第24部 英雄の帰路と揺れる馬車の中で
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「……ん、……ここは?」
重い瞼を開けると、視界に入ってきたのは見慣れない白い天井だった。鼻を突く消毒液の匂いと、清潔なシーツの感触。どうやら僕は、大通りで気を失ったあと、病院に運び込まれたらしい。
「タケ! 気がついたか! 貴様、この私をどれほど動揺させれば気が済むのだ!」
ベッドのすぐ横から、聞き慣れた、でも今にも泣き出しそうな声がした。
そこには、僕の手を両手で包み込むように握りしめているゆいがいた。彼女の眼帯は少しずれていて、その下にある瞳は赤く腫れている。
「ゆい……。ごめん、また心配かけたな」
「当たり前だ! 私の魔力でも治せない『出血』などという原始的な現象で倒れおって……! 本当に、ただの凡庸なる従者だな……」
ゆいは毒づきながらも、握った手を離そうとはしなかった。
そこへ、カツカツと足音を響かせて、数人の衛兵たちが病室に入ってきた。
「目覚めたようだね、少年。……君たちの勇気ある行動には、街の全員が感謝している。あのならず者たちは、君がひるませてくれたおかげで全員捕縛できたよ」
衛兵の隊長らしき人が、深々と頭を下げた。
「これは街からの感謝の印だ。君の治療費はもちろん、村までの帰路も手配させてもらった。」
数日後。
僕たちは街の人々に見送られながら、立派な幌馬車に揺られていた。
「すごいな……。行きはあんなに苦労した道を、こんなに快適に進めるなんて」
僕は、包帯が巻かれた自分の手を見つめながら呟いた。痛みはもうほとんどない。
「ふ、ふん。当然の報いだ。魔王(ならず者)を退けた勇者には、これくらいの供物が相応しい」
ゆいは隣でふんぞり返っているが、その手には、あの喫茶店でもらった「漆黒のザッハトルテ」の残り(お土産用)が大事そうに抱えられている。
ガタゴトと馬車が揺れる。
ゆいは時折、僕の怪我をした方の手をチラチラと見ては、何か言いたげな顔をしていた。
「……タケ」
「ん?」
「その……今回の旅は、私の『魔力の暴走』のせいでもあったが……貴様がいなければ、私は……」
ゆいはそこまで言うと、急に黙り込んで僕の肩に頭を預けてきた。
「……村に着くまで、寝る。……起こしたら、爆破だ」
「ああ、ゆっくり休めよ」
窓の外には、懐かしい村の近くにある森が見え始めていた。
今回の大冒険。怪我もしたし、怖い思いもしたけれど、隣にいる彼女の体温を感じながら、僕は「この旅に出て良かった」と心から思っていた。
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