番外編~刻の賢者とシロウサギ・2
※注意
1に続き暗いです。
白兎がおかしくて、レイは何千年も生きた刻の賢者として会話をしている感じです。
相変わらずの短文+改行の多さです。
あれから、何日経っただろうか…?
おかしいな。
時間感覚なんて、なくなっていたはずの俺が、時間を気にするなんて。
これを言葉にするなら、驚きなんだろうけど、俺の表情は動かない。
ただ殺すだけの生に、感情も何も全てイラナイ。
モノクロの世界。
音の無い世界。
どうして俺は、生きてるんだろう??
死にたくないから、ナイフを振るうわけじゃない。
痛覚なんて、もう存在しない俺は、死んだ事すらわからずに死ぬだろう。
たったそれだけ。
なのに俺はまだ生きてる。
他が弱いから、とか、俺が強いから、とかじゃない。
俺の中に弱いとか強いとか、そんなモノは存在しない。
はずだった。のに。
なのに……
アレは、絶対的強者、だった。
震えた。
存在に。
全てが。
恐かった。
――私の影の代償としては、人間外の知識と力。はおまけで…そうね・・・・・温かいご飯を一緒に食べて、寂しかったらこっそり同じ布団で眠りましょ?――
ご飯?って、なんだっけ??
眠る?
イミガワカラナイ。
モノクロの世界。
色の無い世界。
俺も、消えてしまえばいいのに。
そうすれば、きっと色が戻る。
色。
その時、俺の目の前に、月が降りてきた。
「こんにちは~。今日は本体で登場したけど、どう?」
「……」
俺は無言のまま目の前の少女に視線を落とした。
俺よりも遥かに小さい目の前の子供。それなのに大きく見える。
あぁ……銀だ。
モノクロの世界のようで、モノクロじゃない。
「考えてくれたみたいだね? で。どうする?」
目の前の少女は、俺が断るなんて思っていないのかもしれない。
それとも、どちらでもいい、という事だろうか?
相変わらず笑みを浮かべたまま、俺を真っ直ぐに見てくる。
・・・・・。
久しぶりに、人と視線が合わさった気がする。
「すごく痩せちゃってるね……殺す時に出る微弱な生気じゃ、飢えるだけだよ」
「・・・・・」
「そうすると始めはスープかなぁ。胃に優しいものじゃないとね」
「お前を殺せば、俺は楽になれそうな気がする」
口から出ていた。
会話なんてかみ合ってない。でもこれが、今の俺の本音。
目の前の殺せそうに無い少女を殺そうとすれば、俺は楽になれる気がする。
もう考えなくて済みそうだから。
だから、楽になれるんだ。
「殺せるんなら、どーぞ。飢えが少しの間収まったから、だから何?
尚更酷くなりそうな気がするけど……あぁ。でも大前提が成り立たないね。
私は、殺せないもの」
少女の言葉はあっていると思う。
俺は、殺せない。
「殺してほしいんでしょ?」
そう…殺して欲しい。
「何で欲しい相手を殺さなきゃならないの? 馬鹿らしい。
私は貴方の色が気に入ったの。だから殺さないし、そういうなら実力行使で契約をしちゃうよ?それでもいいかなぁ」
少女の眉間に、皺が寄る。
不機嫌そうな、表情。
もっと歪ませたら、面白いだろうか??
壊れた心の奥底から、壊れた思考が湧き上がる。
欲求なんてモノが、まだ、俺の心の中にあったのか……
それは驚きだが、別にどうでもいい。
ナイフは砕けたけど、俺にはまだある。
俺を欲しいという少女。
少女の手で、壊させてみたい。
俺は、魔力で真空を作り出し、それを放つ。
物心がつく前、これで一つの街を消失させた。
殴られた。
罵られた。
恐怖された。
そして、俺は殺した。
「私は貴方よりも強いもの。だから、壊されないし、恐がらない、貴方を壊したりもしない。
あ、でも契約時に耐えられなくて死んじゃうのは別ね。それは私の見る目がなかったっていう事で、流させてもらうけど」
契約。
何度も聞く。
その言葉を呟き反復していると、真空波が、少女に呑み込まれ消えた。
「ゴチソウサマ。大概私も人外ね。ねぇ、そんな相手を見てると、貴方は人間でしかないよね。ただの可愛い少年……青年かな?」
やっぱり、少女の形をした何かが俺の目の前で笑ってる。
そして徐に、ゆっくりとした動作で少女は俺に手を伸ばし、俺の意識はそこで途切れた。
黒の世界。
もう、モノクロですらない。
真っ黒に、塗りつぶされただけ。