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でもね、私は逃げるよ。
捕まっちゃいけない気がする。
それにかなり視線が集まってる様な気がする。
棘の様な纏わり付く視線。
貫かれたり纏わり付いたり忙しいなぁもう。
それよりも逃げなきゃ。
私は生きたいんだよ。
ここで死ぬ訳にはいかない。
「それじゃ!」
「待ってください」
眼鏡を手に走ろうとした途端に腕を掴まれた。
なに。
ハシビロコウが迫ってる。
「あなたの…名前をお伺いしたいです」
「……………」
マズイ…なにがマズイって眼鏡と三つ編みを取った状態で名前を言っちゃダメなのだ。
バレるとそれなりに怒られる。
そうだ、こう言う時に偽名を考えたんだよ。
そうだそうだそうだった。
「………あー、佐怒賀皐。佐賀の間に怒るを入れて佐怒賀。コウは皐月の皐」
「佐怒賀さん…珍しい名字ですね」
「そ、そうかな?」
「また…会えますか?」
「……どーだろーねー。まぁ気まぐれって事で。じゃあね!」
無理やり切り上げて全力で走る。
あ。
私あの人の名前聞いてないや。
千春?だっけ?
まぁまた会った時に名前を聞けばいいし。
すぐ会えるでしょ。
「しっかしここどこだろー」
ひと気のない森の中でレンズの割れた眼鏡をかけて辺りを見回す。
さーここはどこかなーどこを見渡しても木だよ。
木しかない。
人ー。人はいませんかねー。
……迷子
「とかこの私がなるわけないじゃん?迷子とか小学生じゃあるまいし適当に歩いてけばどこかしらには出るし」
………強がってないし。
私全然強がってなんてないし。
………………
どこだろうここ。
レンズも亀裂が入ってるから微妙に見えずらい。
「おい貴様。この森で何をしている」
「へ?」
声をかけられて後ろを振り向くと本物の刀。
………うわぁ
刀を向けているのは顔が整い過ぎている女性。
凄く…美人…です。
その後ろにガスマスクの人がいる。
……ガスマスク?え?
空気中の何かしらを受け付けない体質なの?
「あれ?マリア、この子新入生だよ。多分Sクラスの方の」
「何?それを早く言え。無駄な抜刀は嫌いだ」
「待ってって止めたでしょ?それなのに勝手にズカズカ進んでったのはマリアだよ?」
「知らぬ。妾には関係ない。ただ誰であろうとここにいることは許されん…新入生以外はな」
刀を鞘に納めて腕組みをする女性と言ったほうがいい女子の先輩。
2年生は灰色で3年生が黒のネクタイだったはずだから、この人たちは3年生の先輩ということになる。
「ごめんね。この森の中をウロウロしてもらうと困るから声かけただけで、こいつが刀を向けるのはいつもの事だから」
「そ、そうですか…」
危ない。
この学園超危ない怖い。
「まぁ気にするな。妾達は名乗るほどの者ではない。まぁ、どうせこれから会うことにはなるだろうがな」
「そ、そうなんですか…」
「マリア。長居はできないから行こう。まったく…余計な事をしでかしそうな親衛隊だよ」
「全くだな。仕事が増えるのが早いな。今年は例年以上に酷くなりそうだ」
よくわからないことを互いに言いながら2人で揃ってどこかへ行ってしまった。
ガスマスクと帯刀したどえらい別嬪さんだったら確かに個性のある学園でも目立ちそう。
どえらい別嬪さんという言い方がおっさんくさいって?
お黙り。
でもあのガスマスクの先輩もだいぶイケメンの中に入ると思う。
ガスマスクさえなければマトモな人だろうなとは思う。
「あ、あのっ!」
とぼとぼと歩いていると少し照れて緊張している声が聞こえた。
声の主はかなり可愛い女子。
私が男なら結婚できる位に可愛い。
イチコロです。可愛い。
「私と付き合ってください!」
そんなぁ。
神様は残酷だね。なんで私が女なの。
大きな栗っぽい木の下で女の子の死角になるように告白相手を呪う。
いや、別に女性が好きというわけではないよ。
よーしよしって頭を撫でながら愛でたいだけ。
女の子は赤面してるから告白でもしてるのかしら。
いや、言ってることが告白してるから当たり前か。
「断る」
はぁぁ?
何様?
こんな可愛い子目に涙を溜めてるじゃないか。
ふざけるんじゃない。
女の子泣かせたら数倍の後悔が来るように願ってます。
「ど、どうして…」
「俺はお前やその他の女と一緒になるつもりはない」
「そんな!私との約束を覚えていないんですか?![絶対にまた私と遊んでね]と!」
「………それを何処で聞いた。お前みたいな擬きがその言葉を言う資格はない。さっさと消えろ」
「そ、んな……私だよっ!どうして信じてくれないの…」
凄く今苦しい。
喉元から何かがせり上がってくる。
【絶対にまた僕と遊ぼ…?約束!……】
今回も重要な新キャラが3名登場です(投稿の時間違えて2人にしてましたすみません)
最後の暴言男子は後程結構な頻度で出てきます
そして委員長ズの2人だけイラストサイトで見かけたキャラを元に作りました。
委員長がめちゃくちゃキャラが濃いと委員もキャラが濃いです