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「デロンシャン様がいらっしゃらないわ!!」
「それよりもあのメガネの殿方見えます?斑鳩様と申しまして新しい王子だそうです」
「まぁ!!!親衛隊は入らないと決めていましたが斑鳩様の親衛隊には入ろうかしら!」
「見ろよ………王寄さんと大和泉さんの間に挟まれてる子…………かわいすぎないか?」
「あの子と女子が騒ぎ立ててる奴が本物の新入生なんだろ?くっそ可愛すぎ」
「でもさっきすれ違った奴の話を聞くと前後の二人が殺気立って近づかせないようにしてるんだと」
「うっわ…こわ………王寄と大和泉は敵に回したくないな……」
「あれが斑鳩様と共にSクラスに入った女ですって。服に着させてもらってるのが丸わかりですわ」
「しかもセーラー服なぞ……古臭い」
「あんな女がSクラスに入るだなんて認められませんわ!」
「ワタクシたちの方が何倍もSクラスにふさわしいというのに!今度お父様づてで学園長に言わせてもらおうかしら……」
なんだここ……………
名門・有名・世界屈指
それを掲げるこの学園の中身は体は大人に近くても思考は大人とは程遠い。
腹が立ってくる。
私を志望校に行かせてほしい。
今すぐ。
「的、こらえてください」
「……………無理って言ったら?」
「無理矢理にでもねじ伏せますよ?」
…………仕方ない。
私はお姉ちゃんのようになって、お姉ちゃんが残したものを見つけなきゃ。
堪えろ、自分。
『全校生揃ったな。おい、はじめろ』
「は、はいっ!ゴホンッ………これより新入生歓迎会を始めます。学園長の話。学園長、よろしくお願いします」
その言葉で立ち上がる長身の男性。
隣に座っている葵ちゃんや撫子も緊張している。
というかみんな?
館内に張りつめた空気が漂う。
壇上に上がったのはスーツを着こなした若い男性。
琥珀の様な冷たい瞳。
黒髪をオールバックにしている。
居るだけで威圧する人だけどある人の前では振り回される可哀そうな人。
「新入生は先程ぶりだな。在校生はひと月ぶりだな。………この中に一人だけ入学式に出ていなかった者がいるからな。もう一度自己紹介しよう」
なんだか睨まれたような気がする。
私知らないし。
それよりも保健室半壊してますよ。
「俺が秀明学園学園長だ」
自己紹介と言う割には自分名前言ってないね!
それを自己紹介というの?
「今回は新入生歓迎会と称して集まってもらったが、すまんな。部活や委員会の紹介はなしだ。俺から貴様らに重要な話がある。まずは一つ目、斑鳩薙新入生。壇上に上がれ」
薙ちゃんが立ち上がり壇上に登っていった。
朝の制服とは違う撫子達と同じ真っ黒な軍服のような制服でネクタイが翡翠の色をしている。
薙ちゃんの好きな色…
「斑鳩薙新入生は本日から《王子》になる。数年前から永久欠番していた《翠の王子》だ」
耐えきれないといった様な悲鳴がする。
講義館を揺らす絶叫。
そんな……薙ちゃん……
そんな苦しそうな顔をしないでよ…
いいんだよ……私のことは気にしなくて…
だから罪悪感で一杯の瞳でこっちを見ないで…薙ちゃんが決めた事には何も、言わないから。
「静まれ。話ができん。……斑鳩薙新入生、戻っていいぞ。最近親衛隊がイロイロとやっているようだが……これ以上何かを起こせば警察沙汰になることを忘れるな。日本の警察とは限らないぞ。肝に命じておくように」
その言葉で騒ぎは静まった。
親衛隊と呼ばれる人も中に絶対いるが、どうやらシラをきるらしい。
「二つ目だが……今年の文化祭はコンテストは行わない」
その言葉に再び周りがざわめき立つ。
コンテスト?
大声?早食い?早飲み?
なんだろう……面白いのかな、そのコンテストは。
「はーいはーい。ストップ止まって学園長」
「ふざけるな。それじゃあ暇であろう。妾は認めん」
唐突に男女の声が響いた。
声がした方に振り向けば、在校生の席の一番前で見たことのある男女が仲良く並んで立っていた。
男子の先輩と目が合い、小さくだが手を振られた。
………誰だろう?
女子の先輩は覚えている。
さっき森の中で会った帯刀美女だ。
もしかして………隣にいる人は…………
分かった……ガスマスク先輩ですね……
ガスマスク外せばだいぶマシな顔してるのになんでガスマスクしてるの。
そして2人とも通常の制服じゃない。
………………まさか……
「なんだ、零囗恒河沙風紀委員長と葛城マリア成敗委員長。Sクラスといえど、立場を考えろ」
「却下する。妾の唯一の暇つぶしを潰す気か」
「そうだね、マリアの言うとおりだ。暇つぶしを潰してもらっちゃこまるよ?学園長」
「貴様ら………文化祭を暇つぶしだといったか?」
「いんや?暇つぶしはコンテストだけ」
コンテストは暇つぶしになるらしい。
なんなんだろ……何の暇つぶしなんだろう。
学園の学園長が出てきました
学園長だけ初期の頃からキャラが変わっていない数少ないキャラです
主人公でさえも昔はバカで大分煩い子でした
「うわー!薙ちゃんが笑ってる!これ絶対明日にでも雪振るって!異常気象だよ!」
みたいなキャラでした
でも作者がキャラのテンションに付いていけずに今の主人公になってます
懐かしいです