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久しぶりの邂逅・2



 白兎から渡された調査結果。


 私の影たちが秘密裏に動いた時は、誰にも気づかれない。それは、この短期間で出会った私の過去の関係者たちも例外ではなくて……




「でも…答えてくれそうだよね。聞けばさ」




 私の子孫たちのデータの詳細が書かれた紙を机の上へと置くと、立ち上がり背伸びをしながら白兎へと向き直った。


 白兎の表情から、その感情を伺う事は出来ない。意識的に無表情にしているんだなぁってわかるんだけどね。




「白兎ー」




 うにっと頬を引っ張ってみた。




「姫さん??」




 それでもまだ無表情を貫こうとする白兎に、




「私たちの前でそれはダメ。なんか面白くない」




 と、言葉を漏らした私を抱き上げ、白兎の表情が蕩けるような笑みへとかわる。




「ひーめさん。何? 俺を喜ばせたいの?? 可愛い事言っちゃって」




 先ほどの無表情とは一転、甘やかすような声音と満面の笑み。別に喜ばせる気もないんだけど…




「あはは。無意識ね。うん。姫さんらしいなぁ――って事でさっきの言葉ですけど、俺も思いますよ。教えるんじゃないですか」



「そうだよね。教えそうだよねぇ」






 先日の心話の件から影たちに動いてもらったんだけど、やっぱり私の元旦那が転生したっぽいんだよね。そうなると、私が聞けばあっさり教えてくれそうなんだよなぁ。どうして転生したのか、とか。何かその他色々な疑問とか。




「姫さんの子孫があのバカの行動を逆手にとって――じゃなくて、元々手の平の上で踊ってたんですよねー。そう思うとほんのちょっとは可哀想ですね」




 晴れ晴れとした表情で言い切る白兎の言葉には、説得力の欠片もない。


 寧ろ、このままシーファがボロ雑巾のように利用されて吸い取られて捨てられたとしても、まったく気にしないと思う。私の影たちは。




「所で、シーファの事はアレ、とか。バカ、とかで通じるの?」




 私以外名前を言わないよね。シーファの。




「ゴミでも通じますよ」




「・・・・・」




 やっぱり清清しいほどの満面の笑みの白兎。




「まぁ、大体はアレ、ですけどね」




「…そっか」




 兄様に至っては既に存在そのものを抹消している節があるから、それに比べたらマシっていうのかな。


 それとも兄様の態度と比べるのが間違ってるかな。


 なんて眉間に皺を寄せると、いつの間にか私の隣に立っていた黒兎に抱き上げられる。なんていうか、黒兎は抱き上げるという行動が標準装備よね。主に私限定だけど。




「姫様。姫様は眉間の皺も可愛い。でも、ダメ」




「……うん。気をつける」




 なんていうかさー。


 シーファの件があってから前よりベタ甘になったって言うかねー。




 ちょっと照れながら黒兎の肩に手を置いて、私は身を乗り出すように白兎を見た。




 照れてる私を面白がってるのか、笑みの種類が変わった気がする…




 私は一回、わざとらしく咳払いをすると、




「まぁ…うん。私が関係者には激甘だから、とり合えず相手の出方を伺う後手後手だけどいい?」




 最終的に、元とはいえ旦那さんに危害を加える気なんてないし。


 寧ろ私の魂の血筋ではないけれど、自分が産んだ子だから愛着はあるのよね。




「了解。姫さんが甘いのは知ってるから、今更ですよ」




「そうだな。だから、俺たちは、きびしく」




 一応了解してくれた二人。




 どうしてだろう。なんか腑に落ちないのは…??








 とり合えず深く考える事を放棄した私は、黒兎が用意してくれたお茶とお菓子に舌鼓を打つ。うん。いつもの日常。


 そんな時、やっぱりというかなんというか、心話が入ったのね。


 私の態度で気付いた二人は、残りの2人にも連絡を取って様子を伺ってる。






――3日後辺りはどう??――






 直接脳に届いた言葉はこれ。


 まったく、相変わらず挨拶をしない人だな、なんて思いながら私は今週の予定を思い浮かべた後、了承の返事を返した。


 うん。その日は開いてるから大丈夫。


 こう見えても、色々な事に手を伸ばしてる私は結構忙しい。私自身は自由でも、周りの人間はそうはいかないからやっぱ私が合わせてね。すると予定なんかはあっという間に埋まっちゃう。




――じゃ、3日後。シーファも連れて行くから、部屋準備しといてね。俺とシーファは同室でいいから――






「(わかった。一室用意しとくね)」




 こうやって話すと、調べるまでもなく私の元旦那様っていうのがよくわかる。


 性格はそのまま。そして私にはやっぱり気を許してるみたい。




「もう終わったよ」




 警戒を続ける白兎と黒兎の頭を撫でた後、兄様の執務室へと足をのばしてみる。


 3日後っていうのは伝えなきゃダメだし。


 それに休憩をとってないだろうしね。お茶の準備をして、それも忘れずに持っていく。まぁ、持っていくのは白兎なんだけどさ。






「姫さんはさ…元旦那に会ったらどうする?」




 身体に闇を纏わせ、私の隣を歩く白兎。この闇は目くらまし効果のあるもので、他者の目からはポットが浮いているようにしか見えてないと思う。


 


 でも、口から漏れたのは不安げな声音。




「会ったらどうするって…話すよ。話さなきゃ始まらないし。ちなみに、嫁に行くとかそういうのはまだわからないから」




 多分、不安はこれ。




 まったく…皆して私が10歳っていうの忘れてるんじゃない?




 まだお婿さんを貰う気も、嫁に貰われる気もないから。




「そっか。姫さんにはまだ早いよね」




「うん。早いよ」




 白兎は時々、言葉が混じる。


 敬語っぽく話したり話さなかったり。


 本当は敬語っぽいのは意識してるんだけどね。だから敬語が抜けてるって事は、結構悩んでるって事で…




「置いてかないから大丈夫。私は、私の影たちが大好き」




 多分、一番ね。


 口には出さない本音だけど。






「そっか…うん。良かった。俺も姫さんが大好きだ」








 なんていうか、子離れ出来てない親と、親離れ出来てない子供みたい。


 どちらかというと、親は私だけど。






 影たちに恋人が出来た時。


 私はどういう態度をとっちゃうんだろう。






「(なんか…面白くなさそうだし)」






 今から覚悟しといた方がいいのかな。なんて。




 私はちょっと本気で考えてた。


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