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3話

プルプルのあいつが出ます。



遠くに見えるいかにも外国の名城という感じの城を目的地として、移動しようと決めた僕達。

急に異世界に来たのにも関わらず、ちっとも不安がらずむしろ楽しそうにあれこれ想像を膨らますちーちゃんを先頭に歩き出した。


その時だった、僕の右足が背後からひやっとした何かに掴まれた。


「うわぁ!!?」


咄嗟に叫び声は出たが、得体の知れないものに掴まれているという恐怖も相まって体はピクリとも動かない。


「ぽんくん?」


歩き出していたちーちゃんが僕の声で振り返り、固まって驚きと恐怖でいっぱいの僕の方を見た途端表情が変わった。


「わぁ、やっぱりスライムさんはいるだね!ぽんくんスライムだよスライム!しかも超大っきい!」


目をキラキラさせ満面の笑みを浮かべ喜んでいる。


「あれ、すぐそこに見えてた泉がない……はっ、キレイな泉だと思ってたけど、大っきいスライムさんだったんだぁ!」


僕がこっちの世界を玄関から見た時に「透き通った泉」だと思ったのは泉じゃなくてスライムだったのか。なるほど、スライム……。

ちょっと待って、確かさっきスライムって確か獲物を丸呑みとかなんとか言ってなかった!?うちの奥さんなんか恐ろしい事言ってなかった!?


なんとか首を動かし恐る恐る後ろを見た僕を待っていたのは、巨大な水の塊。

あれ、これがスライム?


「ち、ちーちゃん。これってスライムなの?僕の知ってるスライムって、青くて肉まんみたいな形しててくりっくりの目があるやつなんだけど。」

「スライムはスライムでも私が思うに、これはちょっとえっちな感じの作品に出てくるタイプのスライムだと思うの!プルプルとした液体状で女の子をパクッと取り込んであんなことやこんなことしちゃうタイプ!最後はそのまま溶かされたり苗床パターンが多いよ。」


な、なえど……こ!?それは出来れば遠慮したいタイプです。

僕はれっきとした男です。

奥さんもいます。

それより、興奮気味に「えっち」とか「苗床」とか嫁は日頃どこからそんな情報を仕入れているんだろうか。少なくとも僕が頼まれて買ってきてる本にそんな怪しい本は……あぁ、そうかネット小説も読んでたな。


とかなんとか思ってたら、僕の右足を掴んでいた部分が動き出した。

ぐわっと世界が回転して、逆さ吊りにされたかと思ったら、一気に巨大なスライムの中に取り込まれた。

取り込むなら取り込むって言ってくれないと息が、息ができない。

平泳ぎだったりバタ足で脱出を試みたがプルプルとした気持ちいい感触に少し癒されるというくらいで必死の抵抗も無駄に終わる。


呼吸も出来ない状態で動いたから、酸欠状態で意識がだんだんと朦朧としてきた。

ちーちゃんを残して死にたくはないのだが、喋る事も出来ない。助けすら求められない……。

苦しいし、目の前が暗くなってきた。



「……くーん。」


なんか聞こえる。


「……ぉーんくーん。」


えっと、泉に食べられて。

じゃないスライムだ。

それから息ができなくて、どうなったんだ?

もしかして、僕は死んだのか!?


「ぽんくん!!!」

「あ、はい!」


反射的に返事をしてしまった。

目を開くと、いつも通り可愛い奥さんがいた。


「あれ、僕…。」


スライムに取り込まれて、もがいて、それからの記憶がない。


「ちーちゃん、僕、生きてるのかな?」

「当たり前です!ぽんくんはちゃんと生きてます!」


ペチペチと僕の頬を軽く叩いてくる。

確かに若干だが痛みがあるので、なんとか生き延びたみたいだ。


「ちーちゃん、スライムはどうなったんだ?」


僕が助かったということは、スライムは嫁により倒されたか何らかの事情により逃げたかだろう。


「ふっふーん、スライムさんはぽんくんの後ろにいますよ。」

「え…?」


またしても、背後。

出来れば振り向きたくない、もう足を掴まれたり逆さ吊りにされたり取り込まれたくない。


「スライムさんね、ぽんくんと遊びたかったんだって!だからね、食べようとか敵意があったわけじゃないみたいなの。」


遊びたかったと言われても、じゃあ仲良しこよしでとはいかない。

僕、死にかけたからね。

もう、トラウマだよ。

振り返ればやつが、プルプルした巨大な水の塊がいると分かって振り返るバカがいると思うか。。

ちーちゃんはああ言うが、振り返った途端に敵意むき出しでまたパクッとされたらどうする。

今度こそ死ぬかもしれない。

振り返らず、逃げるという手もある。

いや、しかしその場合ちーちゃんがパクッとされるかもしれない。そうなれば、ちーちゃんがスライムにあんなことやこんなことを…それはダメだ!


「ち…ちーちゃん、本当に敵意はないんだね?」

「大丈夫だよ!もし、スライムさんが襲ってきたら私が魔法で木っ端微塵にするか蒸発させるから安心して!」


可愛い顔して怖いことを…。


「ふぅ。」


ちーちゃんを信じよう。

現に僕はスライムから脱してるわけだ。


「ふぅ。大丈夫、ただのデカイ水の塊だ。」


深く呼吸をして、覚悟を決めた。

いきなりは怖いから、ゆっくりと振り返る。

僕の目にプルプルとした水の塊が……。

いや、水の塊じゃない。



ちーちゃんの形をしている。

しかも、裸で。





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