~公開恥曲 〝審問〟~
皆様こんにちは。
私、【双界連合グランディーヴァ】に同行中のリポーター、千野 由香と申します。
この度、私がグランディーヴァの旗艦アルクトゥーンへと搭乗する事になった理由と致しましては、皆様へ逐一彼等の状況を公平に伝え、知ってもらうという目的があるからです。
もちろんこれはグランディーヴァ公認の活動であり、彼等の全てを余す事無く伝える事を許可されております。
戦う事だけがグランディーヴァの目的ではありません。
彼等にも生活があり、様々な出来事の中で生きているのです。
早速ですが……皆様にお送りしたい映像がございます。
是非ともその映像から、彼等の本質が如何に普通の人間と変わらないか……感じて頂ければと思います。
ナレーションは僭越ながら私が担当させて頂いております。
それでは、是非ともご覧ください。
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≪激録!! 千野リポーターは見た。 グランディーヴァ内情編≫
ここはアルクトゥーン艦内底部にある多目的フロアと呼ばれる場所。
その一角に、大きな会議室が存在しています。
先日、グランディーヴァ設立を発表したのもこの部屋で、片隅を見れば……見た事のある演説台が見えますね。
ではこの会議室で一体何が起きようとしているのか……。
ご覧ください。
会議室壁際中央、立派な机を前に座るのは……魔特隊の頃から有名な園部心輝氏です。
彼の左には元魔特隊二番隊隊長のマヴォ氏と、右にはあの藤咲勇氏が座っております。
その近く、少し離れた所に座るのは……これまたグランディーヴァ隊員であるナターシャさん。
実は彼女、魔特隊隊員の経歴の持ち主。
二番隊副隊長の肩書も持つ、れっきとした戦闘隊員ですが……まだ現役高校生だそうです。
しかしどこか気怠そうに机に項垂れていますね、何か気に入らない事でもあるのでしょうか。
会議室外縁には傍聴人と思しき方々が席に座っておりますね。
同じく隊員である田中茶奈さんや相沢瀬玲さんも見られます。
しかしほとんどは同乗している民間人ですね……しかし皆どこか神妙そうな顔付き。
園部氏らが前にするのは会議室中央……そこに座るのは、一人の少年。
彼の名は……乾竜星君、現在十七歳。
この艦に搭乗するまでは普通の高校生だった少年です。
どこか肩身が狭そうに座っていますね……何があったというのでしょうか。
おや、早速園部氏が動きを見せました。
「これより……乾竜星がナターシャに相応しい男かを判断する審問を執り行うッ!!」
<カンカーンッ!!>
あっ!!
まるでタイミングを図ったかの様に、裁判の槌の音の様な鳴音が鳴り響きました!!
どうやらあそこに歩いているキッピーちゃんと呼ばれる小人が玩具で机を叩いた音の様ですね……。
どうやらこの現場で行われるのは……あの乾君がナターシャさんと付き合う事を認めてもらう為の話し合いだったようです。
しかし園部氏やマヴォ氏の表情はどこか険しく……これはどう見ても裁判の様にしか見えません。
対して藤咲氏はと言えば……苦笑、苦笑を浮かべています。
何が可笑しいのでしょうか。
「さて、乾竜星の罪状だが……純情なナターシャをかどわかし、その心を掴み取ったと聞いている……!!」
「異議だらけだヨ!!」
早速異議を申し立てたのはナターシャさん。
どうやらご立腹の様子……この場そのものが不服で仕方の無い様ですね。
「ナターシャは黙ってろっ!!」
ですが園部氏も負けていられません。
ナターシャさんは押し負け、とうとう頬杖を突いてしまいました。
「ナターシャの父親として言わせてもらう……乾竜星、君にはまだナターシャを守るという気概を感じられない!! 君はまだ子供過ぎると俺は感じているのだッ!!」
なんという事でしょう……。
どうやらナターシャさんの父親はあの園部心輝当人なのだそうです。
今入った情報によりますと……ナターシャさんは元々孤児で、二年前に園部氏の養子になったそうです。
これは驚きです。
園部氏は現在二十二歳ほどのはずです。
ナターシャさんとは五、六歳しか離れていません……。
そのいきさつまではわかりませんが……これによって話の筋は読めて参りました。
どうやら乾君は、ナターシャさんの父親である園部氏を始め、彼女の世話をしてきた方々に交際を正式に認めてもらおうとした様です。
その結果、この様な審問という形になってしまったという訳ですね。
……どうしてこうなってしまったのでしょうか、不可解にも程があります。
しかし、乾君はと言えば……何も言えず俯いたまま。
これが園部氏らに認めてもらえない由縁なのでしょう。
「確かに俺も人の事をとやかく言える様な恋愛経験はしてねぇ。 交際をすっ飛ばしてレンネィと結婚したのは事実だ」
「「マジかよおッ!?」」
おや、その事を知らない方が傍聴人の中にも居た様です。
二人ほど……彼等は園部氏の友人としてこの艦に同乗する事になった方々ですね。
「だがな、恋愛っつうのは心でやるもんだ。 ただ好きだからってんじゃあ、遊びと何にも変わらねぇ」
言っている事は深く感じます。
これが既婚者の強さというものなのでしょうか。
「乾……お前はナターシャの事がどれくらい好きなんだ、おぉん!?」
ですがその様子はまるでヤ〇ザです。
脅しの様な一言に、乾君は反論出来ず脅え固まったまま。
当然でしょう……目の前に居るのは力も心も人並み外れたグランディーヴァ隊員園部心輝氏なのですから。
おっと、ここで初めてマヴォ氏が動きました。
園部氏の挙動に待ったが入った様です。
「落ち着けシン……それでは乾の語る余地が無いだろう」
さすが元魔特隊二番隊隊長マヴォ氏。
彼の経歴はもはや言うまでもありませんが……共存街の治安維持に一役買っていたのは有名です。
人柄も良い事から、ファンも多いとされるマヴォ氏……やはり横暴には黙っていられない模様。
「それでどうなんだ乾……ナターシャをどれだけ愛しているんだ?」
「えっ……愛!?」
ちょっと待ってください、これは恋愛相談ですよね?
恋『愛』ですけど、そういう重い話では無いですよね?
「そうだ。 海よりも深くなのか、空よりも広大になのか、それともナターシャの虹色とも言える心の色の全てをなのか……」
これは結婚を前提とした話の審問なのでしょうか。
彼等は当然、まだ未成年です、結婚は出来るはずもありません。
将来的には出来る様になりますが、お二人にはまだ早いのではないでしょうか。
「どうなんだ……答えろ乾……答えなければ……俺はお前をどうにかしてしまうかもしれん……!!」
マヴォ氏も早すぎます。
結論を導くのが早すぎます。
LOVE or DEAD を突きつけるにはまだ相手が若すぎます!!
この二人を止められるのは……もはや彼しかいません。
「愛かぁ……はぁ……どうなんだろうなぁ……」
藤咲氏に至っては自分の世界に入っています。
ダメです、この人全く何の役にも立っていません。
果たして、乾君はこのままどうなってしまうのでしょうか。
衝撃の結末は、CMの後!!
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