先輩王子様
錦木side
「あんな子確かにいたねぇ。皆ざわざわしてた気がする。入学式以降全く見なくなったからどっかにでも行ったのかと思ったら、人ってメガネと髪型で印象変わるもんだねぇ。面白いやあの子」
「おいおい、白銀のお気に入りなんだぞ。知れたらただじゃおかなくなる」
あの他人なんてどうでもよさそうな斑鳩君が異様に執着する子はどれだけ綺麗なのかと思ってた。
少し前に渡されたお姫様候補の書類には写真は無く、記されていたのはあの金剛石と双子委員長たちの妹という情報だけ。
それだけで書類に目を通した人間はもうこの子でいいんじゃないかと声を揃えて言ったがあの白銀さんだけは許さなかった。
「あの先輩達と同じラインに立てるほど出来上がってると思う?写真もこの子だけ付いていないのはどうして?もしかしてこの妹さんだけ美人じゃないとか?ありえそう!何はともあれこの子が入学してから実際に見て話して本質を見抜いてから私は考えさせてもらうよ?」
白銀さんは金剛石の先輩をよく知ってる。
零囗と葛城はそれぞれ委員長をしていた双子の先輩をよく知っている。
だからこそ俺はこの3人に任せようと思ったが、さっきの会話で気が変わった。
白銀さんがわざわざ会いに行くだけはある。
綺麗ではない。
無垢でまだ子供。
何も知らずに入ってきた割にはなんだかんだで順応してるみたいだし。
「あ~白銀さんに会うよりもあの毛利ちゃんと話している方がよっぽど自分の人生に花が咲くよね~」
「正直、俺もメガネでお下げしてる姿しか間近で見たことないが、あの変貌ぶりはすごいな。覚えてるか?小等部の時に見た金剛石………楓先輩の姿」
「ほんと…………ムカつく位そっくりだよね……」
誰もが憧れる黄金期のSクラス。
そんな人達が一度だけ俺のクラスに来たことがあった。
どれだけ時が経とうとも、色鮮やかに思い出す。
『いやぁ今どきの子ってこんな風に勉強してるんだね~偉い偉い』
『おい、なにをしている。昼休みの時間とはいえ騒ぎになるのは止めろ』
『ふと思ったんだけど君はなにやら虐めのようなものを受けているみたいだね』
『……おい!楓!』
『いい?辛い思いは必ずプラスになる。苦しかったことも悲しかったこともいつか必ず花咲くときがある。辛いことや悲しいことは、幸せになる絶対条件。花が開いて、実を結ぶ時に諦めちゃいけない。頑張るんだ、君。私だって色々されたよ?うん。投げつけられたものは倍の数で返すのが道理ってもんよ』
『幼い子供に何を教えてるんだ!貴様!』
『うわぁ次期学園長が怒ったぞ~』
当時はその言葉の意味を理解していなくても、救われた気がした。
そして俺はその言葉を糧に生きてきた。
多分右隣のこいつもここにはいない葛城も救われたんだと思う。




