11話
「こちらの言語は大陸によって違います。私がいま話しているのは魔族が使っている言語で、ヴァイデン語と呼ばれています。」
ミシェリアは魔族が使うヴァイデン語の他に人間が使う言語のうちカディナル大陸とシュナイツ大陸のものが少し喋れるという。
問題の僕達なんだが、ミシェリアが言うには立派にヴァイデン語を喋っている様に聞こえるという。僕とちーちゃんはもちろん日本語のつもりで話していた。
スイとスニにも僕が教えたから日本語でこっちの世界では通用しないかと思えば、ヴァイデン語にきちんと聞こえるという。
「やっぱり、異世界転移でおなじみのご都合主義発動だね!」
それぞれの大陸言語で書かれた本をいくつか見せてもらったが、全て何の問題もなく読めた。
「暗黒より生まれし破壊、赤く包む炎、こういう技名にすればかっこいいのにね!」
ちーちゃんは魔法について書かれた本を食い入るように読んでいる。
僕がちらっと見た感じ、闇攻撃、炎攻撃としか見えないのだが脳内変換してるようだ。
厨二病に侵されてるから仕方ない。
「柔和なる光」
ただの回復魔法もちーちゃんにかかれば、あっという間に厨二呪文になる。
と、言語はなんでもこい状態なのが分かった。
スイとスニに教えている言葉も問題ないという事だから引き続き教えていこう。
「それにしても、お二人は異世界から来たというだけであらゆる能力を持ってて羨ましいですわ。」
魔王とその側近の娘も相当凄いと思うが。
「晩ご飯の前にちーさんに見てもらった魔道具も似たようなものをご存知だったし、ずるいですわ。それにスマホでしたかしら?あれは興味深い代物ですわ!」
ああ、僕とスイ達が戻ってきた時の事か。
なにか話し声がしてると思ったんだよ。
「ミシェちゃんが持ってた魔道具面白かったよ。私の好きなマンガに出てくるステッキと一緒なんだもん。」
主人公の女の子がカードを集めていくというマンガに出てくるステッキと一緒の形をしていたという。しかも、後半のタイプだという。
後半のタイプをモチーフにするとはなかなか通なやつよの。などと、不敵な笑みを浮かべている。たまたま似たようなものってだけです。
「汝のあるべk「はい、ちーちゃんそれ以上は言っちゃだめ。色々引っかかるからねー。」
食事をしながら言語の話も一段落したので、今夜は早めに休むことにした。となれば、お風呂。
ちーちゃん曰く異世界にも色々あって、シャワーだけだったり、そもそもお風呂という文化がなかったりするらしい。
「ミシェちゃーん、お風呂ってある?」
「あ、お風呂ありますよ。すぐに準備してきますね。」
そう言うと、研究室の隣の扉を開け入っていった。
お風呂はあるのか。よかった、僕達はお風呂が好きで休みの日なんかは1時間以上入る時もあるほどだ。
十分ほど待っていると、ミシェリアが戻ってきた。
「お待たせしました。石鹸やタオルは用意しておきましたのでゆっくりどうぞ。」
「わーい、おっふろ!ぽんくん一緒に入る?」
……流石にね、一緒に入るというのは。ミシェリアは顔を真っ赤にして照れているし、スイ達はキャッキャしてる。
「ちーちゃん、先にどうぞ。」
「ちぇ。ぽんくんたら照れちゃって。いつもは一緒に入ってくれるのに!」
ブーブー文句を言うちーちゃんをお風呂に押し込む。確かに、一緒に入っていた。恥ずかしながら一緒入ってたとも。でも、こういう場では黙っとこう。人前で言っちゃだめだろう。
「ちーとおみ、いっしょ?」
ほら、スイ達が気になってるじゃないか。この状態でちーちゃんが帰ってくるまで耐えなくちゃいけないのか。
「ふふふ、スイちゃんスニちゃんお風呂を一緒だなんて仲良しさんですね。」
「「ねー。」」
ミシェリアの顔が明らかに、根掘り葉掘り聞かせてくれという表情になっている。スイとスニも味方につけ、万事休す。
一緒に暮らすにあたり、一緒に入った方が節約になるからと始めたものの、それ以降一人で入るとなぜだかしっくりこずに続いていた。別にいやらしいことをしているわけではなく、純粋にお風呂を楽しんでいるだけだ。
「ふふーん、節約とかなんとか言いつつも一緒に入るのが止められないのですね。仲良しさんでいい事じゃないですか。」
ニヤニヤという表現が正しいであろう顔でこちらに詰め寄ってくるミシェリア。
ちーちゃん、早く!早く出てきて!!
願いは虚しく、ちーちゃんはそれから三十分しっかりとお風呂に入った。