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夜話

遅くなってしまってすみませんでした。

個人的にすごくテンションの上がることがあっておかげで文章がおかしくなってしまって……

 夜もすっかり更けた頃、仮眠をとっていたマルフィリアがのそのそと起き出してきた。


「おやぁ? ポロさんはどこぞに行かれましたですか??」


「さぁ? 逃げたんじゃないか?」


 ギンはこともなさげに言う。

 敵前逃亡は重罪だが、それでも傭兵をやっていればよくある話なのでもはや慣れっこだ。


「そぉですが…そんなこととは露知らず一人長々と眠ってしまってすみませんでしたです。」


「気にするな。」


 ギンは素っ気なく言う。正直なところ久しぶりの戦闘で血が滾ったが戦闘は呆気なく終わってしまったため消化不良になってしまい、火照ってなかなか寝付けそうになかったのだ。


「ああ、そうだ。これを渡しておこう。」


 そういってギンがマルフィリアに魔石を手渡す。

 魔石はモンスターの体内で魔力が結晶化したものだ。昼間に殺したオークから回収したものをギンは暇だったのできれいにしておいたのだ。


「ありがとうございますです。…?? あれ?マルフィは魔法使いなことお話しましたですか?」


「いや、そんな気がしたから渡しただけだ。」


「おやおや、どうやらマルフィは嵌められてしまったですね。」


「別にそんなつもりはないさ。」


「それなら良かったですぅ。尊敬する三強の一人であるギンさんに失望されてしまったらと少し焦ったですよ。」


 そう言うマルフィリアだが、口調は相変わらずのマイペースだし顔は髪で隠れて見えないだしでどういう意図か計りかねる。


「……」


「…あのぉ? まだ眠られないのですか??」


「ん? ああ、眠気がこなくてな。」


「でしたらその、後学のために少しお話してくれませんですか?」



 そんなわけでマルフィリアと焚き火を囲んで話をする。マルフィリアが聞いてきたのは三強についてだった。

 三強とはSランク魔法使いの中でも頭ひとつ飛び抜けている三人の魔法使い『眠り姫』ことギン、帝国の『魔法軍師』、教国の『聖女』のことだ。どうしたらそうなれるのかと聞かれたが…正直困る。と、言うのも本来Sランク魔法使いは人間の限界に達しており、その数字上の実力に大差はないからだ。

 具体的には極大魔法を使えるようになる魔法攻撃力が上限とほぼ同じであるため、極大魔法の威力は個人による違いはほとんどない。そしてそんな極大魔法2、3発分というのが人間という器に入り得る最大の魔力であり、そんな最大魔力を全回復するのに2、3日の休息が必要となるのが人間の回復力の限界である。

 そんな人間の限界から頭ひとつ飛び抜けたつまるところ、人間から逸脱した存在が三強である。味方にいわせればそれは神の加護、敵からしたら悪魔の契約である逸脱だが、神にも悪魔にもあいにく知り合いのいないギンからしたら何が理由で逸脱したかなど知るよしもない。



「……そうなのですか…」


 ギンの言葉にマルフィリアはしゅんと小さくなる。


「役にたてなくてすまんな。」


「いえいえ、わかっていたことですから。」


 ? わかっていた?

 こういった逸脱は今では先天的なものという説が有力だが実際の原因はわかっていないはずだ。


「それはそうと、三強で最強と言われるギンさんから見て、他の2人はどちらが強かったですか?」


「誰に聞いたのか知らんが三強で最強は俺じゃないぞ?」


「…そうなのですか?」


「ああ、むしろ俺は三強では最弱だと思っている。」


 確かにギンは三強では唯一白兵戦能力がありタイマンであれば勝利は揺るがない。

 しかしギンが逸脱しているのが周囲から魔力を取り込み、本来2、3日かかる回復を数時間の仮眠でこなしてしまう『吸収』であるにたいし、『魔法軍師』は通常の10倍ほどもある魔力の『容量』、『聖女』は魔法の威力や範囲を倍以上に引き上げる『増幅』。

 彼らとの戦いの場がタイマンの力比べではなく戦争である以上、『聖女』の一撃から『魔法軍師』の連撃から、ギン1人では仲間を守りきれないのでギンは自分を最弱だと考えていた。


「では、最強はどちらですか?」


「単純に強いだけなら『聖女』だな。だが最強は誰かと聞かれたら間違いなく『魔法軍師』だ。」


 帝国の『魔法軍師』とは何度も戦場で相対したことがある。しかしギンは一度たりともまともに相手をしてもらったことも相手にできる状況にしてもらったこともなかった。

 そもそもSランク魔法使いの数は帝国より王国の方が多かった。それでも魔導具が発展するまで戦況を膠着させた戦争の上手さが『魔法軍師』にはある。


「そうですか。」


 素っ気なく言うマルフィリアだがその言葉には隠しきれない嬉しさのようなものが滲み出ていた。


「? …あんたひょっとして帝国の……」


 思えばマルフィリアはギンのことを尊敬すると言った。これは王国の騎士ならおかしなことだ。ギンのことを評価する者、それは帝国の者に多い。何故なら一度や二度なら負けた時に「卑劣な罠にかかりました。」と言い訳することもできる。だが何度もそんな言い訳をすれば自分は学習しない愚か者ですと言っているようなものだ。幸いギンが逸脱していたこともあり、「ギンが強かったから負けた」と言い訳しやすく、おかげでギンは帝国だと強者として評価されている。


「ぶぎぃぃ!!!」


 空気を読まないオークの鳴き声にギンの言葉は遮られた。


「どうやら楽しいお話もここまでみたいですね。」


 マルフィリアは剣を抜き立ち上がる。


「だな。」


 ギンもハルバートを手に立ち上がった。


「そういえば何を聞こうとしていたのですか?」


「ん? 終わったら聞くことにするよ。…あんたが生き残っていたらだがな!!」


「ええ、ではその時はちゃんと答えますですよ。生き残っていたらですが!!」


「ぶびぃぃぃいいい!!!」


 そして血沸き肉踊る、楽しい夜が始まった。

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