コボルトメイジ・フィア
辺境の開拓村に居座るゴブリン達の制圧。というか殲滅。若しくは蹂躙。
35匹のコボルト達はあっという間に目的を達成した。
「ガウガウガウ」(任務完了だワン!)
レンのところへ、一番に初めに報告に来たのはドーベルマンのコボルトであるドライ、副隊長はワイマラナーのアハトが率いる七匹。
「ガフガフ」(七匹倒したワン)
「一番はドライのチームかな」
「ガウガウ」(そうだワン)
「ほう、ドライが一番か流石だな」
教え子のドライが一番になって満足気のフェルダー。
「ちぃ、魔法のスクロールを覚えさせれば良かったわ」
「ワォン………」(ごめんね。負けちゃったワン)
2番目に戻って来てしょんぼりのフィアを撫でながら悔しそうなダリア。
「ごめんね。私が躊躇したばっかりに、こんな悲しい顔をさせて。……これでどうよ!」
「ダリア! それを! 魔法のスクロールをコボルトに使うなんて! 魔物にスクロールが使えるなんて聞いた事ないわ。止めなさい。勿体無───」
ヘレナがダリアとフィアの様子を見ていて、ダリアがフィアに魔法のスクロールを使うのを止めようとしたが、……時既に遅し。
光るスクロール。
その光がフィアに吸収されて………。
ここにコボルトメイジ、火魔法を使うフィアが誕生したのだ。
「ヘレナ、良いのよ。このスクロールは私の子供か弟子に使おうと思ってたモノ。フィアは紛れもない私の弟子なのよ。いや、子供と言っても過言では無いわ! 元々魔法使いが接近された時に身を守る杖術だけでは不十分なのは知っていたわ。これで私のフィアは誰にも負けない!」
「あ〜あ、コボルトの寿命は精々10年。後何年生きるか分からないのに………、でも明らかにコボルトメイジに進化したわ。これは発見ね。元々魔法の素養があったのかしら………」
ブツブツと独り言を呟くヘレナだった。
フィアは自分のマチェットをボルゾイのノインに渡す。
「ワォン」(このマチェットで、私の近くに誰も近付かせないでワン)
「ウォン、ウォン」(任せてワン)
それを見ていたダリア。
「フィア! 流石私の子ね。そこまで魔法に賭けるなら、これもあげるわ」
ダリアは自分の予備の杖をフィアに渡した。
先端に赤い火竜の魔石を着けたエルダートレントの素材。魔法を使う事に特化した杖。
「フィア、これで少ない魔力で魔法が放てるよ。同じ魔力ならより強力な魔法になるわ」
「ワォン♪」(有難うワン)
そのうち残りの21匹も戻って来て、ツヴァイ隊はエリーのところへ、フンフ隊はゲイルのところへ駆け寄る。
「ワフワフ」(4匹しか倒せなかったワン)
最後に悄気げてるアインス隊がレンのところに来た。
「あまり気にするな。アインスは薬草の採取や回復薬を作ったり出来るから、そっちを伸ばせばいいんだよ」
アインス隊の副隊長はコボルトの中で一番大きいアイリッシュウルフハウンドのゼクスだ。
「アフアフ」(俺は戦う方が好きだワン)
「そっかぁ。まだ始まったばかりだ。取り敢えずのチーム分けだからね。得意の武器も定まってないし、色々やってみないと好きな事も分からないだろう? 戦うのが好きならそう言う子を集めて戦闘に特化した隊を作っても良いしね」
ゼクスの頭を撫でながら廃墟になった辺境の村を見回すレンだった。
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