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10話



「ちーちゃん、ミシェリア。もう終わったかな。」


家の外にまで聞こえていたちーちゃんの声は聞こえず、静かになっている。

スイとスニが僕に続いて家に入ってくる。


「これは………、そこへ……で、………です。」


お茶を飲んでいたキッチンと繋がったダイニングのような部屋には誰もいないが、その奥の扉の方からぼそぼそと声が聞こえてきた。


「…………となります。それで、こちらが……です。」


何の話をしているのだろう。

コンコンと、とりあえずノックしてみる。


「はいはーい。」


ニコニコしながらちーちゃんが出てきた。


「ぽんくん、おかえり!もう、急にいなくなるんだから。どこに行ってたの?」


「ちーちゃん話し出すと止まらないから、スイ達と一緒に外にいたんだよ。」


ふむふむ、と言いながら頷くちーちゃんの後ろからミシェリアが出てくる。


「あら、もう日が暮れていたのですね!」


ちーちゃんとミシェリアがいた部屋は研究室のようなもので、陽の光が入らないような作りになっているて薬品や、貴重な研究材料があるとか。



ミシェリアが晩ご飯を作ってくれると言うので、ちーちゃんは手伝いのためキッチンへ。

僕はダイニングのような部屋のテーブルでスイ達と大人しく待機。

ミシェリアの家のキッチンは、火も水も魔法で好きなだけ使えるみたいだ。

聞けば、人間の家のキッチンは薪で火を起こしたり水も川や池など水源から汲んだり、井戸や雨水を桶に貯めるなどしているとの事だ。

昔の日本みたいだな。そういう点では魔法というのは、パッと水が溢れてきたり便利なものだ。


スイ達と小声で晩ご飯は何かな、そういえばスイ達はご飯食べなくても平気なのかとか話をしていると美味しそうな香りが漂ってきた。

コンソメスープのような香りと肉を焼いたような香りだ。

なんとも食欲をそそる。


「はーい、お待たせですよ。」


大きな鍋を抱えるミシェリアに、大きな皿に焼いた肉の塊を乗せて持ってくるちーちゃん。


「ちーさんにも手伝っていただき、いっぱい作りましたからね!」


鍋を置き、さらに籠に山盛りのパンとサラダを持ってくる。

それぞれのスープ皿にスープを取り分け、着席。


「肉とサラダは好きなだけ取って食べてくださいね。」


みんなが着席したのを見計らって、ちーちゃんが号令をかけた。


「それではみなさんご一緒に、いただきまーす。」

「「いただきまーす。」」

「「え!!??」」


スイとスニがいただきますを言った直後、ちーちゃんとミシェリアは驚いた顔で僕とスイ達を見てきた。

そう、その驚いた顔が見たかったんだよ。

その為にこっそりバレないように練習したんだから。

僕とスイ達はいたずらが成功した子供のように顔を見合わせた。


「凄い!スイもスニも喋ってる!きゃー、ちーちゃん感動!」


ご飯をそっちのけで騒ぐちーちゃんに、驚きすぎて固まったミシェリア。

まさか、スライムが喋るとは思ってなかったという所だろう。


「スイちゃんもスニちゃんも頑張ったんだね!偉いぞ。」


スイ達の頭を撫でるちーちゃん。

スイ達も嬉しそうに「ありがとう」と覚えたばかりの言葉で返していた。


「外で一緒に覚えたんだよな!盛り上がってるところ悪いんだけど、僕はお腹がペコペコなんだ。食べてもいいかな?」


感動しているところだが、昼から何も食べてないので腹ペコなのだ。


ミシェリアとちーちゃんが用意してくれたのは、こちらの野菜たっぷりのスープとこれまた新鮮な野菜で作られたサラダ、それから焼いた肉の塊はポクルという鹿のような動物の肉だそう。

ミシェリア特製の木の実を練りこんだパン。

どれも美味しそうだが、まずはスープから頂こう。

お、野菜の甘みがそのままいかされていてとても美味しい。味付けはシンプルなコンソメ風だ。

根菜やキャベツのような葉物、豆も入っているので具沢山で食べごたえが凄くある。


次に気になっていた肉だが、歯ごたえは少し固めだが噛むたびに旨みが出てくる。ベリー系の甘酸っぱいソースがまた合う。臭みなんかは全くない。これはいくらでも食べられそうだ。


こっちの世界の食べ物も美味しく食べられることが分かったし、スイ達は喋れる事も分かった。今日はなかなか有意義に過ごせたと思う。


そこで、僕はふと疑問に思った。スイ達は僕が教えた言葉を喋っているのだが、こっちの世界の言語じゃないので通じるのだろうか。

そもそも僕達も日本語を喋ってるつもりなのだが、問題なくミシェリアと会話できている。


ちーちゃんは異世界転移なんてご都合主義の塊でなんでも出来るんだよと言っていたが、これもその一つなのだろうか。




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