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待ち構える罠

 出発して半日近くたったがギンたちを案内するポロは意外なことにさくさくと森を進んでいた。

 胡散臭い男だがそれなりの装備にそれなりの実力を持ち、『灰狼』という冒険ギルドに所属するれっきとした冒険者なのだ。

 もっと灰狼がまともなギルドかといわれればそうではない。

 その実態はエイムサハールでも治安の悪い地区を牛耳るごろつき。真面目に狩りをしたとしても主に獲物となるのは王国法で保護されている希少なモンスター、そう彼等のやっていることは密猟である。

 とはいえ、希少な物ほど欲しくなるのが人の欲、禁止されればなお欲しくなるのが人の業である。

 おかげで灰狼はマニアから大金を得て、マニアは希少な素材を得て、そして辺境伯や衛兵は少し長めのまばたきをすればなぜかポケットにお金が入っている、そんな幸せな関係が築けていた。


 しかしまあ、おかしな話ではあるが楽して稼ごうと密猟をしているはずだが、希少なモンスターを見つけるには普通より森を熟知していなくてはならない。

 そんなわけでポロは森をさくさく進めているのである。



 …神竜山脈越えようなんざ、なに考えてんだ??


 ポロは後ろを歩くギンたちの事を思い返す。

 騎士の案内役と聞いていたが騎士はマルフィリアという小娘一人、もう一人は魔法使いだった。

 さすがに長距離の移動とあってマルフィリアはフルプレートのような重装ではなくサーコートにマントという出立でおそらく音や服の膨らみからチェインメイルや緩衝材のようなものも着込んではいないだろう。


 まあ、胸のほうの膨らみもまだまだだったが…


 それでもその顔は極上の上玉だ。ロリコン紳士には、いや、そうでなくとも十分に大枚をはたく顧客がいそうだ。

 モンスターの密猟だけでなく、灰狼は冒険者を売りさばいたりもしている。合法的な奴隷商売ではなく、魔の森で狩りをしている冒険者を襲い、非合法なオークションを開いて金持ちに売っているのだ。

 借金や犯罪などの因果で奴隷になった者ではなく不条理に理不尽になんの理由もなく自由を奪った相手を手込めにしたいとか、合法的な奴隷としてはなかなか出てこない若く健康で容姿の整った者が欲しいとか、鍛え上げられた戦士をいたぶるのがいいとか、顧客のニーズは様々だが灰狼にとっては大切な資金源のひとつだ。


 そんな事を考えながらポロは今度はもう一人の魔法使いの男の事を思い返す。

 ギンと名乗る男はいっちょ前にハルバート何て装備してはいるが格好はローブといういかにも魔法使いのものだ。

 魔法使いらしく長髪で顔立ちも綺麗な優男、あと10年若ければ男色の紳士や全裸の少年に首輪を着けて飼うのが趣味の淑女が激しく競り合い恐ろしい値がついていたことだろう。


「どうかしたか?」


 ポロは気がつけば後ろを振り返っていたようで、そんな不躾なポロの視線にギンが声をかける。


「いえいえ、何でもねぇですよ。ちゃんとついて来てるかなんかを…へぇへぇ……」


 ペコペコしながらポロは前に向き直る。


 あぶねぇあぶねぇ… あのガキは惜しいが今回はそういった仕事じゃねぇ。


 依頼人の辺境伯は証人になりそうな者、全員が亡き者になることを望んでいる。エイムサハールで仕事をしている以上、辺境伯に逆らうことは得策とは言えない。


 しっかし、体力のない子供と魔法使いが山脈越えようなんて…ばっかじゃねぇの??


