18話
「お客様がいらっしゃってるんですが、いつまで続きます?」
と、やや呆れた顔でミシェリアが呼びにくるまでちーちゃんとスイとスニと戯れていた。
ミシェリアのところに向かうと、腰のあたりまである濃い青の髪を綺麗に一纏めに結い、ローブを着た若い男性がいた。
「あ、おはようございます。あの今日からよろしくお願いします。」
パロフラウだ。凄く整った顔立ちで、日本にいたらモデルかアイドルか。そんなレベルのイケメンだった。
「やーん。パロくんたら超イケメンさんじゃない!!一見細身に見えるけど、しっかり筋肉もついてる。モテるわ、これはモテる。」
案の定、食いつくちーちゃん。頭から足の先までじっくり眺めては目の保養だなんだと言っている。
ぺたぺたとパロフラウの顔やら体を触って堪能しているちーちゃんを見ていると、スイとスニが やってきた。
「「じゃじゃーん、今日の朝ご飯は美味しいサンドイッチです!」」
「お、二人が作ったのか?」
美味しそうなサンドイッチだ。野菜たっぷりのヘルシー系からハムやハンバーグが挟まったボリューム系、おまけに何か果物とクリームのフルーツサンドまで。
「ふふふ、これから旅に出るとなると食事の問題が発生しますからね。二人にサンドイッチくらいは作れるように教えておきましたわ。」
さすが、出来る女の子ミシェリア。僕もちーちゃんも料理は出来るが、この先何があるか分からない。出来る人数は多いに越したことはない。
「朝から贅沢なサンドイッチ!スイもスニも凄い!ちーちゃん感激よ。」
スイとスニに抱きつき感激を体で表すちーちゃんにまんざらでもない二人、微笑ましい。
「じゃあ、頂こうかな。食べたら準備して出発だぞ。」
声をかけなければ延々と続きそうなので、一旦中断させて朝ご飯タイムにした。
二人の作ったサンドイッチは大変美味しく、朝から幸せ気分に浸り、旅に出る前の穏やかな時間を過ごした。
「さて、皆の者!準備はいいかな?ちーちゃんと愉快な仲間たちの旅の始まりだよ!」
旅に出るにあたって、僕とちーちゃんの服装では道中怪しまれる可能性が大いにある。最寄りの村まで僕はパロフラウの予備のローブを借り、ちーちゃんはミシェリアのワンピースのような服を一着貰い着ていく事になった。
少しだけ遠回りになるが、商業環境が整っているカディナル大陸の街に一旦行き、旅の準備を整えてケモミミの…獣人の村に行くルートに決まった。
ミシェリアに聞けば、その街に行く道中に遭遇する魔物を倒して体の一部を冒険者ギルドという所に持っていけば倒した魔物応じてお金が貰えるらしい。
ここでもちーちゃんは冒険者という言葉に食いついていた。
「冒険者ギルドにメンバー登録すると冒険者になれ、依頼を受けて報酬を貰う仕事もありますよ。」
という、ミシェリアの一言で私は最強の冒険者を目指す、なんて言い出した。獣人に会いたい、最強の冒険者を目指す、次から次にやりたい事を増やしていくバイタリティには驚きを隠せない。
異世界に来たというのに、何事もないかのように受け止め楽しむちーちゃんが少しだけ羨ましい。僕も異世界に来たという現実は受け止めたものの、やはりまだ不安もある。
そんな僕の不安を知ってか知らずかちーちゃんの大胆な行動や、言動は僕や周りを振り回すと同時に僕の励みになっている。
本人はただやりたいがままに動いているのかもしれないが。
「ここからカーティナルまで、規格外な魔物などは出ないはずですが気をつけてくださいね!あ、サンドイッチは持ちましたか?」
「ミシェちゃん色々とありがとう!本当はミシェちゃんともっと一緒にいたいけど、ケモミミの誘惑は振り切れなかったよ…。」
まるで心配性の母親のように、あれは持ったかこれは持ったか、これから向かう街「カーティナル」への行き方は覚えたかと気にかけてくれるミシェリア。
出会った当初はもう少し落ち着いた雰囲気だったのにちーちゃんの空気に飲まれたのか、少しキャラが変わった様に感じられる。
ミシェリアは魔女という立場上、一応この森の管理人となっているので同行は出来ないと残念そうに言われた。
ちーちゃんとスイ、スニとハグをして僕にもハグを求めてきたので向こうからなら触っても犯罪じゃないし浮気でもないよな、なんて考えながらハグをした。
「ちーさんの魔力は感情が高ぶると暴走する可能性があります。ちーさんの事ですから、よっぽどの事がない限り大丈夫だと思いますが注意してくださいね。あなたが危機に陥った場合は恐らく穏やかなちーさんでも冷静でいられないと思いますから。」
耳元でミシェリアが囁く。
「ああ、気をつけておくよ。」
名残り惜しそうにミシェリアと何度もハグをしていたちーちゃんに声をかけ出発する。
「ミシェちゃん本当にありがとう!元気でね!また会いに来るからね!!」
「ちーさん達こそ、気をつけて旅してくださいね。またお会い出来る事を願ってます!」
ミシェリアと別れ、僕達はカーティナルに向けて旅立った。