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「どうもー担任の隠善春樹で……………ゲリラ襲来ッ!?」
「違います。一人のゴジラがすべてやりました。その人は保健室のクズを連れてどこかへ……」
「あぁ……奏か…はじめまして。毛利さん。僕が担任です」
半壊した保健室で待っていると担任という男性がドアを開けてきた。
ご丁寧にお辞儀までしてくれた。
いやいや、先生がすることじゃないでしょ。
こちらも深々とお辞儀を返す。
なんだか懐かしむ様な視線を送られる。
しかし…形容し難いイケメンが担任とは……朝ぶつかった爽やか男子とはまた違う…
なんだろうね……あの男子は柑橘系の爽やかさで、この先生はミント系の爽やかさ。
「よ、よろしくお願いします」
「楓さんにそっくりだね」
「お姉ちゃんのお知り合いでしたか」
「うん、同級生なんだ。彼女には振り回されたもんだよ…」
「そうですか」
「楓さん以上に冷めてるね」
「テンパってるだけです」
さっきの奏先生の容赦のなさと夜継先生の頑丈すぎる身体。
普通な顔してテンパってます。
「そりゃ奏が暴れればね。奏も奏で教室よく半壊させてたし…懐かしいなぁ……っと、昔の事に浸っていたいけど時間がないからね。入学式は終わったけど新入生歓迎会がこれからあるからね。急いで着替えて欲しいんだ」
「奏先生何をやってたんだ……着替えって制服のままじゃないんですか?」
「そっか…そうだよね。本物の新入生だもんね。Sクラスはね。今着ているその制服以外に最低一着以上別の制服を作るのが義務なんだ。それで新入生歓迎会は必ず別の制服を着る。あと20分で始まるから早めに決めて欲しいんだ。Sクラス用の更衣室に案内するね」
保健室から出る隠善先生の後について行く。
床はピカピカだし、階段の手すりに埃なんて全くついていない。
壁に飾ってある風景画の絵画も埃なんてものを知らないかの様に綺麗だ。
外装は城だと思ったが内装も城そのものだ。
エレベーターもあるし。
「案内しながらSクラスについて説明するね。この学園に入学する為には、実力っていうものが必須になってくる。だけど例外として会社社長の子供とか、一部でも人に影響がある人も入ってくるんだ。その中でも非凡な才能を持っていたり、影響力が世界まで及ぶって子達の為にあるのがSクラス。只の天才はいらない。天才程度この学園には切って捨てる程いるからね。生徒は毛利さんと斑鳩くんを含めて12人。男子8人女子4人。12人って少なく感じるけど本来は6.7人が限度だよ。今年は豊作な方かな」
え?才能もないし影響力もない私は間違って入っちゃったかな?
「じゃあ私絶対場違いじゃないですか」
「あれ、毛利さんも大分影響力ある方だって楓さんから聞いているよ?それに………いや、この話はまた何時か話した方がいいかな。場違い、なんて思っちゃいけないよ?どれだけ普通という言葉に遠くても所詮は子供なんだし、悪い子は一人もいないから。気を楽にして?」
「そう、ですか………」
10人のクラスメイト…一体どんな人たちなんだろう……
「僕らの時も15人で学園史上最多の人数だったけど……その次くらいかな、今年は………奏も楓さんも派手に校舎破壊してたなぁ…また半壊させないようにしなきゃ」
あぁ…頭を抱えたい……本当に姉がすみませんとしか言えない。
本気でお姉ちゃんも奏先生も何してたんだ…
「楓さんもね、君みたいに最初はメガネと不格好なお下げしてたんだよ?ほんとソックリで吃驚したよ。なんだか親から言いつけられたーとかでやってたんだけど。途中から吹っ切れてやらなくなっちゃった。入学から卒業まで兎に角目立ってたなぁ…Sクラスの規律をぶち壊してくれたのも未だに思い出すよ。あぁ、そうだ。これ渡しておかないとね」
隠善先生はスーツの胸ポケットから一枚のカードを私に差し出してきた。
そのカードは触るとひんやりとしてじわじわ暖かくなる。
金の薄い金属にはSが3つ並んだリボンを咥えている鷹が校章を背景に飛んでいる絵が彫られており、その下に私の名前がローマ字で描かれている。
「それはSクラス用の生徒証明書。生徒手帳とはまた違うものだよ。かなり大切なものだから失くさないでね。失くすと学園長直々のお説教が待ってるからね。まぁ、でも毛利さんなら失くしてもあまり叱られなさそうだね」
「どうしてですか?」
「君のお姉さん…楓さんに頭が上がらないんだよ学園長は。彼も同じクラスだったしね。いっつも振り回わされて喧嘩ばっかりしてたよ。《王子》で恋人持ってたの彼ぐらいだし」
朝も小耳にはさんだ《王子》の話。
生徒間でのイケメンを祀り上げる為のものかと思ってたら全然違う。
先生も一目おいてる存在っていうのはすぐにわかった。
担任の先生登場です。
あとがきに書くのも変ですが日間ジャンル別ランキングで34位になりました!
本当にありがとうございます。
感謝の気持ちも込めて21:00にもう一度更新します(ちゃんと0時にも投稿します)
次回、この小説一の変態が登場します。
お楽しみに!