表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
僕の親友は爆炎を愛する厨二病  作者: 春風拓也
第2章 小さな旅へ
16/25

第16部 黄昏の帳と、魔女の小さな震え

最後まで読んでくださると嬉しいです!

「そろそろ……日が落ちてきたな」

僕がそう呟くと、辺りは急激にオレンジ色から深い藍色へと飲み込まれ始めていた。村長が言っていた通り、この辺りは木々が深く、一度日が陰るとあっという間に視界が悪くなる。


「ふ、ふん……! ようやく『常闇の支配』が始まる時間か。私の魔力は、夜にこそ真の輝きを放つのだ!」

ゆいは杖を掲げて強がってみせるが、その声は少しだけ上ずっている。

風が木々を揺らし、「ザザッ……」と不気味な音が響くたびに、彼女の肩が小さく跳ねるのを僕は見逃さなかった。

「よし、今日はこの辺りで野宿にしよう。開けた場所があるし、薪も集めやすそうだ」

僕はリュックを下ろし、手際よく火を起こす準備を始めた。石臼を持ち上げるパワーも、こんな時には火を熾すための力加減に役立つ。


「タ、タケ! 貴様、そっちの暗がりに『深淵の魔獣』の気配を感じないか!? いま、あそこの茂みが動いたぞ!」

「ただの風だよ。ほら、ゆい。暗くて危ないから、あんまり離れないで火の番をしててくれ」

「……っ! そ、そこまで言うなら、守ってやらんこともない!」

ゆいは、待ってましたと言わんばかりに、僕のすぐ隣にぴたりと座り込んだ。

やがてパチパチと乾いた音を立てて火が灯ると、ゆいは少しだけホッとしたように、焚き火の熱に手をかざした。

「……なぁ、ゆい。おばちゃんに教わった魔法、試してみるか?」


僕は、彼女が心を動かされた『夜見草のささやき』のことを思い出した。

ゆいはハッとしたように僕を見つめ、それから恥ずかしそうに視線を落とした。

「……あれは、おば……『賢者』にしか使えない高等魔導だ。私のような破壊の専門家には……」

「そんなことないよ。ゆいなら、きっとできる。俺、見てたいんだ。ゆいが作る、綺麗な魔法」

ゆいは唇を噛み、しばらく黙っていたが、やがておもむろに立ち上がると、夜空に向けて杖を構えた。

昼間の爆発魔法のような激しい詠唱ではない。彼女は静かに目を閉じ、僕の隣にいるという安心感を噛み締めるように、そっと呟いた。

「……静寂を愛する星々よ。刹那の光を、我らの道標に……」

すると、焚き火の火の粉が舞い上がるのと同時に、僕たちの周囲に淡い、藤色の光の粒がふわりと浮かび上がった。

「わぁ……」

「……できた。本当に、できたぞ、タケ!」

ゆいは、眼帯をしていない方の目を輝かせ、子供のように笑った。

暗い森の中、たった数メートルだけの小さな光。でも、それはどんな爆発よりも、僕たちの心を温かく照らしていた。

ゆいは、光の粒に手を伸ばしながら、不意に僕の服の裾をぎゅっと掴んだ。

「……タケ。今日だけは、この『結界』の近くにいろ。……離れたら、爆破するからな」

その言葉は、爆発の脅しというより、消え入りそうな「そばにいて」というお願いに聞こえた。

「ああ、離れないよ。約束だ」


焚き火の爆ぜる音と、静かな魔法の光。

僕たちの初めての夜は、ゆっくりと、穏やかに更けていった。


最後まで読んでくださりありがとうございました!

また別の作品も読んでくれると嬉しいです!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