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ドラゴンの襲来

 その報告を聞かされた直後、フィリオは執務を行う天幕から飛び出して慌ただしく指示を飛ばしていた。


「戦えない者は村の中央へ! 戦える者は武器を手に前線へ! 婦人方はお湯を沸かし負傷者の救護の準備を! マルフィリアは救護班の指揮をお願いします。」


「はいです!!」

「待て! 相手がドラゴンとなれば中途半端な戦力はかえって邪魔だ!」


「わかりました。では村の男たちは武器は必要ありません。前線より少しさがり、負傷者を後方へと運んでください。後方支援の指揮は…ガルバス! あなたに任せます!」


「はっ!!」


 戦争は好きではないと聞いていたがなかなかどうした。混乱を収めるよく通る声、突然の事態というのにセオリー通りの的確な指示。さすがは王族と言わざるおえない。


 ギンもフィリオに付いて前線へと急ぐ。


「ボーマン!」


 程なく、既に簡易的なバリケードを築いた前線で鷹の目を展開しているボーマンを見つけフィリオは声をかける。


「これはフィリオ様…」


「挨拶は後です。ボーマン、ドラゴンの到着まであとどのくらいありますか?」


「…四半刻もないかと。」


「わかりました。では私も前線に留まります。しかし戦闘の指示はボーマン、あなたに一任します。」


「そっ、それは危険です! お下がりください。」


「いえ、それはできません。初陣の王族など前線で激を飛ばし士気をあげるくらいしか使い道がないでしょう。」


 前線に残るというフィリオをエイスが必死に止めようとしているが頑として聞こうとしない。

 なかなか胆も座っているようだ。


 っと、既にアルバーはバリケードの外で待機しているじゃないか。


「まっガチでヤバそうになったらボーさんの指示に従ってさっさと逃げてくれよ。」


 ギンはフィリオにそう言うとアルバーの元へと駆け寄る。


「よっ、アル。」


「ん? おお、ギンも来たか。あのちんまいのは?」


「マルフィリアか? あいつは後ろで救護班の指揮だ。」


「そうか…」


 アルバーはそう一区切りつける。

 ギンは心なしかアルバーが少し緊張しているように感じた。


 今さら戦いを前に緊張するたまでもあるまいし、こいつ、まさか…


「ギン! 頼む!最初に少しタイマンで戦わせてくれ!!」


 アルバーが両手を合わせてガバッと拝み倒してきた。


「…やっぱりか……」


「いいじゃんかよぉ… ギンはラーガシュヴィヴァールとタイマンしたんだろ? 俺だってドラゴンとタイマンしてぇよぉ……」


 アルバーは駄々をこね出す。


 まあ、ギンだってアルバーがタイマンで敵わない相手がいたらタイマンしたくなるし気持ちはわからんでもない。


「…はぁ、ダメージ受けるまでだぞ?」


「さっすがギン! 愛してるぜ!!」


「気持ち悪いからすり寄るな!!」


 大型犬にでもじゃれ着かれている気分だ。


「ドラゴンとタイマンだと!? ふざけているのか!??」


 そこへフィリオを前線から下げるのを断念したエイスがやって来た。


「ええ~、堅いこと言うなよ、エイスちゃん。」


「だっ、だから私は騎士なのだからそのような女扱いをするなといつも…」


 そういや最近は一緒に鍛練をしているんだっけ。


「あんたも前線で戦うのか?」


「当たり前だ! フィリオ様の御身を守るため、なんとしてもここで食い止めさせてもらう!!」


 なるほど、フィリオが下がってくれないなら全力で守ろうってわけか…


「だがそれならアルのタイマンにも意味があるな。」


「なに!?」


「未知の相手に突っ込んで訳もわからずやられましたじゃ足手まとい甚だしいからな。とりあえずアルがタイマンしている間、ドラゴンの攻撃パターンをよく見て覚えてくれ。」


「なっ!? …わかった。それでお前はその間に何をするのだ?」


「俺か? 初撃のための詠唱でもさせてもらう。」


 Sランクの2人と違いエイスはAランク。しぶしぶ了承した。

 と、


「敵影確認! まもなく接敵します!!」


 周囲に散開している鷹の目から声が上がる。


「タイマンは許すがヘマは許さねぇぞ?」


「わぁってるよ。」


 バキッバキバキ!!


 正面の木々が薙ぎ倒され、黒に輝く巨体が姿を現した。


「ぬ? 端とはいえ我が縄張りに勝手に巣を作ったかと思えば奇襲もせずに真っ向から迎え撃つ姿勢、なかなかどうやら楽しめそうな客人だな。」


 黒竜は器用に口端を歪ませてニヤリと笑う。


「黒きドラゴンよ! 私の名はフィリオ! フィリオ・ガルシア・シュテンバーグ!! この村の代表です!」


「ほぅ?」


 後ろからフィリオの声が聞こえ振り返るとバリケードから身を乗り出して叫んでいる姿が見えた。


「フィリオ様!危険です!御下がり下さい!!」


 たまらずエイスも声をあげるがフィリオはまるでそれが届いていないかのごとく黒竜に言葉を続ける。


「貴公の領土に勝手に拠点を築いたことは謝罪させていただく。だが我々もやむにやまれぬ事情でこの地に来た。今さら拠点を放棄することなど出来ない。

 手を取り合い、協力し、共に生きる道もあるはずだ。よって私は対話による解決を提案したい。まずは貴公の名を聞かせてはくれないだろうか?」


「…メルトノアールだ。しかし兵で取り囲んで対話を呼び掛けるとは… くっくっ、なかなか愛に溢れた態度だなぁ、フィリオとやら?」


 フィリオの必死な呼びかけも何処吹く風、黒竜はメルトノアールと名乗りはしたが皮肉混じりに笑った。


「不躾な態度であることは重々承知。だが私たちの後ろには戦えない者も大勢いる、そして私は代表として彼らの身を守る責務がある。これはそのための処置であり、脅しなどをするつもりはない。」


「…まあそんなことはどうでも良い。

 あいにく我は弱者と馴れ合うつもりはない! そして強者であるなら猫の額ほどのこんな土地、くれてやっても構わん!!

 さあ!力を示せ!! 欲しくば我から毟り取ってみせよ!!

 力と力で!魔法と魔法で!思う存分(語ら)い合おうぞ!!!」


 爪をたて、牙を剥き出し、メルトノアールが臨戦態勢をとった。


 途端、戦場に拡がる緊張と恐怖。

 フィリオの交渉は不発に終わり、もはや戦闘は避けられそうにない。


「はっはっはっ!! いいねいいねぇぇぇええ!!!」


 その空気を壊したのはアルバーの豪快な笑い声だった。


「鉄腕のアルバー!いざ推して参る!!!」


 名乗りと共にアルバーはバスターソードを振りかざして飛び掛かる。


「こい!!!」


 それを迎え撃つメルトノアール。


 こうして戦いの火蓋は切って落とされたのだった。

名前はいつも適当に決めてます。

特別な意味はないし、名前が思い付かないとそれだけですごい時間がかかる……

ネーミングセンスがほしい。

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