第20部 漆黒の誘惑と店主さんの一言
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「…………ん、んん〜〜っ!!」
一口食べた瞬間、ゆいの体がビクッと跳ねた。
眼帯をしていない方の目が大きく見開かれ、頬が瞬く間にポッと赤く染まる。両手を頬に当てて身悶えし始めた。
「な、なんだこれは……! ま、まるで、私の脳内に直接、甘美なる爆発が起きたかのようだ……!」
「そんなに美味しいのか。どれ……あ、本当だ。これ、めちゃくちゃ美味いな」
僕たち二人が、一つの皿を囲んで「美味しいね」「すごい魔力だ……」なんて顔を寄せて盛り上がっていると、カウンターの奥から「コホン」と、少し呆れたような、でも温かい咳払いが聞こえてきた。
「……お二人さん、店内でイチャイチャしているところ悪いんだがね」
店主の老人が、眼鏡の縁を指で上げながら、苦笑いして僕たちを見た。
「あ、いや、これはその……!」
「な、ななな……イチャ……!? 貴様、何を不敬な! これは聖なる毒見の儀式であって……!」
ゆいはフォークを持ったまま固まり、顔から火が出るほど真っ赤になった。僕も急に距離の近さを自覚して、慌てて椅子を引き直す。
「まぁ、若いのはいいことだ。村長さんへの返信、預かってもらって良いかの?」
店主さんはそう言って、カウンターの上に一通の封筒を置いた。
「わかりました!…」
「村長さんに、無事に届けたと伝えておくれ。……あと、そっちの魔女さんにもよろしくな。村長が『うちの自慢の魔女が、迷惑かけてないか心配だ』と手紙に書いてあったよ」
「……っ! あ、あの凡庸なる長め……! 余計なことを!」
ゆいはぷうっと頬を膨らませたが、その表情はどこか嬉しそうだった。
「よし、ゆい。任務完了だ。返信も預かったし、あとはゆっくり街を回ろう」
「ふ、ふん! 当然だ! この街の『静かな光』を見つけ出すまでは、私の探索は終わらんからな!」
照れ隠しに勢いよく立ち上がったゆいだったが、店を出る間際、店主さんに小さく「……ケーキ、美味しかったぞ」と蚊の鳴くような声でお礼を言っていた。
僕たちは店主さんに見送られ、再び活気あふれる街の通りへと繰り出した。
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