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「どうします?的は普段メガネをかけているようですし…いつもの恰好にも似合うようなコーディネートをしたいのですが……」
「そうだな………フロックコートに赤いチェックのスカートなんてどうだ?」
「チェックでしたら私たちと同じ上着のほうがよろしいのでは?」
「それじゃつまらないだろう。この軍服であれば的はセーラー服のほうがいい」
「黒いセーラー服なんてありましたか?」
「多分あるはずだ。見つからなければ他のを考えればいい」
《全校生へ連絡します。新入生歓迎会10分前になりました。在校生は廊下に整列次第第一講義館へ入場してください》
そんな放送が入っても二人は様々な服を見比べてはあーだこーだと言っている。
普通の制服とは違う黒や赤、白など。
果てにはコスプレじみたものまで。
ナース服を片手に撫子が寄ってきた時思い切りぶん殴ってしまったのは秘密。
ここには変なものまで置いてあるんだなぁ…
Sクラスの生徒だけが普通の制服以外にも最低一着は制服と呼べるものを作るだなんて変だよね…
「決まりましたわ!」
そんな声が聞こえたのはSクラスの入場開始の放送が入ってからだった。
二人が選んだのは黒いセーラー服。
まるでアニメ。
セーラー服は上下が繋がっているタイプで、腹部の赤いリボンを境にプリーツになっている。
どちらかというとセーラー服に似たワンピースだ。
私が着て膝上10センチ程度で、この上に何か羽織れば普通に私服だ。
リボンにはSと金の刺繍が入っている。
二人の軍服のような制服の白いネクタイもSが銀の刺繍で大きく施されている。
「まぁ!!本当に愛らしい!こんなにこの服が似合う子は中々いませんわ!」
「最後に着られたのは何年前だ?私たちが初等科に入学したかそれくらいじゃないか?初等科にいる頃だから…6年前後か?見たことはあるからそれ以来着られていないだろう」
「そうですわね…」
そんな昔に着られてたのかこれ………
皺ひとつなかったから新しいのかと思ったら………
数年着られていないなんて一目じゃわからない。
「でもこの制服が入っていたのは開かずのロッカーだったのですよね。なぜ開いてたのでしょうか……」
「さぁな。ロッカーの暗証番号を誰かが開けたんだろう」
一つだけやけに傷の多いちょっと古めなロッカーがある。
そこからこのセーラー服は出てきたらしい。
「まぁ気にせずに。担任が今頃焦ってるでしょうね」
「は、早く行かなくていいの?」
「的がいれば遅れても大丈夫ですわ」
「それに撫子もいるしな。撫子には誰も口出しできない」
「そうですとも!私に仇なす者に容赦なんて大人な事できませんわ。たとえ生徒を纏める生徒会長でも委員を纏める委員長であろうと王子や姫であろうと私は私の道を行きますの。それが私のポリシーです」
笑顔のはずなのに目が笑っていない……
いや、自分の道を突き通すのってすごいとは思うけど素直に褒められない言い方しないでよ…
「まぁ悠長にしすぎては学園長に怒られますからね。第一講義館に向かいましょう」
「そうだな、行くぞ的」
二人に手を引っ張られ第一講義館なる場所に向かう。
なんだか自分で言うのも何だけど、2人に守られてる感が半端ない。
行く先々で他の人とすれ違うけど、皆2人を見て顔を青くしている。
後ろにいてもわかる近づくな感。
威圧の仕方に慣れすぎて怖い。
それに服装が軍人さんじみてるから余計な圧力もかかってる。
なんてこった。
「私達の前を横切る人間は切り捨て御免ですわ」
「いや、これ参覲交代じゃないよ」
「まぁ!的ってば可愛い顔してボケかなと思ったらツッコミでしたのね!」
「やめとけ、的。撫子の戯言に付き合うとろくなことにはならないぞ」
威圧感があるけど、二人はかなり優しい。
どうして私の様な新参者に構うのか。
聞いてみよう。
「ねぇねぇ二人とも」
「どういたしました?」
「どうした」
「なんで私に優しいの?」
暫しの沈黙。
二人爆笑。
なんだかすごく恥ずかしくなってきた。
ど直球に何聞いちゃってるんだろう私。
「的はメガネさえ外せば可愛らしいですし、面白いですし、なんたってSクラスの新しいクラスメイトですからね!私達位しか女子はいませんから」
「もう1人は他学年の先輩と一緒になって図書室の本を全部読もうとして図書室の引きこもりになったからな。生きてるのか?アイツ」
「この前六法全書に手を出して死にかけてるってメールが来たので生きているはずですわ」
「まあそんなんで私と撫子しか教室にはいないからな。そこに新しい人物が入ってくるのは歓迎だ」
裏表のない言葉。
多分二人は笑っていると思う。
恥ずかしくて二人の顔が見えないから多分だけど。
ありきたりな言葉でも言われると結構嬉しい。
と共に恥ずかしい。
「おーい!そこの撫子達!」
「俯いてるのだれー?」
「薙の言っていた幼馴染では?」
「薙くーん。ほらー君が発狂しかけるぐらい心配してた幼馴染さん来たよー疾風ー?どしたの?」
「すぐ横で喚くな。ウザったい」
「……………」
「怒ってる?」
「なんで類が的が言うはずのセリフを言うの」
「だって無視するから怒ってるのかなーって」
「ほらほら君たちー!整列する!ほら!早く!」
「早くするのは先生の顔を整形することでは?私が殴って矯正してあげましょう!我ながら名案です!」
「よし、撫子。まずはお前のつら貸せ」
やけに騒々しい。
第一講義館なるものの入り口付近をSクラスが占領している様だ。
「るいるい!今日も可愛いですわね!なめまわしたい位!」
「うっわ気持ち悪!」
「今日しているヘアピンもお洒落ですこと。後程それを譲ってくださいな。親衛隊に売りさばいて私腹を肥やしますから」
「転売は止めて?ちーちゃあん、撫子が気持ち悪いー」
「撫子、そろそろ怒るよ?」
「そういえば食堂の倬ちゃんから新作デザートの試食をお願いされているんでしたわ。でも都合が合わなくていけそうにありません…どうですか?千春。食べてみませんか?新作スイーツ」
「ゴメン、類」
「裏切り者ぉ!」
「………皆、仲良しなんだね」
「あぁ、騒がしいだろう?周りがどう言おうと…私たちは子供なんだ。こういう場ぐらいでしか騒げないんだ。大目に見てやってくれ」
隣で葵ちゃんが笑って言った。
なんだか一日に3回更新するって結構疲れるんですね…
本当に今日はびっくりしました…ジャンル別とはいえ、34位から18位に上がっていたことが…
本当にありがとうございます。
なんだか今日はずっと感謝を述べているような気がします
明日からまた0時更新のみになっちゃいますが、今後ともよろしくお願いします