表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
時き継幻想フララジカ 第三部 『真界編』  作者: ひなうさ
第三十九節 「神冀詩 命が生を識りて そして至る世界に感謝と祝福を」
441/466

~猛攻、その真なる目的は~

 島が業炎に包まれた。

 直径二キロメートルにも及ぶ島全体が、だ。

 それも空を巻き込まんばかりに黒煙を膨らませて。


 その更に上空では巨大な赤翼を拡げた茶奈の姿が。

 なお周囲に舞う四星達から炎を放ちながら。


「燃えろ! 燃エろッ!! 魂素ノ欠片も残さず焼き尽くサレてしまえッ!! アッヒハハ!!!」


 太陽光さえ遮らんばかりに赤々と燃え、見下ろす茶奈の顔をも影に堕とす。

 その中で歪に笑う様相は、今までの演技とはまるで違う。


 まさしく悪魔だ。

 曝け出された邪神の本性だ。

 根底が捻り狂った逸人(ならざるもの)の、世界に負を擦り込む怪声だったのだ。


 何者をも焼き尽くさんばかりの業炎黒煙を前に、その怪声が響き渡る。

 未だ絶えぬ爆裂音さえ裂かんまでに甲高く。




 しかしそんな茶奈が咄嗟に気付く。

 炎の中に一瞬、ごく小さな光が瞬いた事に。


 ―――それが始まりだった。




 突如、光が業炎を()り貫いて飛び出したのだ。

 虹色の、極々細い糸の様な閃光筋が。

 それも一直線に茶奈へと向けて。


キュオオオーーーンッッ!!!


 この光はまるで【創世弦】の光矢そのもの。

 何者をも瞬時に貫く無限裂光だ。


 その輝きの元を辿った先に見えたのは―――なんと瀬玲。


 この爆炎の中でも生きていたのである。

 勇の【極天陣(プロテクトスフィア)】に守られて。


 しかもその才能が【創世の鍵】の一撃さえも模倣する。

 魔剣の砲身が白熱融解する程の超高出力砲として。


 ただその一撃は高出力であるが故に直線的。

 素早い茶奈を捉えるのは不可能に近い。


 だがそれでも撃ち放った。


 それは当てられる可能性を秘めていたからだ。


 茶奈が翼を扇ぎ、空を跳ねていく。

 するとその途端、光線筋が驚くべき軌跡を見せつける事に。


 突如として途切れ、何も無いあらぬ方角から飛び出したのだ。

 それも逃げる茶奈を追う様に幾度と無く。

 たちまち乱立軌跡群が後へと刻まれる事に。


 それも瞬時に、茶奈もが鋭角残光を残す中で。


 その正体は勇の天力転送。

 遠隔転送で高出力砲の軌道を強引に変更(ズラ)したという。

 【崩力】の感知外、かつ最短距離からの全域(オールレンジ)攻撃を再現したのだ。


 すなわち、転移式追跡光線砲(トランシングレーザー)である。


 その様相はまるで光網の如し。

 もはや人一人を通す隙間が無い程に細かく、そして破壊的だ。


 偶然か必然か、巻き込んだ魔剣星一つを貫き消し飛ばす程に。


「小賢シいッ!! ならばお前達ごと消し去るまで―――」


 しかし勢いは止まらない。

 空へと舞い上がる茶奈へと向け、流星一つが降り注いだ事によって。


 なんと心輝が落ちて来たのだ。

 魔剣を赤熱発火させる程の勢いで。


 これも勇の仕込んだ事である。

 島爆発直後に心輝を成層圏スレスレまで運び、落とした事によって。


 加えて当人の爆発力も加われば、その速度はまさに流星の如し。


 空気を裂き、音をも穿つ。

 烈火の煌鋼拳が何者をも打ち砕かんとして。


ドッギャァァァーーーンッ!!!


 それが容赦なく茶奈を打つ。

 杖柄で防がれようとも構う事無く。

 爆炎の中へと押し込まんばかりに叩き付けて。


 その左拳は主彗星。

 ならば右拳は続く連星群(スターダスト)となろう。


 拳は止まらない。

 左拳を押し付けたまま、右拳を何度も何度も。

 それも茶奈自身ではなく突き出された杖へと執拗に。


「短絡的なあッ!! そノ程度で私が突破出来ルとでモ思ったかッ!!」


 茶奈はそれでも凌ぎ切って見せる。

 その見境無い連撃(ラッシュ)を弾き、黒煙をも避ける事で。


 しかも超高速で空へと舞い上がり、大翼を拡げていて。

 

