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「一度だけ見たことがあるな。髪の毛はぼさぼさでいつも絵具まみれでつなぎを着ていた。なにより医療用眼帯をつけていた。馴れ馴れしく先輩方をパイセンと呼べる後輩は彼女だけしかいない」

「うわぁ、なんか想像しただけですごい人」

「実際に凄い人だ。«名無しの天才画家»。それがその人の昔の呼び名だった」



懐かしむように微笑む。

どこか寂しそう。

葛城先輩のらしくない顔は一瞬で何時もの真面目そうな顔に変った。



「長話をしすぎたな。部屋に戻れ。あぁ、あとこれを寮長から渡すように言われたんだ。受け取れ」



そう言われて一通の手紙を渡された。

差し出し人は………お姉ちゃん!?

吃驚しすぎて手紙を落としそうになる。



「寮長も毛利の姉……まぁ«金剛石の姫»の知り合いらしいからな。その内寮長にも挨拶しとけよ。楽しみにお茶請けを用意して待ってるらしいからな」

「お姉ちゃんの知り合いの人って本当に沢山いるんですね……」

「一人一人キャラが濃いから……まぁ……頑張れ」

「そうも目をそらされて言われると会いたくないですね…」



葛城先輩は苦笑いと共に去って行った。

早く手紙を見たいので小走りで部屋に向かう。

部屋に入ってすぐに手紙の内容を確認する。





的へ


まずは入学おめでとう。薙君も一緒に入ったそうね。

数日過ごしてみてどうだった?楽しい?

私がなんて呼ばれてるか知られちゃったかしら。

私にとってはただのあだ名だから的が私のせいで何を言われようとも気にしなくっていいわ。

もし的が姫になるのなら私は大歓迎よ。

だけど周りに何を言われても決めるのは貴女なのだから、自分を一番に考えなさい。

留学に一区切り付いたら一度日本に帰ろうと思っているからお土産を楽しみにしててね。

学園長にもよろしくいっといて?


楓より




懐かしいお姉ちゃんの字。

手紙を出してくるなんて思わなかったけど、最近は電話に出れないくらい忙しかったらしいから一安心。

お姉ちゃんが一回でも日本に帰ってくるのはすごく嬉しい。

姫なんてなるつもりは無いけど、私は私なりに恥じない学園生活を送ってみせよう。

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