15話
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ナフィル大陸に向かうという目的を新たに作った僕達(僕達というより、主にちーちゃんの独断)だったが……。
僕達は今、空にいます。
「どうじゃ、人はここまで自由に空を飛べぬであろう?」
「うひょー!凄いよ、雲の上の飛んでるよ!」
テンションの高いちーちゃんを横目に、僕は地上に戻りたくて戻りたくて仕方ない。
どうして空にいるかというと…。
次の目的地はナフィル大陸と言ったちーちゃんであったが、魔王さんをチラッと見て一瞬で考えを変えた。
「やっぱりナフィル大陸は後!ケモっ子とドラゴンは外せない!!」
「け、ケモ??」
ケモっ子なんて言葉はこっちにはないのが当たり前で、ミシェリアが何だそれはという顔をしている。
困った事にちーちゃんは「人外」「亜人」「モンスター」「ケモ耳」などが大好きなのだ。
ケモっ子と言われる獣人や人魚、ドラゴンにオークやドワーフ、はたまたアンデット種、植物系なんでもござれ。
その中でもドラゴンと獣人が特に好きだ。
元の世界のちーちゃんの部屋にはドラゴンやネコミミなどのケモ耳系から二足歩行の獣って感じのフィギュアがゴロゴロしている。
実はこっそりスイとスニにネコミミ生やして喜んでたちーちゃんを見かけた…。
「ドラゴンならお友達がいるわよぉ。」
というルヴィさんの鶴の一声によりナフィル大陸そっちのけでドラゴンに会いに来たというわけである。
ドラゴンはミシェリアの家から魔王さんの城を通り越しヴァイデン大陸一の山岳地帯に住んでいるとの事で、魔王さんが城に帰る便に一緒させてもらった。
僕はヨーロッパの古城の様な魔王さんの城をゆっくりじっくり見たかったが、如何せん早くドラゴンに会いたいちーちゃんに勝てず、すぐに移動となった。
「うふふ、しばらく行ってないから私も一緒に行っちゃおうかしら。」
寂しがるイケおじのアルベールさんをなだめ、転移の魔法であっという間に移動。
「いきなり転移陣なんぞが現れたらびっくりするじゃろう。事前に連絡入れんかや。」
転移の魔法で景色が変わったと同時に声がはるか上からかかった。
声がした方を見上げてみると、漆黒のドラゴンが宙を舞っていた。
「ぽんくん、ドラゴンだよぉぉぉお!」
テンションが上がってきているちーちゃんの言う通りよく見る西洋タイプのドラゴンだ。
「急だったのよ、私とラウ二の仲じゃない。こちらは異世界からのお客様よぉ。」
「ほお、異世界とな。滅多にない機会じゃなあ。」
バサバサという音とぶわっと風を起こしながらラウ二と呼ばれたドラゴンが降りてくる。
僕達が移動してきたのはどうやら、いくつか連なっている山の一つで、クレーターのように凹んだ山頂のようだ。
降りてきたドラゴンは首が痛くなるほど見上げなければならない大きさだった。吸い込まれそうな漆黒の外皮に立派な翼、芸術作品を見ているようだ。
「えーと、紹介するわねぇ。ヴァイデンに住むドラゴンのボスをやってるラウ二よ。で、こっちが異世界からきた夫婦で雅臣くんと千景ちゃん、それからスライムのスイちゃんとスニちゃんよ。」
ルヴィさんと仲良しというくらいだから凄いドラゴンなんだろうと予想はしてたが、やっぱりそうだった。
「おっきいなぁ。綺麗な漆黒だし、爪は鉱石みたいなキラキラ。素敵!」
ドラゴン好きのちーちゃんはうっとりである。
「千景とやらは、わらわが怖くはないのかえ?」
「全く!出来ればその綺麗な漆黒の体を触らせていただきたい、一緒に空を飛んでみたい、という欲求で溢れてます。」
普通の人間なら恐れ戦くドラゴンに触りたいという欲求を隠しもせずぶつけるあたり我がちーちゃんながら流石である。
「くくく、面白いおなごよ。ええじゃろう、わらわの背に乗って空を飛んでみるかえ?」
「はいっ!!」
そんなこんなで冒頭の展開になったわけだ。地上に戻りたくて仕方ない僕そっちのけで、ちーちゃんとスイとスニは絶叫マシンを楽しむがごとくキャーキャー騒いでいる。
ちなみにルヴィさんは転移してきた場所にテーブルセットを構えて優雅にお茶を飲んでいる。僕もそこに残っていたかった。
ドラゴンの背とはいえ、ラウ二の魔法(ドラゴンも魔法が使えるとの事)によって落ちない仕様になっている。
だからといって一見何もない状態で背に乗っている様なものだから本当に落ちないのかビクビクしているのは内緒だ。
「どうじゃ、満足したかや?雅臣がぐったりしてきたようじゃから、そろそろ降りるぞ。」
心中お察しいただき感謝します。いや、本当にありがとうございます。助かりました。じゃないとこのまま延々と飛んでることになったでしょう。
ちーちゃんの残念そうな声もブーイングも今回は聞こえないふりで。
あぁ、ただいま地上。