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時き継幻想フララジカ 第三部 『真界編』  作者: ひなうさ
第三十九節 「神冀詩 命が生を識りて そして至る世界に感謝と祝福を」
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~激戦、転戦、その力の根源とは~

ズンッ! ズズゥンッ!!


 爆炎が空の中で幾度と無く燃え盛る。

 空を覆い尽くさんとばかりの幾箇所に。

 勇と心輝に追われた茶奈を、瀬玲が地上から狙い撃つ事によって。


 攪乱幕を撒いた今、茶奈の動きが見違える程に落ちている。

 加えて二人の追撃が意識を掻き乱すお陰で、こうして自由に撃ち放てるという訳だ。

 後は二人が砲撃に合わせて動けばいい。


「くぅおおおーーーッ!!」

「でりゃああーーーッ!!」


 その爆炎を抱く様に虹燐光が放たれ、雷光が軌跡を刻み続ける。

 事ある度に更なる閃光を弾き飛ばしながら。

 回避されながらも一部攻撃が当たっているのだ。


 勇が何度も天力転送で先回りして。

 心輝が超高速で追いかけて。

 茶奈の防御を突破する事は出来なくとも、間違い無く力を削いでいる。

 体力を、精神力を確実に。


 だからこそ諦めない。

 背後からの斬撃を躱され、反撃の拳を打ち込まれようと。

 連打拳を凌がれ、杖での殴打に晒されようと。

 すぐさま体勢を整え隙を与えない。


 今ここで引けば茶奈は直ぐに体勢を整えてしまう。

 最悪の場合は攪乱幕対策さえ施されかねない。


 故に常々全力。

 その強い意志で動く二人を前に、さすがの茶奈も自由を奪われたままだ。


「肉どもめッ!! 調子に乗るかあッ!!」


 だからか、茶奈がとうとう痺れを切らしたらしい。

 遂には魔剣を主盾として操り始め、合間を縫って砲撃まで撃ち放ち始める。


 けれど勇達の勢いはその程度では止められない。

 幾ら弾速が速くとも、物理干渉下の砲撃であれば勇達なら避けられよう。

 加えて瀬玲へと撃ち放とうものなら受け止め吸収するという。


 三人のコンビネーションが今、しっかりとハマっている。

 紛れも無く茶奈を包囲しているのだ。


「調子に乗らせてもらう!! そしてこのままお前を引き摺り出してみせるさッ!!」

「出来るものかッ!! 言ったハズだ、この肉の魂は私が喰ったとおッ!!」


 勇の徹底した追い込みがとうとう刃を追い付かせる事に。

 怒涛の三連斬が無間攻撃(プロセスアウト)によって繰り出され、虹光の三叉軌跡を刻み込む。

 全て杖で凌がれるものの、最初の攻防と比べれば段違いの進歩である。


 乱戦ならば無間攻撃も読まれようが通じる。

 茶奈の反応速度が追い付いていない証拠だ。

 恐らく心輝と瀬玲の姿が見難くなった事で意識を引っ張られているのかもしれない。


「勇ばっかに気を取られてるとよぉーーーッ!!」

「ぐううッ!?」


 そのお陰で心輝の攻撃も当たる様になっている。

 勇の攻撃に注視する余り、拳が片脚に打ち当たる事に。

 ただその直後には、打たれたままに垂直回転した茶奈によって蹴落とされたが。


 でもそんな茶奈の頬傍を光弾が突き抜ける。

 咄嗟に首を捻って躱したものの、まさに紙一重だ。


 更には今抜けた光弾が背後で爆発し、大気を激しく揺らす衝撃波を生む。

 こうなればもはや自由な飛行は出来ないはず。


 しかしその様な中であろうとお構いなしで。

 強引にも翼を仰ぎ、空高く飛び上がっていく。

 それも天地真逆姿勢のままで、魔剣を身構える姿が空の中に。

 

