槍と弓
5匹のコボルトを仲間に加えたため、進行速度は更に落ちた。
馬と馬車だけなら速いんだけど、コボルトが子供サイズの大きさとは言え、流石に人間四人とコボルト九匹は馬車に乗れず。コボルト九匹は馬車に並走する事になったからだ。
その代わり、途中でアインスが新入りのコボルト五匹に薬草採取を教えたり、食料となる魔物を狩りながら『朝焼けの光』の四人は新入りのコボルト達も鍛えたりしながら進む事が出来た。
「そう言えば、新入り達に武器はないな」
とレンが呟くと。
「弓と槍でいいんじゃない?」
とエリーが応えた。
「弓と槍?」
「そうそう、狩人たるもの予備の弓と矢ぐらい自分で作れないと駄目だからね。ツヴァイに作り方を教えたのよ」
「え! 弓と矢を作れるの?」
「勿論作れるわよ。そしたらゲイルもフンフに槍の作り方を教えてたわよ。剣を作るのは無理だけどね槍と弓矢なら基本は木製だからね。槍の穂はアルミラージの角でもいいし、尖った石でも良いらしいよ」
「それは良いね」
(竹槍みたいなもんか? 払って斬る事は出来ないが、突き刺す事は出来そうだ)
その日の野営では弓と矢の作り方の講習が始まり、初めは不格好なモノになったが、「そのうち作るのも上手くなるだろう」とエリーとゲイルは言っていた。
「取り敢えず使えれば良いだろ」
とゲイル先生が言うので、使う事は出来るのだろう。
そんなこんなで、辺境の村に向うレン達はその後もゴブリンに襲われているコボルト達を助けたり、飢えて腹ペコのコボルトを仲間に入れたりしていき、遂にコボルトは35匹になっていた。
みんなお手製の武器を携えて、狩りの仕方もアインス、ツヴァイ、ドライ、フィア、フンフの始めにテイムした五匹が教えている。
『朝焼けの光』の四人はそんな弟子達が指導するのを満足そうに見ていて、時折アドバイスするくらいになっていた。
いよいよ辺境の開拓村が遠くに見え始める。
「ワフワフ」(ゴブリンがいるワン)
「バウバウ」(修行の成果を見せてやるワン)
「ゴブリンがいるわね」
ダリアは『サーチ』の魔法で探索したらしい。
「何匹いる?」
フェルダーがレンに尋ねる。
「アインス、何匹?」
「ワフワフ」(20匹ぐらいだワン)
「ガウガウガウ」(もう少し近付けは正確に分かるワン)
レンがアインスに聞くとアインスとドライが応えた。
「了解。20匹ぐらいだって」
「ほほう、手頃な数だな」
「そうね、そのくらいなら今のツヴァイ達なら平気でしょ」
「良し! 卒業試験だ。ゴブリン共を殲滅してこい!」
「ワフ!」「ワン!」「ガウ!」「ワォン!」「バウ!」
(((((了解!)))))
フェルダーが命令を下し、五匹のコボルトが力強く返事をした。
現在はアインス、ツヴァイ、ドライ、フィア、フンフの五匹がリーダーとなり、それぞれ七匹の班を作って、班ごとに行動している。
「さあ、どの班が一番敵を多く倒すか競争だ。よ〜い、……………ドン!」
フェルダーの合図で35匹のコボルト達が一斉に走り出す。
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