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僕の親友は爆炎を愛する厨二病  作者: 春風拓也
第1章 爆炎魔女の隣は忙しい
6/25

第6部 爆炎魔女の素顔と、一番安全な場所

最後まで読んでくださると嬉しいです!

ゆいに手を引かれて連れてこられたのは、村の裏手の、ほとんど人が踏み入れない森の奥。

そこに隠されていたのは、古びた、しかし手入れされた小さな石造りの小屋だった。ゆいはこれを「我が魔力の深淵たる、秘密の隠れアジト」と呼んでいる。

小屋の中は、意外にも整然としていた。中央に古びたベッド、隅に薬草のようなものが並べられた棚、そして壁には手描きの爆発の図や、大仰な呪文のメモが所狭しと貼られている。

「さあ、タケ!ここで絶対に安静にしていろ!」

ゆいはタケをベッドに座らせると、タケの顔を覗き込んだ。ローブ姿だが、昨夜のパニックから抜け出せず、中二病的な威厳は完全に消え失せている。

「あの……ゆい?本当に大丈夫だって。ちょっと気持ち悪いだけだし、火傷も大したことない」

タケは動揺しながら言うが、ゆいは真剣な顔のままだ。

「黙れ!この体調不良は、私の過失よ!この世で最も純粋な爆炎を愛する私が、毒を作ってしまったなんて……。もしタケに何かあったら、私は……!」

ゆいはそこで言葉に詰まり、唇を噛んだ。

その時、ゆいは急にローブの首元が暑苦しくなったのか、迷うようにローブのフードに手をかけ、サッとそれを脱いだ。

「えっ……」

タケは思わず息を飲んだ。

黒ローブの下から現れたのは、白いブラウスに地味な灰色のスカートという、ごく普通の村の女の子の服装だった。眼帯はそのままだったが、無造作に結ばれた髪、いつもローブに隠されていた華奢な肩。そして、焦燥で少し赤くなった頬。

普段のゆいが纏っている「爆炎の魔女」の鎧を剥ぎ取った、素の「ゆい」がそこにいた。

「う、動揺するな、タケ!これは緊急事態よ!魔力の制御が乱れると困るから、封印を解いただけだ!」

ゆいは照れ隠しのように大声で叫ぶが、その声はいつもの響きがない。

タケは、彼女の普通の女の子としての姿を見て、頭の中が白い煙に包まれたようだった。心臓はドンドコと激しく鳴っている。

(なんだ、これ。……めちゃくちゃ、普通の可愛い子じゃねぇか。いつもなんであんなごついローブ着てんだよ!)

ゆいは、棚から薬草を取り出すと、慣れない手つきでそれをすりつぶし始めた。

「これ……『生命の躍動を促す薬草』よ。本当は爆炎魔法の補助用だけど、毒にも効くかもしれない。すぐにお茶にして煎じるからね」

ゆいは真剣に作業に集中している。普段は「究極の爆発」のためだけに存在している彼女の手元が、今はタケのために一生懸命動いている。

タケは、そんなゆいの姿をじっと見つめていた。

「おい、ゆい……」

「何よ!今は話しかけないで!集中してるんだから!」ゆいはピシャリと言う。

「いや、違う。お前さ……」

タケは一呼吸おいて、自分の本心を口にした。

「お前がこんなに心配してるの、初めて見た。その……俺のために、素っ裸(ローブを脱いだ姿)になってまで、焦ってくれてるんだろ?」

ゆいは、薬草をすりつぶす手をピタッと止めた。

「そ、そそそ、素っ裸じゃないわよ!これは俗世の服装ノーマル・アパレルだ!勘違いするな!」

ゆいの顔が、耳まで真っ赤に染まる。タケの直接的な言葉に、彼女の中二病の防御壁が崩壊していた。

「あー……そうかよ。でもさ、お前が『私を殺しちゃう』ってくらい、俺のことを大事に思ってくれてるってのは、よーく分かった」

タケは優しく微笑んだ。

「ありがとう、ゆい。俺にとって、お前が一番安全な場所だよ」

タケの優しく、まっすぐな言葉に、ゆいは完全に固まった。彼女の顔は、彼女の魔法の炎よりも熱く、彼女がこの世の何よりも愛する爆発よりも強力な衝撃を、彼女の心に与えていた。

ゆいは、顔を赤くしたまま、どもりながら言った。

「ば、ばば馬鹿なことを言うな!わ、私はただ!私の名誉が!爆炎の魔女の名誉が傷つくのが嫌なだけであって!」

その後のゆいのツッコミは、いつもより一オクターブ高い、震えた声になっていた。

タケは確信した。

(あ、ダメだ。もう、ただの親友の枠には戻れない。こいつのこと、好きだ)

最後まで読んでくださりありがとうございました!

また別の作品も読んでくれると嬉しいです!

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