フレッシュ・サラダ(短編版)
※とびらの先生主催『あらすじだけ企画』参加作品です。
ですので、内容は冒頭からエンディングまでのあらすじ「だけ」ですので本文はありません。ご注意ください。
世界戦争で植物を育てられる土壌が極端に少なくなり、家畜も絶えた時代。
残った人類は支配層が供給する壁に囲まれた安全な街の中で人肉とサプリメントを頼りに生きており、ごく一部の農場からとれる野菜は一部の支配層『中央政府』の人々のみ食べられる。
政府で食料供給を担う人物を父に持つフィリップは、幼いころに教育で父親から見せられた「人肉加工」がトラウマで、16歳の今でも菜食主義を通していた。
母親からは常々サラダを食べられる幸運について語るが、彼の中ではむしろ野菜を食べる方が自然なのではとの考えが日々大きくなっていた。ただ、生まれた時から存在する「一定以上の違反を重ねると食肉加工ラインに放り込まれるポイント制」については自然なものだと受け止めていた。
そんな折、彼のクラスの悪ガキが制度に引っかかって葬儀のあとで屠殺され、葬儀で死者の肉を食べる慣習を拒否したことを機に、周囲から特権階級の鼻持ちならない奴と非難され、片思いのクラスメイト、アリサにも軽蔑の目を向けられてしまう。
それからフィリップは肉を食べることに挑戦するがうまくいかない。
クラスで浮いた存在になりながらも有力者の息子として腫れものを扱うような環境に置かれたまま、彼は卒業後の進路について考えを決める時期になった。
ある日突然アリサが退学処分となり、噂では教師との不倫関係が発覚して「人肉加工処分」されると知る。
彼女のイメージが壊れたことにも死の縁にいることにもショックを受けた彼は、父親にどうか人肉処分は避けてほしいと頼み込んだ。
父親は自分の後継として、肉を食べることはせずとも研修のために中央政府施設で働くことをフィリップに約束させ、人肉加工からアリサを除外するよう取り計らうと約束。
様々な後悔を抱えたまま卒業を迎えた彼は、自身の希望通り政府管理農園での研修員として同年代の人々と住み込みで働き始めた。
軽薄なトリーやサプリ中毒のサナ、生真面目なクラレンスなどの仲間が出来、互いに仲良くなったころにクラレンスが失敗をして違反ポイントを付けられたことで配置換えとなる。
気落ちする彼を気にしたフィリップたちは、クラレンスを訪ねて農園のある区画に入り込む。そこで彼らは人間を冷凍し砕いたものを一部はサプリに加工。残りは土に混ぜ込み肥料としていることを知る。
そこでクラレンスと再会するも、彼は薬でおかしくなりサナを見てしがみつく。警備員が来てフィリップは仕方なくトリーと二人で施設を逃亡。その最中破砕処理待ちの冷凍死体の山の中にアリサを発見した彼は、自宅へと逃げ込む。
父親に状況を説明して保護を求めたフィリップは、トリーと共に警備に捕らえられて教育施設へ放り込まれてしまう。
監獄での食事は肉とサプリのみ。トリーはしぶしぶ食べていたが、フィリップは空腹の限界まで耐えていた。幻覚が見え始め、他人を食べるくらいなら自分を食べるかこのまま餓死を選ぶべきかとぼんやり考え始めていたころ、父親から野菜サラダの差し入れが来た。
瑞々しいサラダを夢中で食べ終えたフィリップは、農場でのことを思い出して嘔吐しようとするが、その気力も残っていなかった。
訪れた父親の説得に屈したフィリップはトリーと共に再び農場で監視付きの作業に戻った。そこですっかり変わり果てた様子のサナも見たが、助ける方法もわからない。
配給されるサプリをしぶしぶ口にしていたフィリップは、ある日ふと自分の考えが不自然に人肉食を受け入れるような、どこか倫理的に違和感がある思考方向へ傾きつつあることに気付いた。
試しにサプリの一部を食べずにひっそりと農場で処分するようにしてみると、以前同様かそれ以上に思考がクリアになることを発見。それをトリーに伝えようとしたが、彼はすでにサプリの影響で反応が鈍くなって話が通じなくなっていた。
仕方なく一人で寮から抜け出した彼は、施設内の死体置き場に隠れて警備をやりすごし、以前連れて行かれたことがある父の職場に忍び込む。
父親との口論で「支配者層が多くの人々を洗脳している」ことを知り、フィリップは父親を殴り倒して昏倒させ、施設から町の外へ出るための唯一のルートである廃棄物排出口へと飛び込んだ。
ごみの山の中でアリサが身に着けていたブローチと同じものを見つけた彼は、それを握りしめてごみの圧力の中で気を失う。
そして目を覚ますと、彼は大きな壁の外側にいた。
壁の中から放り出されたごみで濁ったどぶ川と、近くを走り回るネズミを見た彼は、空腹を覚えて衝動的にネズミを叩き殺し、肉を貪る。
ネズミは美味しく、生臭いが自然の味がした。そして近くにネズミが齧ったような歯型のついた人間の腕が転がっているのを見つけて、フィリップは苦笑いしてからいつまでも泣いていた。
お読みいただきありがとうございました。