侯爵家嫡男と次男
「クソっ、クソっ」
ドカッドカッ!
次男は軟禁された部屋に連れて行かれて、一人になると部屋中の物にあたって、泣きながら殴り蹴飛ばして荒れ狂っていた。
「使用人とレンは許せん! いつか絶対目に物を見せてやる」
次男は庶子の生活費を着服した資金で、侯爵家の家来達を買収していた。
それもこれも全ては後継者争いに勝つためだ。父である侯爵が亡くなった後、嫡男と争う為に陰で自分の味方を集めていたのだ。
それが廃嫡となり、後継者になる目は完全に無くなった。今まで買収していた者達も廃嫡になれば離れていく事は間違いない。
しかも繋ぎ止める資金も無く、頼りとなる母もその人脈も無くなった。
その上、今まで虐待してきた庶子達が自分より継承順位が高くなるのだ。今後は今までの報復に怯えて逃げ回る事になるだろう。
自業自得なのだが、本人は逆恨みしているとは思っていない。
上手くいってたのに、このままいけば後継者争いにも勝って侯爵になれると思っていたのに、まさしく天国から地獄に落ちた次男であった。
数日後、件の使用人は処刑される事になり、次男の恨みはレン一人に向けられる事になる。
「ククク、あの馬鹿達がやっと自滅したのね」
侯爵の正妻である嫡男の母が、嫡男の報告を聞いていた。
「しかし、あの場で使用人を殺させなく出来て良かったよ。あそこで使用人が死んだら、全ては使用人の所為にされて、あの馬鹿に逃げられるところだった」
「まあ、そうなの。その場にいたのは幸運だったわね」
「ふふふ、これで継承は確実。黙っていたって家来達は俺について来るだろう。今後は外に向かって、領地を拡げると共に、父上と王家を打倒し王位も手に入れられるよ」
一方、愉悦に浸る嫡男は、次男のやっていた事を知っていて放置していた。
いずれ発覚して後継者候補から脱落するのは、火を見るより明らかだと確信していたからだ。
これから、庶子達を焚き付け庶子達を味方に付けて、次男を追い込み、頃合いを見て手をのばせば、優秀なスキルを持つ次男も思いのままに扱えるようになる。
いや、思い通りに扱えるようにするのだ。
次男が買収していた者達も今後は自分に尻尾を振る事になる。そして後継者の地位を盤石にする。
その後、侯爵は側室と次男が公爵家の意向で横領された事を理由に、側室の実家である公爵家に宣戦布告し、領地を刈り取った。
初めから公爵家の領地を手に入れる為、侯爵も次男の着服をある程度は知っていて見逃していたのであろう。
これでミッキー侯爵家は力を蓄え、打倒王家に邁進していくのだ。
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