣の中年男性に歩み寄ると、一礼と共にそう言葉を添えた。


「うむ、して……」


 白衣の男は急患であろうと医務室の中へと入り込んだ所で言葉を失った。


「うむ、大儀である」


 ホント、ごめん……


 俺は心の中で初対面の白衣の男に謝罪した。


 俺は悪くねぇ……と言いたいところだが、そうは言いきれない現状に泣きたくなるが、俺以上に泣きたいであろう白衣の男の胸中を思うと頭を下げる他ない。


「では、代わりの医師も来たことだ、往くぞ」


 王女殿下のご機嫌麗しゅう一言に、誰一人として否を告げること叶わず、白衣の男は訳を知ることなく医務室に一人取り残されたのであった。





「さて会場に向かう前に女医の衣装をなんとかせねばな」


「は?」


 王女殿下の言葉に女医は思わず素で返してしまい、顔を青ざめさせて慌てて口を両手で塞ぐが、等の王女陛下は気にすること無く鼻歌交じりに足を進めていく。


「大丈夫ですよ。多少のことなら、わたくしがフォローしますので、あまり気負わずに女王殿下の気まぐれにお付き合い願います」


 今にも死にそうな女医に俺はそう言って、エッセ家令嬢の上流階級スマイルを向けた。


「え、あ……」


 うん、今にも泣きだしそうだよね。


「あの……『ふぉろー』とはどう行った意味でしょうか?」


 涙目の女医にどうしたものかと考慮している最中、もう一人の被害者である美少女が愛らしく屈み俺の耳元で囁く。


 ウグッ!!


 童貞には美少女の囁きとか難易度高すぎるんですが!?


 クラクラとする頭をなんとか支えると、美少女だけでなく藁にもすがる思いの女医もうんうんと頷いている。


「えー……助け舟を出す……といった意味です」


 俺はドクドクとけたたましく高鳴る胸の内をひた隠し、二人に説明を施した。


 そういえばいくつかの現代語はこの異世界では通用しないのであったと思い返し、注意せねばと自分に言い聞かせる。


 もし、自分以外にも異世界転生なり転移なりして現代からきた人間がいたとして、友好的ならともかく悪意があったり敵意を持つものがいた場合、少々厄介なことになるからである。


 その筆頭が、シャンス・ド・エッセが本当にエッセ家当主の実の娘であるか……という疑惑が経つ。


 無論、この身体はエッセ家当主の実の娘であるが、その魂……思考が“そうである”とは言いきれないのだから……


 とはいえシャンス・ド・エッセとしてこの異世界に転生し生まれ、過ごした七年は確かに在るのである。


 勿論現代に家族の元に帰りたい気持ちは今も変わらずあり続けている。だがシャンスとして生きた月日で培った感情は、決して嘘では無いのだと俺は自負もしている。




 できれば俺が現代に帰ったなら、異世界のみんなの記憶から俺の事は消え去ってくれるといいんだけどなぁ……




「さぁ着いたぞ」


 王女殿下の声に引き戻されると、目の前には場違いだと言わんばかりのゴージャスな両開きの扉が佇んでいた。


「じょおーへいか?」


「ふふふ……今回の社交界のために急遽設えた部屋故に、少し華やかさにかけるのが難点だが、まぁお忍び故これくらいがちょうど良いと思ってな……」


 そう言って俺を見る王女殿下。


「アウトです」


「えええ!! 何故じゃ? 十分に配慮しているであろう!! セーフであろう!!」


「彼女たちを見て下さい」


 駄々を捏ねる王女殿下に呆然と扉を見つめる美少女と女医の姿を指し示しす俺。


「うむむむむ……」


 美人は拗ねた顔も美しい。


 ホント世の中不公平なのは現代だろうが異世界だろうが、そこは『平等』なんだなぁ……と思わずにはいられない俺であった。







かなりご無沙汰しております。

もう誰も覚えていないでしょうが、執筆者は現在進行形です。

そして何故か社交界デビューが未だ果たされないシャンスでありました。

次回こそは……と思うもののどうなることやら……

次話更新予定は未定です。

悪しからずご容赦くださいませ。

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