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そのひと
寒くてくらい部屋
膝を抱えて孤独で踞る
淋しくて
泣きそうになっていると
あたたかいものが
体を抱きしめた
ぼんやりとした誰かが
私の体を抱きしめている
そのひとは私の体を抱き上げ
ゆりかごに寝かす
ふわっとした
やわらかなふとんを掛けると
そのひとは
ゆりかごをゆらす
ゆりかごをゆらゆらと揺らしながら
やさしい声で子守歌を歌う
やさしくてきれいな声
ふわふわとまぶたが揺れる……
まぶたを閉じると
あたまをやさしく撫でながら
「今日もたくさんがんばったね。おつかれさま」
そんなやさしい声が
鼓膜をくすぐった
それだけで明日もまた
生きていようと思った──




