4話
「スイちゃんとスニちゃんです」
ちーちゃんの形をしたスライムは2体いた。
「ショートカットの子がスライム1号、略してスイちゃん。で、こっちがスライム2号、略してスニちゃんです。」
僕の奥さんは身長143cm、少し肉付きのいい体型で胸も大きすぎず小さすぎず、くりっとした目で笑顔が凄く可愛い。
そんなちーちゃんと、ちーちゃんにそっくりな少し青みがかった人型のスライムがいるわけで…ある意味ハーレムなんだが、素直に喜べない。
「ちーちゃん、僕の意識がない間の事を話してくれるかな?」
「えーとね…。」
魔法攻撃するぞって威嚇したら、僕を吐き出してスライムは怯えだした。
異世界ものの作品には仲間になったり、そもそもスライムに転生したり、良いタイプのスライムかもしれないから仲良くなれるんじゃないかと思ったちーちゃんはダメ元で話しかけたと。
スライムは喋る事は出来ないようだが、丸とバツである程度の意思疎通方法を教え、仲間になったという。
「ぽんくん、全然起きないけど息してるから大丈夫だろうって思って……。分裂したりコピースキルとかないのかなーって試してたの。」
てへっ、と可愛い顔で誤魔化そうとしているが、僕よりスライムに興味津々ですって言ってるじゃないか。
「でね、やっぱり増えるなら女の子いっぱいハーレムがいいかなって思ったからね。今私しか女いないから私でやってみた!」
「なぜ、裸なのかな?」
「裸は裸だけど、よく見て!局部は再現してないから問題ありません。胸も膨らみだけです!健全です、キリッ。合法です、キリッ。」
キリッ、て……。
さすがに、ちーちゃんの裸体を晒したままには出来ない。いくら局部がない健全だと言ってもだね……僕の理性の問題も発生してくるわけで、由々しき問題だからね。
「ちーちゃん、スライ……スイとスニに服を着せてはくれないかな?」
名前があるでしょと言わんばかりのオーラでこっちを見てきたので、即座に訂正。
「むー、健全なのに!」
文句を言いながらカバンを探り、なぜかスマホを出すちーちゃん。
そのままスマホを操作し、記念に1枚っと言いながら写真を撮り、その後でスイとスニに何かを見せた。
首を縦に振り頷くとぐにゃりとちーちゃんの形をしていたスイとスニが崩れた。ぐにゃりぐにゃりと2、3回動いて人型に戻る。
「おぉぉ、一発で出来たよ!じゃじゃーん。ワンピースを着せてみました。」
なるほど、どうやら、スマホに保存してある自分の写真を見せていたようだ。
裸体からワンピースを来たような形に変わった。
一先ず、これで安心だ。
ちーちゃんたちがちーちゃんを通じて教えてくれたが、今僕達のいる草原の周りはぐるっと森に囲まれていて森を抜ける以外に目的の城へは行けないという事だ。
さらに、森には魔女が住んでいて無事に抜けられるかは分からないとも。
魔女……スライムの次は魔女。
横を見れば案の定ちーちゃんの目が煌めいている。
何事もなく森を抜けるよりも、魔女に会いたいのだろう。
森に危害を及ぼす可能性がないであろう動物あたりはさておき、危害を及ぼす可能性が高い僕達が森に入るとなれば恐らくノータッチでいるはずがない。何らかの形で接触をしてくるだろう。
なら一層の事、最初から魔女目的で森に入るのはどうだろう。
ちーちゃんは魔女に会えるし、魔女に頼んで(会話で無理ならちーちゃんの物理力で)森を抜ける。
いい感じじゃないか!
ちーちゃんと相談をし、城は一旦置いといて森にいる魔女に会いに行くことにした。
ただ、魔女に会いに行くといっても、住処が分かっているわけではない。
どの方向に進むかを悩んでいると、ちーちゃんが何かに閃いたようで声を上げた。
「思いつきました!魔力探知と透視を組み合わせたら魔女さん見つけられるかもしれません!ただし、出来るかどうかはやってみないと分かんない。」
「魔力探知?」
「サーモグラフィみたいなので温度じゃなく魔力を感知する魔法?スキル?だよ!魔力が強く感知出来た方向を透視して人っぽければ魔女さんなのかなーって思ったんだけど。」
なるほど、確かにそれが出来るのであれば進む方向だけでも分かるかもしれない。
「ちーちゃんそれって、じゃあやってみてって言ったら出来るものなの?」
「え、分かんないよ。でも、ほら、いきなり異世界系はご都合主義でなんとかなるパターンもあるもん!そういうのいっぱい読んだよ!」
腰に手をやり、えっへんと偉そげにポーズをとっている。ここまでそのオタク知識で乗り越えてる手前ありえないとは言いきれないあたりが若干悲しい。
ここはちーちゃんの言うように「ご都合主義」にかけてみるか!
「ちーちゃん、そのご都合主義パターンだと信じて、お願いします。」
「うむ、我に任せよ!」
いや、ちーちゃんよ…。
左手で顔を覆い、左腕を後ろに突き出す厨二病ぽいポーズがかっこよさを全て台無しにしてるぞ