フィリオ
…いったい、どうすれば……
そう考えずにはいられなかった。
帝国との戦争はあまりに長く帝国との戦争の歴史が王国の歴史とも言えた。
だからこそ、帝国との戦争を終わらせることが王族として王太子として、自分のなすべきことだと思った。
しかし宮廷は皆、あまりに長い戦争の為に帝国を滅ぼすことが戦争を終わらせることと錯覚していた。
和平を結ぶことはあまりに困難であった。
味方の中には一切聞く耳を持とうとせず、自分は王太子であるにも関わらずこちらからの呼び出しに応じない者も数多にいた。だからフィリオは大臣や将軍たちの元を足しげく通いつめ、夜通しの説得を何度となく行った。
運よく時節が和平に向いているこの時を逃すまいと寝る間を惜しんだ。
自分には格別の才覚があったわけではない。ただ逃せない時節があっただけだ。
その頃新たに帝位についた帝国の皇帝は自分と同じ脅威が目についていた。それは王国、帝国に次ぐ第三国、『教国』の存在だ。
『魔導』の発明により戦争は激化した。『魔導具』さえあればたいした訓練をせずとも簡単に兵士を増産出来るのだ。
そのため王国からも帝国からも教国へと逃れる人民が増えた。教国が飽和に達すれば、相手を滅ぼす前に教国の横槍が入って収集のつかない泥沼となる。
そして泥沼へと導きかねない『魔導』だが、帝国より先に増産体制を作れていたことで戦況を多少王国有利にしていた。その多少により多くを望まないことで和平を成立させた。
流れが変わったのはその後だ。フィリオに戦争へ参加した貴族の報償問題のごたつきに押し付けている隙に、父が王妃であった母を離宮へと追いやり、フィリオと婚姻を結ぶはずであった帝国の姫を娶ってしまったのだ。
それでもフィリオは王族であろうとした。王になれなくともいずれ王位に就くであろう弟を支える善き臣下であろうとした。
帝国との関係改善の為に商人たちを保護し、戦争ではなく交易という新たな交流を活発化させた。
それでも父は自らの権力に固執し、猜疑心に囚われ、フィリオを支持する者を閑職に追いやり、フィリオ自身もこうして僻地に追いやられることになった。
いったい、この国はこれからどうなってしまうのだろうか……
王族としては染み込んだ習慣からか、自らの命さえ狙われかねない状況にあっても王国の未来を案じずにはいられないのだった。