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時き継幻想フララジカ 第三部 『真界編』  作者: ひなうさ
第三十一節 「幾空を抜けて 渇き地の悪意 青の星の先へ」
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~急襲転曲 〝迎撃〟~

 戦いとは全てが自分達の思惑通りに運ぶとは限らないものだ。

 だからこそ、二重、三重の作戦を整え、万事に備えるのである。


 勇達も、アルディ達も……迫り来る相手の動きに向け、思考を巡らせる。

 如何に相手の虚を突く事が出来るか、そのために。


 勇達の突貫力とアルディ達の策略。

 二つの力がぶつかり合い、均衡を崩す。

 その兆候は……既に見え始めていた。






「本艦十一時の方向に六つの機影を確認、まっすぐこちらに向かって来ています!!」


 レーダーを確認していた兵士が声を張り上げる。


 そこは管制室……莉那と龍が戻った時には既に戦闘中の緊張に包まれていた。

 室内では情報をやりとりする笠本や操縦する獅堂だけでなく、管制を行う人員が多数配置している。

 いずれも戦闘に馴れた手練れの兵士達だ。


 アルクトゥーンにも命力レーダーが備えられ、現代のレーダーと同じ役割を果たしている。

 艦周辺の敵の動きの情報を集め、管制室にリアルタイムで伝える事が出来る機器だ。

 機体を中心として頭部を0時に見立てた画像が上部モニターに映し出され、その北北西に光る点が六つ映りこんでいた。


「この速度は……戦闘機と思われます!!」


「戦闘機……となるとリビア軍か、あるいは【救世同盟】の……!!」


 戦闘機など、生半可な団体が所有出来る代物ではない。

 維持に恐ろしいまでの費用が掛かり、かつ搭乗者も限られるからだ。

 だからこそその二択しか候補が上がらない。


 そして状況が状況だからこそ……莉那は即座に声を上げた。


「アルクトゥーンは即座に転身、同時に茶奈さんへ迎撃行動に移るよう指示願います!」


 当然リビア政府にも上空通過の通達は済んでいる。

 それでもなおこちらに向かってくるという事はつまり、敵であるという事。

 そう確信した莉那は迷う事無く指示を出したのである。


 勇達第一部隊はもう目標地点近く、かつ戦闘機の進路上。

 恐らくその方面から発進(テイクオフ)したのだろう。


 それは同時に、アルディ達救世同盟がそこに居るという暗示に他ならない。


 第一部隊には勇が居る。

 彼ならば必ずやり遂げてくれるだろう。

 莉那達は彼等の対応に期待を寄せ、アルクトゥーンを旋回させたのだった。






◇◇◇






 一方、勇達第一部隊は既に目標地点である施設を捉えていた。


 乾燥した空気が陽炎を生んで地表をぼやけさせているが、空から見下ろせばその影響も薄い。

 また、強化した肉体が育んだ視力は普通の人間よりも断然に高いと言える。

 目標地点を見定めた彼等は迷う事無く突き進み、行動開始に向けて備え始めていた。




 そんな時、突如彼等の耳に備えたインカムに通信が飛び込む。




『茶奈さん、そちらから戦闘機が六機接近しています!! アルクトゥーンに攻撃が及ばぬよう迎撃願います!!』


「わかりました!! 勇さん、心輝さん、ここからは自力で移動願います!!」


 途端、「バキンッ」という音が鳴り響き、カーゴが茶奈の魔剣から切り離される。

 たちまち勇達を乗せたカーゴは空へと放り投げられたかのように自由落下を始めた。


 しかし勇達は既に覚悟済み。

 慌てる事無く同時にカーゴを蹴り出し、単独降下を始めていた。

 それは空島の時と同じ様な状況……手馴れたものだ。

 

 地上に待つのは当然、救世同盟兵。

 勇と心輝を迎え撃つかの様に多種多様な武器で応戦を繰り広げる。

 銃器だけでは無く、ロケット砲や迫撃砲……攻撃手段は強力で豊富だ。

 勇達はそれに恐れる事無く、急降下していった。


 間も無く、二人が地表へ降り立つ。

 攻撃を繰り返す敵兵に構う事無く、二人は一気に飛び出しては目標地点の施設へ向けて駆け出していた。

 遠目で見ていた施設も近づけば大きい。

 勇達は二手に分かれ、突っ込んでいく。


 そんな彼等の上空で……一人の人影を六つの機影が雲を引きながら追いかけ回す様子が繰り広げられていた。


 それに気付いた勇が走りながらも空を見上げ、その顔を強張らせる。


「シン、茶奈の援護に向かった方がいいかもしれない!」


 相手は戦闘機……しかも恐らく魔兵装を積んだ最新技術の塊だろう。

 例え茶奈であっても一人では荷が重いかもしれない。

 そう感じた勇がインカムに向けて声を張り上げた。


 だが……帰って来たのは心輝の予想だにしない答えだった。


『その必要はねぇ!! 俺が行ったらむしろ邪魔になっちまう!!』


「えっ!?」


 それは二年間、勇よりも長く彼女の傍に居た者の答え。

 彼女の力を良く知っているからこそ……心輝は高らかに咆える。




『茶奈はあの程度じゃ止まらねぇよ……空中戦において、あの子に勝てる奴は居ねぇ!!』




 心輝の声に耳を傾け、その眼を見開かせる。

 勇の心配など必要無いと言わんばかりの応えが彼の驚きを呼んでいた。


 しかし彼は直後に知る事になる。


 空で繰り広げられる空中戦(ドッグファイト)……その行く末と、彼女の真の実力を。











 カーゴを切り離し、単体航行へと切り替えた直後。

 茶奈の視界に六つの機影が飛び込んで来た。


 それは新品と思える程に整備の行き届いた最新鋭の戦闘機。


 機種は三機種と纏まりは無い。

 だがいずれも先進国の軍隊が正式採用した実績のある機体ばかりだ。

 ヨーロッパ、アメリカ、ロシア……各地の軍が現役で使用している、本来ここに在るべき物ではない装備である。


 それが揃って茶奈へと向けて襲い掛からんと接近していた。


 そう、戦闘機はアルクトゥーンを狙っていたのではない。

 茶奈を狙っていたのである。


 途端、戦闘機群は三機づつに分かれて散開し、大きく旋回を始める。

 そしてまるで茶奈を覆い囲む様に散り散りになると……間も無く、その一機が突撃を始めた。

 間髪入れず、接近する戦闘機から機銃が撃ち放たれる。

 その速射性は凄まじく、弾丸の軌跡がまるで全てが一本の線に繋がっている様に見える程。

 「ヴァア"ア"ア"ア"ア"!!!」と激しい音を掻き鳴らし、茶奈へと向けて襲い掛かった。


 茶奈が杖を傾け旋回して間一髪躱すが……それはただの陽動に過ぎない。


 後に散開した戦闘機が、茶奈の背後に迫っていたのである。


「くっ!!」


 それに気付いた茶奈が、すぐさま力を篭めて爆風を掻き鳴らす。

 同時に高速で飛び出し、戦闘機達から逃げる様に加速したのだった。


 それでもなお、戦闘機達は陣形を整え茶奈を追う。


 彼等の翼に抱える装備が太陽の光を受けて妖しく輝く。

 目の前に飛ぶ一人の「魔女」へ向けて……その照準を定めようとしていた……。




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