夏
窓から入ってくるぬるい風が首元を抜けると、いよいよ夏本番だと告げられたような気持ちになる。
私は夏が嫌いだ。スコールで湿気が充満した地下鉄と濡れネズミになった人々も。どこからともなく聞こえてくる花火の音と、はしゃぐ子供達も。陽が当たる場所全てが生き物のように熱を持ち、なかなか逃がしてくれないのも。
今日も風がぬるい。
毎年やってくるこの季節にほとほとうんざりしていた。食欲はなくなり、ただ腰を上げるだけの動作でさえ嫌になり、全ての気という気は失せる。そうしていると自分はまるで陽炎の中にひとり取り残されているような気持ちになる。一体いつまで私はここにいるのか。
今日も風がぬるい。
これまで良い思い出なんてあっただろうか?とうんざりした頭で考えてみる。陽炎のゆらゆら揺れて先も見えない記憶の中、ふっと一瞬私の首元をすずしい風が抜けた。
その日、風はやわらかく不思議とすずしく感じさせた。ふたりで何かを話しては笑い合いあった。強く照りつける太陽でさえ、あなたの作る大きな影には敵わなかった。大きな影は私と何度も重なり合い、ただそこにあった。
ああまただ。風がぬるい。今日もぬるい。
私は今日もあの風を待ってる。
初めて投稿しました。ジャンルやテーマはどこに当てはめたら良いのか分からず、もし思ったものと違った。と感じた方がいらしたらすみません。