 しかし今のところまだ疲れた様子のない二人。ポロの想像では汗だくでバテていて欲しかったのだが… もうすぐオークの巣に着こうかというのにこれは誤算である。


 でもまぁどうせ二人しかいないんだ。オークの群れには勝てっこないぜ。


 そうこうしている内にポロは誰にも気付かれずオークの巣に接近を果たす。


「ぷぎぃやぁぁぁぁぁぁ!!!!」


 オークたちがけたたましい雄叫びをあげる。

 ポロが秘かに投げたナイフが子オークを刺し、群れが激昂状態になっていた。

 そしてそんな突然の混乱にギンたちが気を取られている隙に、ポロは一人安全な木の影へと姿を隠すのだった。







 一方、パロの案内で魔の森を進むフィリオたち。


「また休憩なのか…ちっとも進んでおらぬではないか! 全く、平民はサボってばかりで役にたたないな!」


 何度目かの休憩にジャンミールがぼやき声をあげるのが聞こえた。


「そう言うものではない、ジャンミール。彼らは馬にも乗っていないし、荷物を背負ってもらっている。」


「ははっこれはフィリオ様、ずいぶんと甘い事をおっしゃいますね。それが彼らの仕事であり平民が騎乗できないなど当然の事でしょう? まったく…」


 …。エイムサハールまではしつこくゴマすりにせいを出してきていたというのに、ぞさんな態度になったものだ。きっと辺境伯の財力を見てあっさり鞍替えを考えているのだろう。


 しかしジャンミールのぼやきではないが思っていたより移動が遅い。一応フィリオたち開拓団はそれなりに開けて歩きやすいルートを通ってはいる。だがそれは普段魔の森で狩りをする冒険者がよく使う移動のためのルートでしかなく、踏み固められて道の用になってはいるがここまで歩いてきた王国内にある整備された道とは大きく異なる。

 大きな石の転がるデコボコの足場は歩く者の体力を容赦なく奪い、時折崩れて足を取るほどだ。

 きっと先行しているギンたちとはすでにかなりの差がついてしまった。さすがに初日から追い付けないほどの差がつくのは想定外だ。


 ギンたちの方にもう少し戦力を割くべきだったか…?


 だがそれはできないことだった。

 フィリオにとってガルバスとエイスは自分の護衛として手放すことができない。自分の命が開拓の成否に関わり、その成否が開拓団皆の生命に関わるとなれば自分の命を軽視することができないのだ。


 ではジャンミールやモーガンを先発隊としてギンにつけるのは? これも得策とは思えなかった。

 ギンとアルバーには知らせていないが実は二人はフィリオが秘かに手配していた。

 魔境の開拓が決まった頃にはフィリオは父である国王にSランクの戦力を持つ騎士をすべて奪われていた。だから極秘裏にヴァルハラ・クランのギルドマスター、ロキールのもとを訪ねた。

 開拓団の出発間際、しかも父に気取られぬ用に十分な戦力のあるものをヴァルハラ・クランから脱退させた上で欲しいという、断られるどころか誇り高き戦士である彼等のプライドを傷つけたとして殺されてもおかしくない依頼だった。

 そうしてやって来たのがギンたちというわけだ。敵からすれば真っ先に始末しておきたいイレギュラーな存在だろう。そしていくらSランクの魔法使いでも複数人の騎士を相手にさせては分が悪い。マルフィリアが信頼出来るわけではないがタイマン状態にしておく必要があった。


 ではアルバーをギンにつけなかったのは何故か? いざというとき開拓団を守るためだ。

 先程も言ったがギンとアルバーを除くと開拓団にSランクの戦力がいない。幼い頃の教育係だったガルバスは騎士階級ではあるがもしフィリオが順当に王になっていたとき宰相や大臣を勤めてもらったであろう内政向きの人材。自ら近衛騎士に任命して期待をかけているエイスもまだ若く将来性はあれど今はまだAランクの騎士だ。


 最後にボーマン率いる鷹の目だが、彼らは有能ではあるが元はBランクの傭兵ギルドと戦力としては高くない。それもそのはずだ、彼らは恩赦で開拓団に入ったのだ。あまり強い戦力を父やその側近がよしとするはずがない。


「そいじゃみなさん。休憩もボチボチにして出発しやすか!」


 案内役のパロが声をあげた。

 正直、このパロという冒険者も信用出来ない。冒険ギルドの依頼斡旋所にはエイスに行ってもらったがエイムサハールは辺境伯の手の平の中だ。どんな小細工をしているのかわかったものではない。


「待ってください!」


 皆がいそいそと準備をする中、ボーマンが声をあげる。


「どうした?」


「斥候に出していた部下からの報告です。この先に不自然な集団がいる、と。」

あーあーあー

サブタイトル考えるのが… 難しい

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