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辺境伯家

ちょっと直しました

 豪華な調度品に囲まれたライツリッヒ辺境伯邸で新たに加えられたコレクション。


「くそっ!!」


 その黒く輝く鱗に辺境伯は苦々しく罵声を浴びせた。


 最初の1枚こそ1,500万の値をつけたドラゴンの鱗。その値になったのはマルフィリアの動きをきっかけに区切りがついたことが大きい。多くの買い手は急なオークションということで他者が支払いのための現金化が出来ておらず、2枚目以降は少し値が落ちるのではと踏んで降りたのだ。

 しかし実際はそんなことはなく、辺境伯が落札したこの鱗など、倍の3,000万近い値になった。


「っ~~!!」


 振りかざした拳だが振り下ろすあてもなく、辺境伯はわなわなと震えた。


「ち、父上! 落ち着いてください!」

「そうだぞ、落ち着かれよ父上。」


 そんな辺境伯に声が2つ。少し慌てた声をあげた長男のアーンボルトと状況を理解しきれていたない能天気な声をあげた次男のトルファンだ。声はあげていないが娘のマキナもおり、辺境伯の3人の子供たちが勢揃いしていた。

 真面目な跡取りアーンボルト、冒険者の真似事に夢中な放蕩息子トルファン、見目麗しく目に入れても痛くないほど溺愛しているマキナ。これからの大切な話のために辺境伯は子供たちを集めていた。


「確かにやつらは大金を手にしたのかもしれないがやつらが買い物をすることができるのはここ、エイムサハールだけではないか?いくらでも巻き上げることができるだろう。」


「いえ、そうではないわちい兄様。」


「ん?」


 的はずれなことを言うトルファンにマキナが口をはさんだ。


「彼らが買っていたのは大量の塩と金属類、あとは何種類もの作物の種… ここから推察出来るのは彼らは既にある程度の自給自足の体制を整えており当面は買い物の必要がないことよ。」


「ん? ならばなぜオークションなどしたのだ? 金が必要ないなら無駄なだけではないのか?なにか他に目的があったとでも言うのか??」


 マルフィリアたちが買った物だけならやって来た当初に売ったモンスターの皮などの素材代だけで賄えた。確かにトルファンの言う通り買い物が目的であったのなら他の都市と比べて格段に高いエイムサハールの滞在費を払ってまでオークションをする理由などなかったはずだ。


「チェックをしつつルークやビショップを狙う。チェックをしつつ味方の駒の道を守る。チェックをしつつ敵が置きたいマスを睨む。 優れた一手とは複数の意味を持つものよ、これが目的とははっきりとは言いがたいわ。」


「はっはっはっ!マキナの言い様は小難しくてよくわからんな。」


 トルファンは豪快に笑い飛ばす。


「…はぁ……まったくちい兄様は… 彼らの目的はお金を得ることよ。でも使うためじゃないわ。

 ある程度の自給自足が出来ているのなら現状彼らは村と呼んでいい規模になっていると思うの。でもこれが街に発展していくにはより多くの民衆と市場を巡るお金が必要になってくるわ。

 彼らはドラゴンの鱗のオークショで大金を得たという移民を集めるための噂と、オークションで得た大金という市場に回すお金が目的だったと思うわ。」


 エイムサハールに生まれ冒険者に憧れを持ったトルファンのように、エイムサハールに生まれたマキナは商人、経済活動に興味を持っていた。


「うむ、わからん!」


 しかしマキナの説明にトルファンは自信満々にそう答えた。


「…はぁ…… だい兄様はどうお考えで?」


 トルファンにあきれたため息をつき、マキナはアーンボルトに訊ねる。


「…私ですか? 私はやはり、『それ』が最大の目的だと思います。」


 アーンボルトが指差す『それ』は3人の前に置かれ、今3人が辺境伯に集められた理由でもある『それ』だ。

 『それ』は5枚のドラゴンの鱗、そしてフィリオから王宮に宛てた活動報告の書状だ。オークションの後、観衆の目の前でフィリオからという体でマルフィリアから辺境伯へ託されたものだった。


「あら?王宮への胡麻すりでしょ?別に届ければいいじゃない?」

「む?王宮への胡麻すりだろ?別に奪えばいいだろ?」


 マキナとトルファン、意見が割れた。


「…どちらもそういうわけにはいかないですね。」


 アーンボルトは言う。


「届ければフィリオの開拓を失敗させることの失敗の罰の意味を含めて、辺境でなくなったライツリッヒ領は辺境伯からただの伯爵へと落とされるでしょう。そうなれば辺境ということであった防衛費の支援、税の免除が奪われます。

 奪ったとしてもオークションの噂は早晩にでも王宮へも伝わります。そうなれば今度は王家の者から命令されたのにきちんと届けなかった罰という名目でフィリオの開拓を失敗させることの失敗の罰を受けるはめになるでしょう。」


 つまりどちらを選んでも駄目な二者択一だ。


「…アーンボルトはわかっておったようだな。」


 長らく兄妹の会話に耳を傾けるだけだった辺境伯がようやく口を開いた。


「…では王宮への使者はアーンボルトに任せる。先祖代々続く我らが名誉のため、くれぐれも(・・・・・)善きに計らえ!!」


 それはつまり何のアドバイスもないが結果を出せと言う無茶な命令だ。


「…かしこまりました。」


 しかし、辺境伯後継者としていずれ自分の物となる物のため、アーンボルトは恭しく頷くのだった。

なんと言うか『あの時こんなこともしてたんだぜ』は後だしじゃんけんみたいで好きではないのですが、辺境伯に『それ』を託すシーンを前回入れるのはバランス悪くなる、かといって1話使うほどじゃない。というわけで「まあそんな話挟んでないしセーフかな」とやってみました‼️

『それ』ってなんだ?と思ったら後だしされた!アウトだろ!って意見があれば話の前半にオークションの終わりのシーンでも挟んで見ようかと思います。


…いい感じの文章になれば……(短すぎてシーン作る意味もなく、余計な文章足したらもっさりなったんや……)

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