「例え命力を吸い取ろうと直接当てなければいいだけの事―――」

「や ら せ る かよぉーーーッ!!」


 ただそんな茶奈を同等の速度で追う心輝の姿が。

 しかも左拳を引かせたまま螺旋を描いて。


 螺旋の軌跡は力の充填。

 紅雷の輝きはその力を重ねる為に。


 そうして生まれし力は何者をも貫かん一閃なり。




灼雷(ラティスタァン)ッ―――」

「遅いッ!!」




 ただし、それは拳が届けばの話。

 届かなければ必滅の一撃と言えど無為と帰そう。


 隙を突いたつもりだった。

 感知外からの一撃のつもりだった。

 にも拘らず、妨げられたのだ。


 その腹に反撃の杖柄突きを見舞われた事によって。


 それだけには留まらず、空かさず心輝の顎が跳ね上がる事に。

 追撃の足蹴りをも見舞われたのである。


「がはッ!?」


 途端、心輝がぐるぐると回転しながら大地へと跳ね飛ばされる。

 ただし、見栄えに伴わない緩やかな勢いで。


「……小細工を」


 それもそのはず。

 今この時、茶奈の体は縛られて動きを制限させられていたのだから。


 瀬玲の放っていた命力糸によって。


「アンタの命力を使わせてもらったからさあッ!! 切れる訳が無いよねぇ!!」


 恐らく撃ち放った光弾に糸を繋いでいたのだろう。

 そして知らず知らず内に絡ませ、大地と繋いでいた。

 だからか、よく見れば今の茶奈の下半身は糸でがんじがらめ状態だ。

 そのお陰で心輝への反撃の威力も抑えられていたらしい。


 しかも茶奈の命力を使っている糸ならば自身では切れない。

 つまり、捕まえたも同然。


 瀬玲もそう思い自信満々だった―――のだが。


「フン、ならば精々自ら切らずに掴まっている事だな……ッ!!」


 それをあろう事か、茶奈は嘲笑っていた。

 翼を激しく輝かせ、強く仰ぐままに。


 するとこの時、信じられもしない事態が瀬玲を襲う。


 大地が隆起したのだ。

 小岩、柔土をも砕いて押し退け、糸で繋いだ大地ごと持ち上げて見せたのである。

 あろうことか全長五〇メートル程もある巨大な岩盤の一部を。


「なあッ!? 常識はずれにも程があるでしょおッ!?」


 それも瀬玲を巻き込んだままに。

 

 おまけに糸を掴み、遂には振り回して。

 立ち直った心輝をも巻き込み、砕きながら放り飛ばすという。

 元が余りにも巨大過ぎたが故に、回避など到底無理だ。


「そのまま蟻の様に潰れて死ねばいいのに」


「それを寄生虫のお前が言うかあーーーッ!!」


 ただその超巨大遠投劇は茶奈の隙を生むには充分過ぎる行動だった。

 そう呟き佇む茶奈の頭上から、勇が【創世剣】を振り被っていたのだ。


 対無間攻撃の反撃も出来ない。

 回避も防御もままならない。

 そんな茶奈へと向け、虹光の斬撃が遂に振り下ろされる。


 この一撃は、茶奈の心を解き放つ為に。

 そう信じ、力の限りに振り下ろした。




 ―――はずだった。


 だがこの時、勇は驚愕する。

 それどころかア・リーヴェさえも。






 なんとあろう事か、【創世剣】が歪んでいたのだ。

 まるで刀身が茶奈を避けたかの様にぐにゃりと、円状を描く様にして。






「な、にいッ!?」

「馬鹿めが。 この私が【創世の鍵】に対して何の対策も取っていないとでも思ったか?」


 そうして通り抜けた挙句、更には勇の腹に茶奈の膝がめり込む事に。

 通り抜ける事がさも当然、そんな姿勢で反撃し返したのである。


「がはッ!?」


 更には魔剣による追撃の殴打まで。

 故に勇がまたしても大地に叩き付けられる事となる。


ズズゥン……

ガゴゴォン……


 勇の墜落と投石群の落下、それが今同時に。

 無慈悲なる反抗は優勢さえも掻き消す程に凄まじかった。


 気付けば島大地はもはや原形を留めてはおらず。

 抉られ砕き尽くされて、緑は愚か土面さえ僅かという。

 まだ戦いが始まって間もないというのにとてつもない惨状だ。


「この攪乱にももう慣れた。 クフフ、良い手だったが……私が適応出来ないとでも思っていたのか?」


 この惨状を許したのは、茶奈がもう命力攪乱幕に適応出来たから。

 だから心輝も瀬玲の姿も見えていて、しかもそれを逆手に騙し討ちまでしてみせるという。


 そう、心輝の大技の隙を突いたのも、瀬玲の拘束を利用したのも全てフェイクの賜物。

 もうその時点では適応し、二人の姿をしっかりと認識していたのである。


 そしてもう一つ、茶奈は大きな秘密を隠していた。

 世界の理から外れているはずの【創世剣】、それを歪めるという常軌の逸した秘密を。


 この力の正体とは一体……。




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