第2部 その爆発はエサ皿を焦がす
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「……だから、村長の息子が育ててる大事なカブにまで、なんでお前の魔力注入が必要なんだよ」
タケが額を抑えながら言うと、黒いローブ姿のゆいは、鼻で笑った。
「フン!凡庸なるタケよ、何を分かりきったことを言う!この『終焉の爆炎』は、世界の命脈を断つだけでなく、生命の躍動を促す究極の『再生』の魔法でもあるのだ!これによって、あのカブはただのカブではない……『覚醒せし戦慄の魔導カブ』となるのだ!」
「ただの厨二病のカブにしかならねぇよ!第一、カブは土の中だろ!掘り返すな!」
ゆいが手のひらをかざしているのは、掘り起こしたばかりの、泥まみれのカブだった。タケは急いでカブを取り上げようとするが、ゆいは身を翻す。
「遅いぞ、タケ!我が『殲滅の爆炎』は、既に詠唱の最終段階に入っている!」
ゆいは片目を覆う眼帯に手をかけ、大仰なポーズを取った。
「闇より生まれ、混沌を照らす光よ!我に力を!エクスプロ――」
「ストップ!」
タケはゆいの口元を両手で塞ぎ、カブを地面に置いた。
「いいか、ゆい。今日、村長は大事な集会で出かけてる。ここが爆発物処理場じゃねえってことを思い出せ。昨日も、あんたの『実験』のせいでうちの洗濯物、焦げ付いて穴開いただろ!」
「グフッ……それは、我が魔力制御の甘さゆえ……」
「甘いじゃねえんだよ!お前の演出過剰な爆発のせいで、俺の貴重なTシャツが『闇の破片』になったんだ!」
ゆいは悔しそうにタケの手を振り払うと、ローブの袖をまくり、タケの家のヤギのエサ皿を指さした。
「チッ……仕方がない。今日の魔力解放は『無駄に爆発力の高い、ただの火花』で我慢しよう。あの愚かな雑草にもう一度試すか……」
「待て、エサ皿は?」
ゆいはエサ皿の中にあったヤギの乾草を目標に定めた。
「我が魔力は、器のサイズに合わせて破壊力を調整できる!安心しろ、タケ!この塵屑のような乾草を、微細な爆発で焼き払ってみせよう!」
ゆいは再び呪文を唱える。先ほどよりは少し短いが、やはり芝居がかった声だ。
「爆炎よ、我がしもべよ!――ミニ・エクスプロージョン!」
ドォンッ!!
――結果、乾草はもちろん、その下にあった鉄製のエサ皿は、派手に焦げて原型をとどめないほど歪んでひしゃげ、破片がタケの家の壁にめり込んだ。
タケは、エサ皿の残骸と、白い煙を上げる壁を見つめながら、深いため息をついた。
「……ゆい。お前の『微細な爆発』って、ダイナマイトのことか?」
ゆいは、額の汗を拭いながら、満足げなドヤ顔で胸を張った。
「フフフ……見たか、タケ!これが我が魔力の真の姿だ!このエサ皿は、『終焉を迎えた鋼鉄の遺物』として、我が部屋に飾っておこう!」
「飾るな!それ、弁償だ!ていうか、さっき魔力調整できるって言ったの嘘だろ!」
ゆいはタケの問いには答えず、高笑いしながらタケの家から走り去っていった。
「また明日、会おう!凡庸なる従者よ!その時まで、この爆炎の余韻に震えているがいい!」
「震えるか!……エサ皿、どこで買ってこよう。ヤギが腹減らしてこっち見てるぞ……」
タケは、ヤギの悲しそうな目線と、焦げ付いた壁の痕を見て、今日が『平穏な日常を守るツッコミを諦めない日』の第一歩であることを改めて自覚したのだった。
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