「圧倒的な力差を理解出来ヌ肉共が!! 潰れテ滅しろおッ!!」


 強大な羽ばたきによる超重圧を心輝へと叩き込む。

 地球の重力を遥かに超えた、何者をも潰しかねない圧力だ。


 だがその瞬間、なんと勇が心輝の目前に。

 それもプロセスアウトによる【創世剣】の一撃を繰り出すまま。


 歪み揺れる空間をも断ち切って。


 なんと重圧が、切れた。

 真っ二つに、まるで二人を避ける様に。

 理をも断つ【創世の鍵】の力ならばそれさえ可能としよう。


 その隙を縫って、心輝が再び飛び出す。

 勇の切り拓いた道を抜け、茶奈へと一直線に。

 その機動力、もはや限界を超えて。


 感情が爆発する。

 想いが燃え盛る。

 茶奈にさえも追い付ける程の力をもたらす程に。


 するとたちまち空に二つの鋭角軌跡が長々と刻まれる事に。

 燐炎が、破光が、幾度と無く迸る中で。

 空さえも狭いと思わせる程の縦横無尽と。


 しかもその中へと高出力砲が再び放たれる。

 当然、転移式追跡光線砲として。

 なれば二つだった軌跡が遂には三つに。


 こうなるともう留まる事など無い。

 瞬時にして全てが遥か空の彼方へと抜け、またしても残光軌跡を描く事に。

 まるで流星群が空を自由に飛び回っているかの様だ。


「肉が皮肉ってならよォ!! 牛も豚も鶏肉でも、旨ぇから誉め言葉になるんだぜえッ!!」

執拗(しつこ)い煩い鬱陶しいッ!! 性懲りもナい屑肉どもガあッ!!」


 その中で茶奈が杖を振り回し、心輝を強引に軌道より叩き出して。

 更には杖先に光を灯し、なお燃える大地へと向けて解き放つ。


 【光環珠(サークルスター)】だ。

 アメリカ戦で見せた、核弾頭をも飲み込むという超圧縮光球である。


 そんな命力包球が到達すれば―――地表が今度は光に包まれる事に。


「うあああーーーーーーッッ!!!」


 その下では、瀬玲が必死に光球を受け止めていて。


 地表が割れ崩れる。

 辺り一帯を押し潰して。

 岩が砂が消し飛びながら。

 何者をも光の真白に覆い尽くす中で。


ビギギッ!!


 その圧力が、濃度が遂に魔剣の強度さえも凌駕する。

 【ペルパリューゼ】の筐体に無数の亀裂が走ったのだ。

 高出力砲の負荷に加え、【光環珠】の命力吸収に耐えきれなかったらしい。


「耐えて【ペルパリューゼ】ッ!! 今一度だけえッ!!」

 

 命力珠が融解し、筐体が破片を舞わせる。

 しかしそれでも瀬玲の強い想いに応え、四つの砲身がまた光を飲み込んだ。


 それが渦巻き、捻り、炎と共に飲み込んで。

 赤煙と共に収束、瞬光を弾かせたままに空へと向けて輝き迸る。


 焼けた大地にそそり立つ、閃光の巨大十字柱(グランドロザリオン)として。


 その下で瀬玲が魔剣を番え、頭上一直線に解き放つ。

 【光環珠】の超エネルギー全てを集約した一撃を。

 周囲を抉り尽くす程の衝撃波と共に。


 魔剣【ペルパリューゼ】が粉々に砕けようとも構う事無く。


 放たれた一撃は今までの何よりも強大かつ巨大。

 あの茶奈が首を引かせてしまう程に。


 そんな彼女の前に三星が飛び塞がる。

 それも光の三角陣を描いて。

 光の盾だ。

 小さいながらも高濃度の命力盾が形成されたのだ。


 命力盾と十字光矢(グランドロザリオン)

 この二つの力がたちまち打ち合い、飛雷裂光(スパーク)する事に。


 均衡している。

 どちらも負けてはいない。

 あの【アストラルエネマ】の力を以てしても打ち消せないでいる。


「よクここまでやルッ!!! だがーーーッッッ!!!! 」


 ただこれは子星達の力だけを使った結果に過ぎない。

 そこに本体の持つ力が加われば―――


ドッバァァァーーーンッ!!!


 こうして弾けて散る事となる。

 茶奈の杖による一突きが加わった事によって。


 魔剣を犠牲にした決死の反撃(カウンター)もこれでは無為に。


 だがやはり瀬玲は瀬玲だ。

 こうなる事さえも見越していたのだろう。


 光が弾ける。

 無数の糸を撒き散らしながら。

 それも、茶奈を覆い尽くす様にして。


 光矢に細工を施していたのだ。

 茶奈の動きを止める包縛網(トラップネット)となる様に。

 ただでは転ばない瀬玲らしい追撃である。


「それは簡単には解けないでしょッ!!」


 しかも茶奈の超濃度命力を流用している。

 お陰で自身では切れない事も加え、強靭かつ強固。

 故に、あの茶奈が捕らえられて間も無く身動きをも止められる事に。


「ぐウううッ!!?」


「くぅおおおーーーーーーッッッ!!!!」


 その隙を逃がす訳にはいかない。

 そう言わんばかりに背後から勇が現れ、輝く斬撃を力の限りに振り下ろす。


ギャアアアアアンッッ!!!


