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時き継幻想フララジカ 第三部 『真界編』  作者: ひなうさ
第三十一節 「幾空を抜けて 渇き地の悪意 青の星の先へ」
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~輪転飛曲 〝狙撃〟~

 戦風巻き起こる砂上の地は、未だ留まる所に無い。

 勇達が、瀬玲達が、各々の地で戦いを繰り広げている。


 マヴォ達も……例外では無かった。




 同時刻。

 東部施設へと向けて飛ぶのは、銀色に輝く一機の小型航空機。

 それを操縦するマヴォを筆頭に、翼部中央に鎮座するのはディック、その背後にはナターシャ。

 ディックの様な狙撃兵が乗る事を考慮しての設計なのだろう、追加パーツ部の補助席には底部へ繋がる縦穴が設けられており、そこから底部への銃器搭載が可能となっている。

 そこにハイブリットライフルを接続すれば、砲手によって機械式に操作出来るといった仕組みだ。

 上部に付けても地上への攻撃がし辛く、マヴォへの誤 射(フレンドリファイア)にもなりかねないからだろう。

  

 遠目に見え始めた敵施設を前に、彼等の緊張を呼び込む。


「もうすぐ戦闘開始だ、ぬかるなよ?」


「ああ、わかってるさぁ……こっちからはよぉく見えるとも」


 狙撃手は()が命だ。

 ライフル接続部にはしっかりと双眼鏡が備えられ、画像を通してディックが見られる様になっている。

 そこからはマヴォが見える以上に……地上の様子がハッキリと映りこんでいた。


 見えるのは当然……救世同盟兵の集団。


 どうやら勇達が攻め込む場所三か所共に、【救世同盟】が陣を張っていた様だ。

 もしかしたらそれ以外にも。

 だが魔剣ミサイル程の巨大な物体を隠す事が出来るのは大型施設のみ。

 発射までのプロセスを管理する程の設備や電力が必要になるからだ。

 こうも考えてみれば……莉那の絞り込んだ場所にアルディが居る可能性は非常に高いのも納得出来る。


 そんな折、ディックの視界に妙な異変が映りこむ。

 途端、ディックはマヴォへ向けて大声を張り上げた。




「躱せマヴォ!! 地対空ミサイルだ!!」




バオウッ!!




 その声と同時にマヴォが機体を大きく傾けて降下させる。

 その時彼の目に留まったのは……煙を吐きながら接近する何か。


 それは人が発射出来る程の、小型地対空ミサイル。


 熱源感知し、一直線に向かい、空を飛ぶ相手を撃ち落す武器である。

 遥か上空を飛ぶ航空機を堕とすといった実績もある程の……無慈悲な兵器だ。


「揺れるぞッ!! しっかり掴まっていろッ!!」


 マヴォは機体を更に傾けさせ、一気に地表目掛けて急降下させていく。

 ミサイルもそれに追従するかの様に追ってきており、それが見えるナターシャ達に焦りを呼び込んだ。

 襲い来るミサイルは彼等にとっての頭上から容赦なく襲い掛かる。


 そして直撃しそうになった瞬間……マヴォが大きく踏み込んだ。




 突如、機体が大きく回転し……ミサイルの外縁を回り込む様に躱したのだった。




「うおおっい!? 今見えちまったあ!! 弾頭が見えちまったあ!!」


 ほんの目の前の出来事だったのだ、焦りと驚きが溢れてもおかしくない。

 着弾は免れたが、目の前で起きた事にディックも慌てずには居られなかった様だ。

 ナターシャに至ってはもはや無言で固まっていた。


「すまんな!! だがそうも言ってられん!! 来るぞ!!」


 降下を続ける彼等が見上げ見えるのは、第二、第三のミサイル。

 容赦の無い迎撃行動が彼等をそう簡単には逃さない。


 だがそんな時……彼女が動いた。




「埒が明かないからボクが行くッ!! マヴォは前進してッ!!」




 その一言と同時にナターシャが機体から飛び出したのだ。


 間髪入れず掴んだ魔剣から突風を噴き出し……ナターシャが高速で空を舞う。

 その時身纏うのは……紅の輝き。


 輝きの秘密、それは腰に見纏うロングスカートに集約されていた。


 その装備こそ彼女の新しい力……魔剣【浮導(ふどう)オゥレーペ】。

 単体航空能力の向上を目的とした、空間制御性能を持つ魔剣である。

 茶奈もまたこの装備を持ち、【翼燐エフタリオン】による機動航行の手助けを行っている。

 補助装備でしかない事から重要性は薄いが……今のナターシャにとって、これ以上の助けは無い。


 自分の意思だけで全ての動きをコントロールする事が可能になる、超直感型とも言える性能を誇っているのだから。

 

 機体の下降速度を利用し、一瞬にしてトップスピードへと到達した彼女は……一直線に襲い来る弾頭目掛けて飛び込んでいった。

 弾頭も彼女の体温を誤検知し、狙いを彼女へと変えて襲い掛かる。


 その様はまるで人間誘導物(デコイ)


 彼女が意図しての事では無かったが、結果的に望む形に。

 これみよがしに、襲い来る弾頭へと向けて加速した。


 そして二つの弾頭が彼女の視覚に映り込んだ時―――






 二発の弾頭は一閃の名の下に……一瞬にして真っ二つに斬り裂かれたのだった。






 余りの一瞬の出来事に、弾頭の先端にある着弾感知機能も反応する事無く……空中分解していく。

 それ程までに……鋭く、かつスマートな一閃。


 不安定な空中でありながらそれを実現するナターシャもまた、皆に見劣りしない強者なのである。




 その間にマヴォは機体を水平に移行させ、航行を続行する。

 更に追撃が襲い来るが……来るとわかっていれば、対処は簡単だった。


「ならね、俺もやるしかないでしょ?」


 それはナターシャへの対抗意識か、それとも自分の腕に自信が有るからか。

 ディックが双眼鏡に目を充て、狙撃用のハンドルを手に……狙いを定める。

 狙うは、続き襲い来る弾頭。


 ディックは迷う事無く、その引き金を引いた。


ドォーンッ!!


 凄まじい反動が機体に響く。

 それ程の威力のライフルだという事だ。




 だが……銃弾は僅かに弾頭を逸れ、地表の何処かへ消え去った。




「やったのか!? やってないのか!?」

「黙ってなさいな!! 気が散るからッ!!」


 初物とは大概そういうものだ。

 試射していなければ照準と使用者の意識は重ならない。

 だからこそ、こうやって冷静に一弾目を撃つ。


 それは本命である二発目の為に。




ドォーンッ!!




 再びの衝撃が機体に掛かる。

 しかしその瞬間……別の衝撃が僅かに機体に響き渡った。

 ディックの覗き込む双眼鏡に見えるのは爆発。




 そう、彼はものの見事に弾頭を撃ち抜いたのだ。




 その間も更に狙撃が行われ、弾頭を打ち抜いていく。


 何せ自分に向けて直線を描いて飛んでくるのだ、これほど簡単な的は無いだろう。

 とはいえ、乗る機体も揺れていて、狙撃環境としては最悪だ。

 そんな状況下でも当てられるという事が、ディックの狙撃能力の高さを証明する何よりもの証拠である。


「一気に施設まで乗り込むぞ!!」


「あいよ!! 迎撃は任せな!!」


 飛び出したナターシャはそのまま地上へ。

 航行を続けるマヴォ達は前方に見える施設へ。


 二手に分かれた第三部隊は、自分達の目的を果たすべく……全速力で空を突き抜けるのだった。




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