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「僕も、コンテストを廃止するのは賛成しかねます。執務は山のように出ますが地味に楽しみにしている暇つぶしですし」
なにやらまたもや違う制服の人が立ちあがった。
細いフレームのメガネをくいと上げて不敵な笑みを浮かべるイケメン。
目立つの好きすぎるだろ。
なんなんだこの目立ちたがりな先輩達は。
「緑木紗久音生徒会長。お前もか………」
なんだか学園長はめんどくさそうに顔を顰めている。
面倒なんだろうな…………
美男な生徒会長と刀振りかざす美女とガスマスクを被るイケメン。
……………誰が見てもわかる厄介な人達だ。
「休息を与えてもらわなければ死んでしまいますよ………目安箱なんて日々王子や姫のことで一杯一杯だというのに………それでコンテストを廃止するのであればボイコットしますよ、我々生徒会は」
「風紀委員会もストライキしよっかなー?」
「成敗委員会も同盟罷業でもするか。なぁ!委員たち」
「「「「「「「「「「「はい」」」」」」」」」
次々と立ち上がる何十人もの生徒。
うわ…………木刀やらメリケンサックやら持ち込んでるぞ………
流石に他の生徒も引いている。
Sクラスの皆は引く所か、静観していた。
これはコンテストなるものを撫子か葵ちゃんに教えてもらわなければ。
それよりも学園長は……
「………ふざけるな。生徒風情が」
キレた。簡単にキレた。
生徒風情が、なんて言っちゃってるよ。
この学園大丈夫なのかな。
いや、解ってた。
大丈夫じゃない。
「暇つぶし程度でコンテストを利用しているとは悲しみを通り越して呆れる」
「呆れてるのはこっち。なんでコンテストしないの?生徒の士気が下がるでしょ?」
「士気もへったくれもあるものか。PTAからだ。苦情がきた。私の子供が選ばれないなら廃止にすべきだと。まったく………コレを廃止にする気はなかったがな……PTAが抗議するなどと戯言を言うのだ。中にはそれなりの人間もいるからな。大事にされたら困る」
なるほど…………他人のせいで皆の士気が下がるのか………
それはいけないよね。
なんだって自分の娘息子が選ばれないからって腹いせみたいに廃止を求めるのかな……
それに加わってる中にはお偉いさんがいるみたいだし……
我がまま言う子供かい。
「そうですかそうですか。なるほど。では学園長は廃止にすべきではないと思っているのですね」
「そうだな。PTAと教育委員会か?が手を組んだと聞いたからな。やっかいな禿げ頭共を相手にはしたくないのでな」
生徒会長が不敵な笑みを浮かべる。
その笑みを横目で見た見たガスマスク先輩はガスマスクを着用した。
うん。
やっぱりあの時のガスマスク先輩だ。
ゼロクニだっけ?苗字は。
女子の先輩はどこから取り出したのかわからないダガーナイフをとりだした。
どっから出てきたんだよ。
本当にどこから出したんだよそんな鋭利な刃物。
言っておくけど、ダガーナイフをはじめとする木刀・メリケンサックとか他人を傷つけるようなものは日常的に持っちゃいけないよ!
「僕は生徒会長です。生徒がより過ごしやすく、より楽しい学園生活を送ってほしいと日々頑張ってます。それなのに結構楽しみにしている行事を廃止するのは僕の代なんて許せません」
「ほんとそれ」
「妾の代で廃止などはさせぬ」
結局自分の代で廃止させたくないだけかい。
なんか変な期待を抱いちゃったじゃんかよ。
なんか色々と絶望したわ。
「それに邪魔をしているのがPTAなのなら役員の子供を晒し者にすればいい。どう思うと思います?学園長。この秀明学園という場で子供が晒し者にされている親の気分は。さぞ、気持ちのいいことでしょうねぇ?なんせ晒し者にされるという事は有名になることですからね~清々しく誇れるでしょう。子は秀明学園で晒し者にされていると胸を張って言えるでしょう?」
薄ら笑いを浮かべる表情が怖い。
この生徒会長かなり面倒な人だなぁと思う。
眼鏡の奥で物語ってる。
暇つぶしのコンテスト?の為には邪魔者は容赦はしない、と。
簡単に言えばこれは取引なんだろう。
子供を人質にして親を従わせる。
学園長は厳しい表情で黙っている。
静寂の中、誰かが笑い出した。
それは今立っている生徒会長達ではない。
生徒でもない。
教師陣の中から聞えた。
撫子や葵ちゃんも予想だにしていなかったらしく、吃驚して声の先に振り向いた。
この声には聞き覚えがある。
お姉ちゃんに似てやけに響く笑い声。
先生が座っている席の前方、絵具まみれのつなぎを着て手を叩いて笑っている。
「何がおかしい。特別講師………今日から新任か」
「なぁにが可笑しいってそりゃあ……生徒に従えって言われてるも同然だし、今時の親も親だよ。命の危険もないのに廃止とか……笑わせないでよね。俺は認めない」
「いきなり何を言う。お前には「発言権ないって?壇上に立って自己紹介することはできるから一応発言権はあるよ」…………もういい、勝手にしろ」
不機嫌な顔で学園長は彼にマイクを譲る。
イケメンは素敵な笑顔で自己紹介を始めた。
「こんにちは、今日から講師として働きます弓納持奏です。よろしくね!」
生徒会長のご登場です。
この生徒会長は眼鏡をかけたむっつりスケベにしようと深夜テンションで考えたキャラです
作ってみたら見事にそんな事なかったという事は言わないでください
むっつりスケベ感は別作品として作ろうと思っている過去編にてだそうかなと思っています