夢の世界編:1話~8話ダイジェスト
主人公、明石カケルはどこにでもいるごく普通の男子高の3年生、強いて特徴を上げるとすれば普段からろくに勉強せず、授業中プログラミングでソフトを作ってしまうほどパソコンが好きなカケルはある日下駄箱に手紙が入っているのを見つける。中は放課後コンピュータ室へ一人で来てほしいという内容だった。
「もしかして僕にもモテ期到来か……?」
幼なじみのリョウやメイに茶化されつつも普段モテないカケルはコンピュータ室へ行くが教室は無人だった。まだ来ていないのかと待ち続けるカケル。夕日が差し始めたころ、コンピュータ室の明かりがすべて消える。カケルが脅えているとパソコンの画面が真っ赤になり真ん中に不気味なデスマスクが現れる。カケルの前のデスマスクは突如として笑い声を上げるとそれに反応したかのようにコンピュータ室中のパソコン全てにデスマスクが現れ笑いだし、カケルは恐怖のあまり気を失う。
始業のチャイムでカケルが意識を取り戻すと薄暗いオフィスにいた。気絶する前に来ていた制服ではなくスーツを着ており、目の前のデスクにはぼうっと光るブルースクリーンと子供の落書きのようにめちゃめちゃに書き殴られた書類が置かれていた。
そういえばカケルは企業のホームページの隅に高速回転するテディベアのイラストを仕込む仕事の最中だったことを思い出す。急いで作業に取り掛かりキーボードをたたき始めるとオフィスの扉が開きカマキリに思い切り顔面パンチした顔の上司が現れまだノルマまで34テディベアも残っていると暴れ出した。
「テディが! テディが! テディが!」
絶叫しながらデスクの上にあるものを全てなぎ倒した後カマキリ上司は帰って行った。
気を取り直してパソコンを机に戻し作業を再開しようとするとアラームが鳴るとともに画面上にコンソールが立ち上がった。しかしコンソールに表示される文字は散らばる資料に書いてあったような汚く読めない字だけだった。
しばらく文字が勝手に表示されていったが、じきにその入力は止まった。するとスピーカーから人工音声が響いた。
『視覚による情報伝達は大幅に阻害されることが判明しました。これより音声によるコミュニケーションに切り替えます』
突然話しかけてきたDD(DreamDaemon)と名乗るAIによるとこの世界は人の夢の集合体であり、カケルは何らかの理由でこの世界に迷い込んでしまったとのことだった。先ほどまでの支離滅裂な会話やそれを受け入れていた自分、視覚や物理法則を無視した世界に納得のいったカケル。
このまま夢の世界に居続けると魂が夢の世界に定着してしまい現実に帰ってこられなくなるらしい。そのことを聞いたカケルは現実へと戻ることができる『夢現の扉』を探すことにした。
「夢だって自覚したならこの世界を思い通りにできたりしないのかい?」
『この世界は人の夢の集合体です。あなただけの夢ではありませんのでいわゆる明晰夢のように自由自在というわけにはいきません』
パソコンから持っている携帯にDDを移し替えるとカケルとDDの夢の世界の探検が始まった。ひたすら穴を飛び越えようとして落下する人々や名状しがたい、異臭を放った粘液が自分を殺す瞬間に消えていくなど夢特有の現象を振り切りながら進む。
「幻聴と幻視と幻臭がひどい。あと口に脱脂粉乳をぶち込まれてる感じがする」
『体調に異常はありません。進みましょう』
長い道のりの果てに暗いカートゥーン調の摩天楼の中で夢現の扉を見つけたカケル。DDが静止するのを聞かずにカケルが近づこうとした瞬間、扉が開きまばゆい光が当たりを照らす。光を受けカケルが意識を手放す瞬間、DDの声が聞こえたような気がした。