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時き継幻想フララジカ 第三部 『真界編』  作者: ひなうさ
第三十九節 「神冀詩 命が生を識りて そして至る世界に感謝と祝福を」
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~圧倒、全てを知り尽くした者~

 茶奈の実力は勇達が一番良く知っている。

 その膨大なる命力も、その力に順応して鍛えられた体も。

 細身であろうと強靭であり、柔らかそうに見えても強固。

 その様に見せたままの肉体進化を遂げたからこその在り方だ。

 お陰で昔と比べて身長こそ伸びたが体型は殆ど変わらない。

 故に、異なる点があるとすればこれに尽きる。


 〝その肉体はあらゆる戦いに適応している〟と。


「クフフ、皆さんせっかちですね。 世界の終わりまでゆっくり楽しめばいいのに」


 その茶奈が不敵に笑う。

 背中の光翼を輝かせたまま空の上で。


 心輝が高速で迫り来る中にも拘らず。


 しかしそんな心輝の背後より、突如として光が瞬く。

 瀬玲の魔剣から光弾が放たれたのだ。

 それもまるで閃光の如く空気を裂きながら、心輝よりもずっと速く鋭く。


 加えて、放たれた光弾は紛れも無い【ペルパリューゼ】の最大出力砲。

 威力だけならば茶奈の【複合熱榴弾(コンポジットカノン)】とも遜色無い代物と言えよう。


 この一撃が直撃すれば如何な茶奈とて耐えられはしないはず。


「さすが【アーディマス】製、命力収束率の完成度は模造品なんかとはやはり訳が違いますね。 ですが―――」


 でもその様な光弾を前にしようと茶奈の余裕は全く消えない。

 それどころか目前へと迫ろうがお構いなしに分析までしてみせる始末だ。


 しかもそれだけでは済まさないという。

 なんと直撃の寸前で光弾が弾かれていた。

 茶奈が目に留まらない程の速度で魔剣を振り切った事によって。


 まるで通用していない。

 それ程の威力の弾であろうと、まるで豆粒の如く跳ね飛ばして見せたのだから。


 ただ、したたかなのはやはり瀬玲か。

 撃ち放った光弾が一発に留まる訳がない。


 初弾を弾いた時、茶奈は目の当たりにするだろう。

 同軸線上から迫る二・三発目を。

 初弾をカモフラージュにした追撃が既に放たれていたのだ。


「ッほう!?―――」


ッドゴォォッ!! ドッギャォォォンッッッ!!!


 その追撃が見事に当たり、空上に真っ赤な爆炎が跳ね上がる。

 余りの弾速から、爆発までもが慣性のまま広がった事によって。


ギャルルルッ!!


 しかしそんな爆炎さえもがたちまち巻かれて消し飛ぶ事となる。

 茶奈がその右掌一つで回す、回転翼(タービン)の如き杖によって。

 

 防がれた。

 いとも容易く。

 これ程の威力の爆発であろうとも。


 とても型落ちの魔剣を使っているとは思えない防御能力だ。

 幾ら茶奈でも、スペック上ならばこの威力は防げるはずが無かったのに。


「ですが練度が届かないんですよ。 所詮遠距離では―――」

「ならコイツならどうだあッ!!」


 するとその途端、天に舞い上がっていた煙もが弾け飛ぶ。

 中から心輝が飛び出してきたのだ。

 それも茶奈の背後を狙う様にして。


 そう、瀬玲の放った弾は全て牽制(フェイク)

 威力は籠めたが全てが通用するなどとは思っていない。

 あくまでも心輝に先手を与える為の援護だからこそ。


 それに、心輝が光弾より遅かったのはただ速度を抑えていたから。

 瀬玲の援護射撃に合わせる為と敢えて落とし込んでいたに過ぎない。


 ならば―――茶奈へ迫る速度は光弾などよりもずっと速い。


「っしゃらあああーーーーーーッッ!!!」


 まさに電光石火。

 煙が消し飛ぶよりも先に茶奈へと拳が伸びる。

 紅雷光の輝きを纏った雷閃正拳が。

 

ドッゴォッッッ!!


