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時き継幻想フララジカ 第三部 『真界編』  作者: ひなうさ
第三十二節 「熱き地の再会 真実は今ここに 目覚めよ創世」
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~晒されし隠れ里の唄~

 隠れ里へと向かう勇達一向は、ようやくラムナムナーン自然公園へと到達した。

 そこで彼等を待ち受けていたのは……タイ政府が用意した簡易的な関所と、彼等が切り開いた道。

 どうやら発見直後から誰かが来る事を見越して、予め道を切り拓いていた様だ。

 とはいえ……道は草を押し潰しただけの舗装もされていない、背の高い草が無数に立ち上る草原地帯。

 彼等の乗る車がオフロード車でなければすぐにでもハマって動けなくなりそうな程に不安定な道のりだ。


 時々見える木の看板を便りに、草原の中に造られた即席の道を走る。

 これらは全て、タイ政府から貰っていた情報通りの道筋。

 彼等も隠れ里を発見して以降、こうして順路を造っては彼等と接触しようと試みる為に()()()の様だ。


 そう、タイ政府は隠れ里を()()()()が、まだ()()()()()()()()のだ。


 それはどういうことか。

 簡単な事だ……隠れ里が結界に隠れているのである。


 隠れ里は基本的に結界と呼ばれる保護膜に覆われ、人を寄せ付けない。

 気付かず通ろうものなら、命力によって構成された見えない壁が通る者を気付かせないまま押し退けて弾くといった仕組みだ。

 その為、普通の人間ではそこに何があるかどうかなど気付かないまま通り過ぎてしまう。

 勇達の様な命力に詳しい者でなければ、見つけるのは不可能に近い。

 現代の人間が見つけられるのは、遥か上空(人工衛星)から結界の死角を探し当てる事が出来るからだ。

 つまり……場所はわかっても、辿り着けないという訳である。 


 検証画像に寄れば、ここは既に隠れ里が見えてもおかしくない場所。


 後部架台では既に剣聖が気配を周囲に送り、結界の所在を探る姿が。

 勇達も周囲を見渡し、隠れ里らしい痕跡が無いかどうかを調べていた。

 凹凸のある視界の悪い平原の中で……ゆっくりと車両を進めながら。




 そんな時……勇が何かに気付き、ピクリと反応を示した。




「待てシン……止めてくれ」


 途端、徐行していた車が停まり……勇達が車外へと躍り出る。

 剣聖も彼等が降りた事で何かを察し、その身を車上で起こした。


「どうした、何かあったのかぁ?」


 車から「ドスン」と飛び降りた剣聖が振り向くと、そこには遥か先を向く勇の姿が。

 まるで何かを見つけたと言わんばかりに……先に在る丘へ向けて一心に見つめていた。


「ありましたよ、ほら」


 あっさりとした態度で勇が指を差し、丘の方へと皆の視線を誘う。

 だが彼等の視界に映るのは……草がゆらゆらと揺れるだけの何も無い草原だけだった。


「何がどうあるんだよ……」

「は? ほら、丘の上に()()()だろ……」


 頑なにそう言い張るが、茶奈達が目を凝らしてみても景色は変わらないまま。


「見えませんけど……」

「えぇ……おかしいな?」


 途端に顎へ手を添え、悩む姿を見せる勇。


 どうやら勇には何かが見えている様子。

 謎の力を持つ勇の事だ……彼にしかわからない何かがあるのかもしれない。


「もしかして皆見えてないのか……? 俺だけなのか……なら……」


 すると勇は何を思ったのか、指を差した丘へと向けて一人歩み始めた。


 生い茂る草を払い除けながら進む勇を前に、茶奈達も見失わないよう少し離れながら追従する。

 勇と同様に草木を踏みならし、道を作り込みながら。

 少しでも道を見失えば、途端に車すらも見失ってしまいそうな程に草が生い茂っているからだ。

 もちろん勇も見失わない様に視線を向けながらである。 




 だがそんな時……彼女達の前で驚くべき事が起きた。




 突如、勇がまるで透明になっていく様に……「フワッ」と消えたのである。


「ああっ!? 勇さんが消えたッ!?」


「ほぉ……アイツなりに何かが見えてたってぇ事か。 ったく、アイツぁ相変わらず面白れぇなぁ!」


 驚きを見せる茶奈達の後ろで、剣聖が手を腰に当てて大笑いを上げる。

 どうやら勇の存在の異質さに剣聖も何か思う所がある様だ。


 恐らく剣聖も、内心ではデュゼローと同じ様に勇の存在に疑問を持っているのだろう。

 命力を持たない、本来有り得るはずも無い存在……それが目の前に居るという事実。

 常識を超えた勇という存在は剣聖の好奇心をこれまでに無い程刺激している様だ。


「よしお前等、とっとと行くぞぉ」


 驚きの余り足を止めていた茶奈達を押し退け、剣聖が怖気付く事無く前へと躍り出る。

 そしてその歩を止める事も無く、太い右腕がゆらりと動き―――


ピュピュンッ!!


 太く堅そうな腕にも拘らずの目にも止まらぬ素早い手刀で……一瞬にして結界の膜を斬り裂いたのだった。


「すっご……一瞬とか」


「さすが最強を名乗るだけの事はあります……不意とはいえ、腕の動きが見えませんでした……」


 剣聖の手腕を前に、イシュライトですら一目置く。


 繊細かつ加減が必要とされる結界の断裂。

 二年間の魔特隊時代に経験した事がある茶奈達だからこそわかる。

 それを一瞬で行う事の難しさが。


 何せ、イシュライト以上の繊細な命力操作能力を誇る瀬玲ですら驚く程なのだから。


 剣聖が止まる事無く結界内へ入っていく傍らで、腕を組んで悩む彼女達の姿がそこにあった。




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