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「その………王子ってなんですか?」
「あれ?知ってて入ってきたのかと思ってたけど……仕方ないか。楓さんも伝えてないのかぁ……絶対説明が面倒だから押し付けたんだろうなぁ……この学園には«王子と姫»っていう役割があるんだ。全学年のSクラスの生徒から更に厳選して決める役割なのだけど。暇そうにしている学園の生徒を盛り上げるために必要なんだ。簡単に言えば…そうだね…オモチャってとこかな」
「…………そんな役割になりたい人なんているんですか?」
「いるよ。腐るほどいる。ここは秀明学園で日本に留まらずに世界中から様々な子供を集めて教育して輩出しているんだ。そんなところで子供が学園の人気者になったらその人気者自身も学園内で通用する権利を振りかざす。親も、知らない人がいない位有名な学園で子がそんな地位にいるんだったら誇れるんだよ。金持ちの世界なんてそんなもん」
「じゃあみんなSクラスに入ってその王子と姫になりたいと……」
「うん。自分も望んでる、親も望んでる、だったらやってみたいでしょ?学園長が叶えられる範囲で一つ願いが叶う特権付きだしさ。毛利さんは?やってみたい?」
自らオモチャになるだなんて考えられない。
そんなんだったら………私は……
「やりません。やって得する事がなさそうなんで。なんだったらぶち壊してもいいですよ」
笑い声が辺りに響く。
隠善先生の方を向けば笑っていた。
またか、とでも言い出しそうな苦笑いを浮かべつつ。
「楓さんもそんなことを言ってたの思い出したよ。懐かしいなぁ……ほんと、姉妹って似るんだね。でも、そんな楓さんも、結局はオモチャに成り下がっちゃった」
「そんな……」
心に重りがのしかかるような、息苦しい気分。
あのお姉ちゃんが……そんなはずない無いと思いたい。
「かなり無理矢理だけどね。彼女もほかの人を救う為に、特権を使ってその人を救ったんだ。彼女は他人の為にお人形さんを引き受けた………さぁてと!空気が悪くなりそうだからこのお話はおしまい!5階は全学年のSクラスの教室があって、ここでほとんど過ごしてもらうと思うよ。ここが女子更衣室。多分中に誰かしら居ると思うからその子達に色々と聞いてみるといいよ。遠回しに色々と教えてくれると思うから。じゃあね、僕もそろそろ行かなくちゃ」
清々しい笑顔で立ち去る隠善先生。
あ………同級生だったなら教会の事を聞いとけばよかった……
ま、担任の先生だし大丈夫か。
と、とりあえず扉をあけてみよっかな………
「し、失礼しま―――「私の明日はこの扉から始まる!続きはwebで!ってあら?どなたかしら。葵、わかる?」………ぼ、暴力反対…」
鼻が……!痛い!!!!
扉を開けようとしたら逆に向こうから開き、高くもない鼻を強打した。
先週アスファルトの上で転んで思いっ切り鼻血を出したのを思い出した。
「暴力?嫌ですわ、あなた何を仰ってるの。私には無縁ですわ」
「お前とは一番良好な関係だろう、撫子。言葉の暴力という心からの友が」
「あら嫌だ。言葉であれば生まれた時からのお友達ですわ。数多の戦場を共に歩んできた戦友仲間です」
目の前では黒い制服を身にまとって白いネクタイをした美女二人が言い争っていた。
扉を開けた人は大和撫子と言えば通用する人だ。
多分まっすぐなストレートの髪は膝まであると思う。
後ろから出てきたのは白い肌で碧眼の美女。
ブロンドの髪を緩く一纏めにしている。
二人とも出てるところは出てるし締まってるところは締まってる。
くそぅ…………世の中って厳しい。
出てるところを少しでもいいので私に分けてほしい。
「で、こちらの方は葵のお知り合いで?」
「違う。お前の知り合いではないのか」
「……………どちら様でしょう?」
こ、こえぇ………
二人ともかなりの美人だけど黒い軍服みたいな服を着て凄むのはよくないと思うの。
かなりの迫力が怖いので、先程渡された証明書を二人に向けて見せる。
すると二人の目が点になった。まるでゴマの様!
「…………まぁ!この方が2人目の新入生ですわ!」
「斑鳩ともう一人と言っていたが……毛利的…ダサいな…こんな奴が新しいクラスメイトか」
「自覚してます!周りから言われます!」
「でもこの子…メガネを取ってお下げを解けば………!まぁ!可愛らしい!お人形さんみたいですわ!」
「ほんとだな……眼鏡と三つ編み解けば中々にかわいらしいじゃないか」
無理矢理眼鏡を取られ頑張ったおさげを解かれた。
あぁ言いつけを早速破ってしまった。
いや、ハシビロコウから逃げる時にもう破っちゃったんですけどね。
お人形さんみたいなのはどちらかというとこの二人だと思う…
綺麗な日本人形とフランス人形みたい。
すごくかっこいい制服?着用してますけど。
「毛利さん、こんなところにいては雄に見つかってしまいますからさあさあ中へどうぞ」
更衣室というにはかなり豪華な更衣室だ。
壁に大きく証明書と同じ校章を背景にした鷹が描かれている。
ロッカーは一つ一つ大きくて、四ケタの暗証番号を入力する画面がある。
なにここ……
「すごい……」
「この程度であればどこにでもある。あぁ、忘れてた。私は王寄葵だ。こっちが大和泉撫子だ」
「これでも初等科からSクラスですの。他からやってくる方なんていらっしゃらないですからね。しかもこんなにかわいらしい子!私の事は撫子、と呼び捨てにすることを許可します!私も的とお呼びしてもよろしくて?」
「ど、どうぞ?」
撫子ちゃんはずっと私から離れない。
というか制服を嗅がれている。
葵ちゃんが無理矢理引っ張ってくれたのでずっと匂いをかがれることはなくなった。
なぜ……?そんなに匂う?汗はそんなにかいていないと思うのだけど。
「的は不思議な香りがしますわ…………いつまでも嗅いでいたくなります…」
「うわぁ…」
「毛利、気にするな。こいつはいつもこうだ。治らない病気なんだ。そっとしてやってくれ。私のことも王寄でも葵でも呼ぶといい」
「まぁ!病気とは失礼ですわ!それより………そのダサい制服をお脱ぎになって。着替えましょう。その恰好は誰が着ても無様にしか見えませんもの」
真新しい制服を脱がされる。
ちょっ……パンツ白ってのがばれる。
どうにかワイシャツとスカートを脱がされずに済んだ。
ふぅ………危なかった…撫子サン、なんでそんなに残念そうなんですか。
この 小説 一 の 変態 が 現れた !
少し長めになってしまってすみません…
別サイトの方では第二の変態が現れてオラワクワクすっぞ!