 たちまち肉打音が鈍く響く。

 光が弾け飛ぶその中で。


 しかしこの時、心輝は垣間見る事となる。

 恐るべき事実を目の当たりにした事によって。


 なんと茶奈が左腕一本で防いでいたのだ。

 魔剣も魔装も備えていないその細い左腕で。

 それどころか空中でも微動だにせず、全ての威力を殺しきっていて。


「な、にいッ!?」


 それだけではない。

 茶奈は一切視線を向けていなかった。

 瀬玲が走る地上を見下ろしたままで一寸のズレも無く防いだのである。


 これに驚愕しない訳が無い。

 脅威を感じない訳が無い。


 眼中に無し。

 そう言われたも同然の行為だったのだから。


「くッ!? ならこいつはどうだぁーーーッッ!!!」


 それでも心輝は挫けない。

 一撃が防がれたなら、何度でも打ち込めばいいのだと。

 自慢の速さで殴り続ければいつか隙が産まれると信じて。


 その途端、茶奈の周囲に雷光の軌跡が無数に刻まれる事となる。

 心輝が凄まじい速度で駆け飛ぶ事によって。


 その速さはまさに電光の如く。

 残光が消える間も無く幾重にも追い重ねられていくという。


 その中でまたしても閃光の拳が、蹴りが打ち放たれる。

 アルバ戦でも見せた超高速乱撃が。

 一発一発は軽くとも威力が乗っているからこそ尋常ではない連撃だ。


 それこそ、茶奈であろうとも防ぎきれない程に。


 ―――そう思っていたのに。

 だが現実は理想を簡単に打ち砕いてくれる。


 なんと、全ての攻撃が左腕たった一本で防がれていた。

 心輝の動きにも負けない―――いや、それ以上の速さで捌き防いでいたのだ。


「貴方より私の方が遅いって思っていたんです? いや、確かに遅かったのかもしれません―――でもそれはね、私が今の()じゃない時の話なんですよッ!!」


 更には蹴り出された足先を掴み取り、心輝ごと振り回して見せるという。

 それも茶奈の持つ飛行能力のまま、抗えない程に。


「うおあああッ!!?」

「つまりお前も練度が低いッ!! つまらん肉如きの戯れがあッ!!」


 しかもその中で飛び来る光弾さえ防いで見せるという。

 全てを見る事無く、ただただ感じるままに手を振り回して。


 そう、全て感じ取っている。

 目で見る必要が無いからだ。

 邪神の魂そのものが視認する以上に命力を鋭く感知出来るからこそ。


 加えて、茶奈の肉体は命力という性質にこれ以上無く強く影響され易い。

 故に、力の塊である邪神はその肉体を誰よりも強く速く鋭く操作する事が出来るのである。


 そしてその知覚範囲は、普通では感じられない力さえも決して例外としない。


ドッゴォッッ!!!


 その直後、再び鈍い音が響く。

 肉と肉が打ち合った弾音が。




 なんと勇が振り回される心輝に叩き付けられていたのだ。

 それもあろう事か、天力転送した直後に。




「ぐうあッ!?」

「んっがあ!!」


 茶奈の隙を突いたはずだった。

 その為に無間攻撃(プロセスアウト)で迫ったはずだった。

 なのに、逆に打たれていて。


「くそッ!!」


 これは偶然か、それとも。

 しかしそんな事を探っている余裕は無い。

 だからこそ勇が光を弾かせながら姿を消す。

 

 再びの無間攻撃だ。

 攻撃の合間ならば幾ら茶奈とて反応は出来ないはず。




 ―――そう思っていたのに。


 直後には、あろう事か勇の顔が歪んでいた。

 茶奈の肘が頬へと打ち込まれた事によって。




「ぐ、え……ッ!?」


 勇の斬撃が届かない。

 それよりも速く、鋭い肘打ちが見舞われたのだ。

 まるで無間攻撃を先読みしたかの如く。


 更にその間も無く、怯んだ勇の腹に強い衝撃が加わる事に。

 追撃の爪先蹴り(トゥキック)が炸裂したのである。


 その威力は凄まじく、勇の体を瞬時にして大地へと届かせるほど。

 たちまち島の一部が岩屑と共に砕け飛ぶ事となる。

 それも二箇所同時にして。

 今の一瞬で心輝もまた投げられていたのだろう。

 

「愚かな。 【創世の鍵】を知り尽くした私に【ナ・ロゥダ(第四の門)】如き児戯が通用するものか」


 その全てを成したのはやはり邪神であるが故か。

 力を本人以上に引き出し、しかも【創世の鍵】の力に対しての対策も済んでいる。

 恐らくは力の流れを感覚的に見切っているのだろう。

 邪神が天力をも感知し、流れを読み取れる存在だからこそ成し得る技だ。


 つまり今の出来事は決して偶然などではない。

 茶奈にとっては勇の無間攻撃さえも児戯と揶揄する程に()()のだから。




 無間攻撃がまさか通用しないとは。

 加えて心輝と瀬玲との協力攻撃さえも無為にするという。

 その力はもはや彼女自身であった時など比べ物にならない程に強靭無比。

 そして天士である勇さえももはや掌上の扱いである。


 故に茶奈―――圧倒的。


 果たして、勇達はこの天井知らずの力を前に打開出来るのだろうか。




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