案内役
「それじゃ案内をさせていただきやす、ポロといいやす。ダンナ方お願げぇしやす。」
未開の神竜山脈に行くので案内役など必要ないかと思っていたがエイスはこちらにも用意してくれた。まあ、モンスターの情報などギンたちはほとんど知らないのでありがたくつれていくことにしよう。
「ギンだ。」
「マルフィリアですぅ。」
ポロというどこか胡散臭い冒険者に挨拶する。
相変わらす眠そうなマルフィリアだが、戦闘を考慮してか見易い用に前髪を結い上げて意外と可愛らしい顔を出していた。
…マルフィリアは魔法使い、いや魔法剣士か?
普段から髪を切らず戦闘のためにわざわざ髪を結い上げたところに魔法使いの可能性を感じたが、彼女が身に付けているレイピアと鞘に仕舞われたどこか違和感のあるナイフである。
魔法剣士とは多くはないが珍しくもない。
魔法を使うのに必要なのは術者の魔力と魔法の知識、そして『魔法晶』と呼ばれる宝石で、この魔法晶が出力装置の役割をしている。
多くの魔法使いはこの魔法晶を杖や腕輪などにつけている。しかしどうしても『いかにも』な魔法使いは戦場で狙われ易いため、剣等の武器の象嵌にしている一般戦士を装う者もいる。そしてそういった者はその武器も一応使えるよう訓練しており、魔法剣士と呼ばれる。
ちなみにギンもハルバートに魔法晶を埋め込んだ魔法剣士だ。ただ、一般戦士を装って安全を買っているというより、あくまで魔力が尽きても戦える用にするためだ。そのため服装はいかにもな魔法使いでわりとちぐはぐである。
「そういえばポロは神竜山脈は登ったことがあるのか?」
「えっ? やだなぁダンナ。神竜山脈なんざ登ったことがあるわけ…」
「そうか、まあそうだよな。」
魔の森で狩りをする冒険者というので案外少しくらい挑んだことはあるのかと思ってみたのだが…
「…ってダンナ方は神竜山脈を登ろうとお考えで?」
「ああ、出来れば越えようと思っている。」
「越えっ!? い、いやぁ~ダンナ方運がいい! 実はね、あっしは秘密の道を知ってやして越えたことがあるんでさぁ。」
その声は見事なまでの手の平クルー。いかにも怪しく嘘臭い。
…? っああ。案内役をクビになるんじゃないかと考えたのか?
「別に嘘はつかなくてもいいぞ。」
「ととっとんでもねぇ! あっしはヘソの緒を切られてから嘘なんざついたこたぁ一度もねぇでさぁ。ささっダンナ方、早速行きやすよ。」
とてつもなく胡散臭いがともかく二人はポロの案内で魔の森を進むのだった。
時間は少し遡る。
「…なるほど、アニキは開拓団を案内してフィリオ様を罠に誘い込むんすね。で、あっしは何をしたらいいんすか?」
エイムサハールでも治安の悪い一角にある酒場でポロは兄貴分のパロから今回の計画について聞いていた。
今回の計画とは魔境の開拓にやって来たフィリオ一団を亡き者にする、というものだ。
「お前には先発隊を案内して始末してもらう。」
「先発隊の始末!? 無理無理無理でさぁ!フィリオ様の先発隊となりゃ騎士でしょ? あっしじゃ逆立ちしたって敵いやせんよ!」
騎士は戦争で武功をたてた奴やそういった家の生まれで物心ついた頃から日々鍛練を繰り返している対人戦のスペシャリストだ。
ポロとて冒険者としてはそこそこの実力はあり、新人冒険者をいじめたりと対人戦の経験もあるが騎士と戦うのはいくらなんでも相手が悪すぎる。
「安心しろ。本隊の方には一般人がいるからな、『安全な道を行く』とか言ってなるだけ遠ざけておいてやる。だからお前は適当にオークの巣にでも案内してやりゃいいのさ。」
「オークの巣?」
「ああ。確かにやつらは対人戦じゃ敵いっこねぇ。だが、対モンスター戦となりゃただの素人さ。巣にぶちこんでやりゃ呆気なく始末されるだろうよ。」
「さすがアニキ!」
「おうよ。じゃ、うまくやれよ。」
そんな謀は露知らず、ポロに案内されるギンたちはオークの巣へ、パロに案内されるフィリオたち開拓団は冒険者たちが待ち構える罠へと進んで行くのだった。
ざまぁ、難しい…
なんというか個人的に敵って大好きなんですよね。幼少期から戦隊ヒーロー物の敵の幹部に一人いる忠義に篤い武人キャラとかすごい好きでした。(ヒーローより)
だからなんかこう…うまく「ざまぁ!」ってスカッと出来るか…難しい
クズキャラにすればいいんですけど、クズキャラはクズキャラで好きなんですよね。古いですけど烈火の炎の木蓮とか、すごい好きです。なんかこう…いっそ開き直ってあひゃあひゃさせたくなっちゃう。
でもがんばりやす。