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再びエイムサハールへ

ダメでした

「おーい、いるかー?」


 またチェスでもしようかとギンとマルフィリアの元を訪ねたボーマンだが、2人は旅支度をしていた。


「っと… そうか、今日出発だったか。」


「おう。」


 ギンは素っ気なく答えたが行き先は神竜山脈を越えた先のエイムサハール。往復で半月から20日を予定している長旅だ。

 モンスターや獣の皮や角、牙などの素材を売り、塩や釘などの金属類を買ってくる。それがこの旅の目的だ。


 もちろんストレイクーガ辺境伯は買い叩こうとするだろうが、一応秘策というか目玉商品も用意してある。


「っと、そうだ。嬢ちゃんちょっといいか?」


「なんですか?」


 ボーマンはふと思い付いてマルフィリアに声をかける。


「なに、ちょっとしたまじない、というか奇策を教えとこうと思ってな…」


 ゴニョゴニョゴニョ……




 そんなこんなで日が中天に昇るより少し早く出発の準備が整った。

 荷馬が5にそれぞれ馬の扱いに慣れた男が1人、周囲の警戒のために鷹の目から3人、あとはギンとマルフィリアだ。


「じゃ、行ってくる。」


「行ってきますです。」


 フィリオたち村人に見送られ、ギンたちもそう手を振り出発したのだった。






 1週間後…


「フィリオの開拓団の者たちが戻って来ただと!!」


 執務室にいた辺境伯は執事の報告に驚きの声をあげた。


「開拓が失敗して逃げ帰ってきた、ということか…?」


 頼む、そうであってくれ…っ。


 だが辺境伯の祈りもむなしく執事は小さく首を横に振り、


「…狩り取ったモンスターの素材を売りにきたとのことです。」


「くそがぁぁぁああぁぁぁ!!!」


 辺境伯は立ち上がると先程まで座っていた椅子を怒りに任せて蹴り飛ばした。


「だっ、旦那様っ落ち着いてください。やつらを門で足止めしている間に既にすべての商会に連絡を飛ばし、やつらの持ち込むものは安く買い叩くこと、やつらが買おうとするものは値をつり上げることを指示してあります。」


「当たり前だぁぁ!!」


 当然の処置をしただけなのにさも得意気に報告する執事に怒りが収まらず、辺境伯は手元にあった書類の束を投げつける。


 欲をいえば「買うな売るな」と言いたいが、まだ春がこず冒険者たちもあまり狩りをしていない時期。在庫の少なくなっている商会にそんなことを強いようものなら彼らの反発からうまく機能しないだろう。


 とはいえ、最低限のことはできた。この時期に貯蓄を作れず金にならない場所となれば新たな移民を確保することは困難。そうとなれば時間さえかければ衰弱死させることは容易だ。


「ふぅうう……ふぅううぅ…」


 辺境伯は息を大きく吐き、乱れた呼吸を、怒る感情を落ち着けようとする。


「あの… 旦那様……」


「…なんだ?」


 地に伏す執事に辺境伯は冷たい視線を向けた。


「やつらですが、オークションへの売り手参加を出しております。…なんでもドラゴンの鱗を売りたいだとか……」




 その夜、辺境伯の屋敷では急遽晩餐会が開かれた。

 参加者は大商会のトップ、金と暇を持て余した貴族の奥方、大貴族に雇われた買い付け人などなど。

 辺境伯にとっては金蔓でもある一方、辺境伯の力では頭ごなしに押さえ付けられない者もいる。


「さて、急な晩餐会ですがいったいなんのようなのでしょうか?」


「さあ? 私にはわかりかねますね。」


「きっとあの件でしょう?」


「ああ、あの件ですね。本当でしょうか?」


「さあ? とはいえフィリオ様は嘘のつけない御方ですし…」


「そうでなくともあの山脈の向こう側、未知の物には間違いないでしょう。」


「そうでしょうそうでしょう。いやぁ今からオークションが楽しみですね。」


「ええ、楽しみですね。」


 彼らの楽しみにしている物はもちろんドラゴンの鱗。

 クスクスと参加者の笑い声が聞こえる。


 既に噂は広まっていたか…


 ただでさえ地獄耳な連中、開拓団の者たちが噂を広めていれば仕方がないことだが、


 ギリッと辺境伯は奥歯を噛む。


「いやぁ、皆々様方。今回は急な晩餐会というのにお集まりいただきありがとうございます。」


 その内心はおくびにも出さないよう、辺境伯は笑顔を作り挨拶した。


「辺境伯もお元気そうで。」


 クスクス


 参加者の中から小さな笑い声が聞こえた。

 彼らにとっては辺境伯のピンチも関係のない話、いやもし失脚劇にでもなろうものなら楽しい見世物なのだろう。


 くそっ!!


 笑顔の裏でははらわたが煮えくりかえりそうだ。


 とはいえ癇癪を露にするわけにはいかない。


「さて、皆様。既にご存知とは思いますが本日フィリオ様の開拓団の者がここ、エイムサハールへと戻りました。

 そして彼らは3日後のオークションにてドラゴンの鱗を出品するとのことです。」


 ドラゴンの鱗。


 辺境伯が明確に口に出したことで参加者はどよっとざわめく。


「お静かに皆様。」


 辺境伯は両手を広げ皆を静める。


「このドラゴンの鱗ですが、大変な価格の高騰。

 そしてそれにともない、他のモンスターの素材の価格の崩壊と冒険者の生活の打撃が予想されます。

 そこで!!!」


 辺境伯は大きな声をあげてそこで区切り、少し勿体ぶった。


「どうでしょう、皆様。

 この場で落札者とその値を決めてしまいませんか?」


 にやりと笑う辺境伯。

 参加者たちも皆、その言葉にニヤニヤ笑う。


 オークションの前に大規模な談合が行われていたのだった。

あれですね。反省点はオリジナリティの不足でしょうか?


……文章力は成長できる気がしますが…独創性はどうやって産み出すのでしょうか?

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