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きんいろの密談

 カノンの誘いにはまったく乗り気じゃなかった。

 当たり前だが、俺にメリットがない。


 召喚少女の知識? ブロンドヘアの年下娘?

 結構結構。

 もうたくさんだ。


 ただ少し、不安があるとしたら、もったいないかもしれないって事だった。

 そう、もったいないかもしれないんだ。


 俺がここで協力してやる事で、せっかくカノンに貸しを作ってやれそうなんだ。

 この機会をみすみす逃してしまうのも、なんだかもったいない気がしていた。


 そのうち、どこかでこの貸しを返してくれるかもしれない。

 どういった形で返ってくるのかはわからないが、ひとまず貸しを作っておく事。


 こういう精神も大事かもしれない。

 そう思い始めていたんだ。


「え⁉ 本当にいいんだ」

「いいぞ。別に少し話し相手になってやればいいんだろ? 余裕だな」

「ありがとう、木下くん~」


 にっこりとカノンは笑う。

 金髪で、目はパッチリしていて、鼻が高くて、彫りが深くて……。女優顔負けのビジュアルがにこにこしてる。


 いやいや、タダで人にそんなホイホイと笑顔を見せるなよ。

 そう思ってしまうような、ハイレベルな見た目のカノンだった。


「じゃあ妹と遊んでもらう日取りについては、また今度話しましょう」

「ああ、そうだな」

「それじゃあ、木下くんまた明日ね」

「おう、またな」



 カノンはサッと教室を出ていった。

 結局、まだカラオケ屋のバイトについて、カノンから何も聞き出せなかった。


 そのうち話題にあがるだろうと思って、俺からは全くバイトの話を振らなかった。

 いや、そもそもあいつ、気が付いてないのかもしれない。


 同じアルバイト先に俺が居るって事。


 いやそもそも、バイト先のシフト表にあった「カノン」はあいつなのか?

 カノンってカタカナの名前の珍しさだけで、あいつだって決めつけて、実は間違ってるのは俺なんじゃないか?


 その可能性だってまだ残ってる。

 だからまだわからない。




 後日、授業の合間の十分休憩の時に、カノンからメモ紙を一枚渡された。


「 今日の夕方5時 お店来てよ 」


 そう書いてあった。

 俺はそのメモ紙をクシャクシャに丸めて制服のポケットにしまうと、自分のノートの端っこを千切って、新しく返事を書いてやった。


 その切れ端を四つ折りにして、あいつに向けて投げてみる。


「痛っ!」

「あ」


 メモ紙が、ちょうどカノンの首筋に当たったらしい。

 ごめんな、ノーコンで。


「え、ちょっと何?」

「ミスったんだよ。そこに落ちてる」

「さっきの返事かな?」

「ああ」


 さっき俺が投げたノートの切れ端をカノンが拾い上げた。

 もはやメモ紙でやり取りする意味あるのだろうか。

 無いよな?

 なんかカノンがそうやってきたから、俺もメモで返したけど。


「今日バイトなんだねー」


 カノンは、俺のメモを小声で読み上げた。

 やっぱりメモの意味はなかった気がする。 


「ああ、そうだ。だから無理だな。ていうか、なんでメモ紙だったんだよ」


 一応カノンに合わせ、俺も小声で返してみる。


「なぜって……」

 カノンがちらりと横に視線を向けた。

 なるほど、山岸か。

 カノンの視線の先には、十分間の休憩で睡眠をとろうとしている男の背中があった。

 無論、俺の前の席で眠る山岸の背中だ。


 顔を伏せていて、こちらには気付いていないらしい。

 安らかに眠れ、山岸。


「起こさないようにとか優しいな」

「そうじゃなくて」

「ん?」


 俺達はそのまま小声で会話を続けた。


「ほら、噂立てられるのも嫌でしょ。こんな、お店で密会みたいなの」

「……」


 ええ? カノンさんそんな意識とかするタイプだったのかよ。

 なぜだ。じゃあなぜ放課後の教室とかいう、割と誰にでも見つかる可能性のある場所をこれまでに選んできたんだよ⁉



「だからさっきメモにしてみたんだけどね。バイトで無理なら仕方ない、か」

「無理だな」

「よし。じゃあ明日は?」

「あ、明日ならいいけど」

「じゃあ明日ね~。ってごめん、明日は私がバイトだった」


 でしょうね。俺はそんな気がしてたよw

 ていうかカノンは、俺と同じバイト先だって事にマジでまだ気付いてないっぽいな……? 木下って珍しい苗字でもないしな。


「それじゃあ都合合わないな」

「でも行く? 明日さ。私行けないけど、お店に」

「行けるかよ! カノンいねーのにどうやって事情説明すんだよ!」

「しーっ! 声!声でかいよ、木下くん!」

「あ、ごめんな。なんかつい……」


 俺はつい取り乱してしまった。

 とんでもない事を言うやつだな、カノンは。


 俺がカノンの妹に一人で会いにいくとか、普通に変な奴だろそれは。

 面識があるならともかく、初対面だぞ初対面。

 ブロンドヘアの年下娘をガチで狙ってるやばい奴じゃねーか。


「けど行けると思うんだけどなー。私が前もって妹に話をつけておくからさ。行ってくれない?」

「……」



 マジで言ってる? 俺はそれほど人見知りが激しいわけでもないけど、それでも、前にカノン自身、俺のコミュ力が~とかって言ってなかったか?

※この作品が面白いと思っていただけた方、続きが気になる方は、評価・いいね・感想・レビュー等付けていただけると制作の励みになります。


宜しくお願いします。

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