 しかしその時鳴り響いたのは斬れた音でも空音でもない。

 金属を擦り削る金鳴音だ。


 なんと三星が勇の斬撃を受け止めていた。

 縦一列に均等と並び、削岩機(ドリル)の様に回転しながら。

 一寸の狂いも無く【エベルミナク】の刃に並んで突き立っていて。


 更には驚くべき事までやってのける。

 三星が回転するまま、刀身を強引に削り取ったのだ。

 深々と抉り、象形飾りさえも砕き炸裂させる程に勢いよく。


「うおおおーーーッ!!?」


「この程度ノ束縛があッ!! 私に何の意味をもたらスというのだあッッ!!!」

 

 しかも勇もが激しく弾かれる事となる。

 突如として茶奈から放たれた強圧によって。


 茶奈の命力の色が変わっていく。

 赤々しかった光が真っ黒に。


 命力質転換(ソウルチェンジ)である。

 本来、普通の人間では実現不可能と言える現象だ。


「どれダけの魂を喰らってきたと思ってイるッ!? この肉だケが我が力ではナいッ!!」


 これは人ならざる邪神だからこそ出来る。

 無数の人々の魂を混ぜ込んだ存在だからこそ。

 故に、身に纏う捕縛糸さえ瞬時にして消し飛ぼう。


 そうして翼を奮う姿にもはや神々しさは欠片も無い。

 まるで闇を抱く邪悪そのものだ。

 その性質と合わさり、見紛う事無き邪神を示している。


 でもその姿がなんだというのだ。

 邪神と戦っていた事実に変わりはない。


 だからこそ恐れはない。

 怯えも恐怖も不安も取り払った。

 全てを巻き込み、全てを力と換えた。


 ならば力巻(りきま)こう。

 己と、仲間と、死んでいった者達の想いも推力へと換えて。


 燐光が渦巻く。

 虹炎が轟く。

 青の空をも貫く輝羅烈閃の軌跡が示すままに。






「ブチ貫けェ!! 灼雷咆哮(ラティスタン・ロア)ァーーーーーーッッッ!!!!!」






 それは茶奈が捕縛を解いた直後だった。

 気付けない程に一瞬の事だった。

 たったそれだけの間に心輝が距離を詰めていて。


 その中で遂にあの極光烈拳を解き放つ。

 全てを穿ち、貫き、焼き尽くす究極拳を。


「ちいいッッ!!?」


 その拳に、茶奈の杖先突きが迎え撃つ。

 躱せない防げない、そう悟ったからこその応戦として。


ガッキャアアアンッッッ!!!


 故に激音が響く。

 鼓膜を突く程にけたたましく。

 超高硬度の魔剣が打ち合った事によって。


 その衝撃は場を包む程の虹燐光を撒き散らすまでに強大。

 それでいて大気が吹き飛び、真空圧をももたらしていて。


 その中で打ち合った二人が、睨みを交わす。

 力の限りに自慢の拳を、杖を突き押して。


ビギギンッ!!


 しかしその押し合いも直ぐ均衡が崩れる事に。

 【ラークァイト】の左拳に亀裂が走ったのだ。

 さすがの高強度を誇ろうとも、このぶつかり合いと威力には耐えきれなかった。


「だから無駄だト言って―――」

「いいやッ!! 無駄なんかじゃねえええーーーーーーッ!!」


 でも拳は収まらない。

 炎が光が、魂が打ち震える限り。

 魂燃ゆる拳は何であろうと貫けぬもの無し。


 何故ならば。




 今穿ちしは物ではなく、その魂なのだから。




バッギャギィンッ!!!


 裂音がまた響く。

 それも連鎖的に。


 それでいて、先よりもずっと破壊的に。 


バッキャァァァーーーーーーンッッッ!!!!


 そして遂に砕け散る事となる。




 茶奈の杖が。

 今まで猛威を奮ってきた魔剣【ユーグリッツァー】が、粉々に。




「なんダと……ッ!!?」


「へっ、へへ……ッ!!」


 この結果を前に心輝が小賢しく笑う。

 一方の地上でも勇と瀬玲が力拳を握っていて。


 そう、三人はこれを狙っていたのだ。

 決して茶奈本体では無く、武器である魔剣の破壊をずっと。


 だから攻撃を繰り返した。

 魔剣を破壊し、攻撃力を削ぐ為に。

 体力も命力も削ぐ上で攻撃手段をも奪う事に徹したのである。


 そうして今、とうとう実が成った。

 勇達の地道な努力が決定的な成果として。


 確かに茶奈は無尽蔵の命力を持ち、本体だけでも充分に強い。

 だが遠距離砲撃が無ければもう、一撃必殺級の攻撃は皆無となる。


 すなわち恐れる要因が激減したという事に他ならない。

 ならここからが勇達の真の反撃となろう。




 邪神攻略はここより真価を見せる事となるだろう。

 人類 対 邪神―――この戦いにようやくの転機が訪れた瞬間だった。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