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三題噺もどき4

好調

作者: 狐彪

三題噺もどき―ななひゃくごじゅうさん。

 




 月の柔らかな光が、部屋に入り込んでくる。

 今日は天気がいいから、よくよく見える。

 その光だけでも十分に仕事が捗る。

「……」

 先月末あたりからの不調から、それなりに解放され、仕事も本調子に戻ってきた。

 溜まっていたわけではないから、何かを言われるわけでもないのだが。

 普段は、それにプラスの仕事をしていたから……それができなくなりつつあったのは少々しんどかったな。

「……」

 まぁ、あまり詰めるなと言われているので、そのプラスの仕事も少しずつ減らしているのだけど。そう簡単に調整できるようなものでもないから……。

 これでも、緊急の仕事が減りつつあるので楽にはなっているのだ。

 その分仕事の量が増えている事があるにはあるが、それだけ信用してくれているんだろうと思っている。

「……」

 今日の仕事はもうある程度は終わりつつある。

 比較的少なかったのもあるし、案外調子がよかったのもある。

 明日の分まで進めてしまってもいいのだけど……。

「……」

 とりあえず、きりのいいところで終わっておきたいところだ。

 チラ―と時計を見ると、散歩から帰って、仕事を再開してからもうずいぶん経っていた。

 こちらの事はお構いなしに進んでいく時計。

「……」

 そんなそっけない時計を尻目に、仕事を進めていく。

 机の端に置かれているマグカップに手を伸ばし、一口飲む。

 中身はカフェインレスコーヒーというやつだ。

 なぜカフェインレスと思ったが、まぁ安くなっていたとかその程度の理由だろう。

「……」

 中に入っていたはずの氷は、すでに溶けており、コーヒーと同化してしまっている。

 入れていた氷の溶ける速度がいかほどのものだったかは知る由もないが、まだ十分に冷えているので、何も問題はない。

 ただまぁ、こういう普通のマグカップだと結露してしまうのが面倒だなぁ……。ステンレスとやらのモノを買った方がいいんだろうか。

 まぁ、まだこのコップが使えるうちは買わないだろうけど。

「……」


 ―――


「……ふぅ」

 それから数十分ほどで、仕事は終わった。

 まぁ、残りも少なかったし体調がいつも以上にいいような気もするから、それもあるのだろう。

 最後の確認をしながら、マグカップの中身を飲み干す。

「……」

 と、そうこうしていると。

「ご主人」

「ん」

 部屋の戸が開けられ、廊下の光が飛び込んでくる。

 せっかくの月あかりがかき消されてしまうが、まぁ、仕方ない。

 今日はコイツもご機嫌がいいらしく、身に着けたエプロンのリボンが揺れている。

 ……これを猫のようで可愛らしいと言うと止めてしまうので、言わないのだが。機嫌が分かりやすい上に可愛らしいって、可愛いだろう。

「休憩にしましょう」

 そういいながら、部屋に入ってくる。

 相当ご機嫌なようだ……。

 私が手に持っていたマグカップを受け取りながら、急かすように早く立てと促してくる。

 さすがに座りっぱなしのこの体ですぐに立ち上がることはあまりしたくないのだが、珍しく楽しそうなのでさっさとするとしよう。

「今日は何を作ったんだ」

「モンブランです」

 その声に少し興奮が混じっていたのは聞き間違いじゃないだろう。

 廊下の先を歩く後姿が、心なしはしゃいでいるのは見間違いじゃないだろう。

 エプロンの尻尾が左右に揺れているのは、決して見間違いじゃないだろう。

「そんなにうまくいったのか」

「見てのお楽しみです」

 上手くいったんだろうな。

 こういうところ、子供っぽいというかなんというか……この姿の精神年齢に引っ張られるのかもしれないが、可愛いと思う。絶対言わないが。

「あぁ、楽しみだな」

「えぇ、そうでしょう」

 思わずこちらの唇が歪みそうになるのを必死に抑えながら、リビングへと向かう。

 あぁ、今日の休憩はいつも以上にいいモノになりそうだ。





「おぉ……」

「どうですか」

「お前もうプロになればいいんじゃないか……」

「そうですかね」











 お題:モンブラン・溶ける・同化


最後は蝙蝠くんドヤ顔です。可愛いね。

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