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全力で上半身と下半身をピッタリくっつける。

どうして隙間がないんだろう。

胸がないとここまで悲しくなるんだね。



「まぁ!薙様と仰いますのね!ワタクシの名は…」

「…………的、誰?こいつ」



今言ってたと思うけど。

名乗ってたと思うけど。

私も聞いてないよ。



「そちらの方なぞ気にせずにワタクシと薙様だけでお話でも致しませんか?」

「的、こいつきめぇんだけど。そして香水くせぇ。臭い体臭隠そうとして頑張ってるの丸見えなんだけど」

「薙様はこの香水がお気に召しませんでしたか?香水を大切にするフランスの香水制作の職人に作らせたものですの。オーダーメイドの香水ですので世界に一つだけですわ!」

「トイレの芳香剤と同じ匂い。というか芳香剤の方がまだマシ。香水ってのは体を洗わないのが習慣だった貴族がそのくっさい体臭を隠す為につけたんだよ。てことはアンタもか。ねぇ?的」

「お上品な香りだと思っていたのですが、薙様がそう仰るのであれば作り直しをさせましょう」

「全身消毒液の匂いの方がよっぽどマシ。そして厚化粧の顔で近づかないでくれる?キモい」



かなり匂いのキツい香水を撒き散らす可愛らしい女の子に珍しく辛辣な薙様。

確かにトイレの芳香剤と同じ匂いではあるけどそこまで言うか?

あぁ、でも眼鏡の奥の瞳が怒りを帯びてきてる…流石に怒った薙ちゃんは手に負えないよ…

そうだ。逃げよう。



「そういえば先程薙様がSクラスだと小耳に挟みましたわ。羨ましい限りです…!」



その言葉で周りの女子が一斉に薙ちゃんに群がった。

発情期の雌犬みたい。

あれ……でもこれって………

薙ちゃんから逃げるチャンスじゃないですかー

よし。即行動。

三つ編みを解いて、頭の後ろで結ぶ。

所謂ポニーテールなるものだよね。

結び終わって勝ち誇った顔で薙ちゃんの方を見ると、目が据わっていた…

冷や汗が止まらない…

あかんやつや……これあかんやつ……



「ってことで薙様!ワタシ先行ッテマス!」

「はぁ?!ちょっ、まっ……邪魔ァ!地面に頭擦り付けてろ豚ァ!」

「薙様のご命令であれば喜んで地に顔を付けておりますわ!」



なぁにこのプレイ。

兎に角今の薙ちゃんとは一緒にいたくない。

私は平凡な生活を送りたいだけで、初日からこんなのとか望んでない!

上下に揺れる眼鏡を押さえつつ走る。



「やっふーい!自由だー!……でも体力の限界が近い気が…げふっ!」



小石に躓いて地面と熱烈なキッスをするかの如く体が傾く。

これは顔中にキスマーク(土)と予感する。

目をつぶってキッスを待っていても何時迄もこない。

どういうこと。



「まったく…危ない人ですね。大丈夫ですか?」



背中から誰かの声が聞こえる。


…………なんてこった。

メガネがない。

絶対に怒られる。

主に薙ちゃん…というよりもハシビロコウかな。



「気でも失ってます?」

「大丈夫です」



ものすごくイケメンな好青年に腕を掴まれ、転ぶところを助けてもらった。

普通の女子ならトゥンク…なんだろうけど、私まったくトゥンクもズキューンッもないよ。

だってイケメンだったら幼馴染みって枠で居ますし。

好青年は苦笑いをして立たせてくれた。



「女子がスカートで全力疾走します?」

「するする。というかしないの?制服で全力疾走って青春って感じするじゃん」

「青春なんて久々に聞きますよ…」

「それにパンチラ天国だよ?パラダイスだよ?」

「変態ですかあなた。というか撫子(なでしこ)ですかあなたは」



なでしこ?

誰だろう。というか人なのか。

いや、人だな。

比べられるのは人のみだと信じたい。

薙ちゃんはミジンコとかミドリムシとか人外と私を比較するけど。

私を助けてくれた人はそっぽを向いている。



「それよりも私の眼鏡知りません?」

「は?メガ……」



あ。漸く目が合った。

なんだか助けてくれたのに目が合わないんだよね。

合わせてくれないって言う方があってるかな。

目が合った瞬間、石にでもなったかの様に固まった。



「千春ーなんかレンズの割れた眼鏡あるよー誰のだろう?千春?あれ?うぉ!久々の美じ…………」



あれ。

後ろからひょこっと出てきた人も固まった。

私はメデューサにでもなっちゃったの?

いや、薙ちゃん程人間捨ててないし。

私は人間、あいむひゅーまん。

薙ちゃんは人間の皮を被った人外だから。

あれ…メガネ……は…



「あなたが持ってたんだね!眼鏡か、返してもらうよ!私、朴念仁ハシビロコウに追われてるから。じゃあね名無しさん一号二号!」

「こんの能天気馬鹿!メガネを掛けんかくそったれぇぇ!邪魔!どいて!」

「ひぃハシビロコウ来ないで!」



後から来た人の掌には私の眼鏡。

だけどもレンズがお陀仏状態。

スペアは寮にしかないよ…

無理矢理奪い取れば背後から怒気を孕んだ声。

ああああハシビロコウが…

それでも眼鏡をかけろと言うあたり優しいなぁ…

新キャラが二名登場です

人間って香水つけ始めの時って自分が付けてる香水の匂いが分かるんで控えめに香ってくるんですけど、匂いに慣れてくると香水の匂いを嗅いでいたくてこれでもかというほどくっさい匂いを振りまく人っていますよね

ほんとくっさいですよね、香水臭い人間の通った道がよくわかるくらいに匂わせてると体臭の方がまだマシだと思える時ありません?

満員電車の時にそんな奴と遭遇するだけで乗り物酔いする作者です

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