表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/27

1話

オタクな嫁が異世界で最強になる予定。

後々、戦闘シーンで残酷な描写が出るかもしれません。

獣耳っ娘や魔王も出すよ!

僕の奥さんの千影(ちかげ)、呼び名はちーちゃん。

ちーちゃんは所謂オタクというやつだ。

アニメやマンガ、ゲームと結構幅広い趣味を持っている。


あ、ひきこもってないし家事もしてくれる。よく僕の奥さんになってくれたものだ、と常々思っている。



僕とちーちゃんはどこにでもいる至って普通の夫婦……いや、ちーちゃんが世に言うオタクだという点を除けばだが。


書店員として働いている僕と事務員として小さな建設会社で働いているちーちゃん。

僕の働いている書店にちーちゃんが通っていた事がきっかけで今現在がある。



朝、家を出る前に必ずちーちゃんから声が掛かる。


「ぽんくーん、今週の週刊少年ステップ買ってきてほしいです。あと、これ今日の欲しい新刊リストです。お願いしまーす」

「オッケー。ちーちゃんはお醤油お願いね」


その日欲しい本が書かれたメモを受け取り、帰宅前に買ってくるシステムだ。


ぽんくんっていうのは、僕のあだ名だ。

ちょっと出ているお腹を軽く叩き、「ぽんぽこ鳴るからぽんくんね」と可愛い笑顔で言われてからずっとこの呼び名で呼ばれている。

ああ、もちろんちーちゃん以外からだったら間違っても許可しない。


「あ、そうだ!ぽんくんが昨日買ってきてくれたラノベ良かったよー!主人公の病んでる感じすごく好き!ヒロイン可愛いすぎて超悶えた!」


もの凄くキラキラした目で読んだ本の感想を興奮気味に語ってくるちーちゃん可愛くて、ついついリストにない本まで買ってきてしまう。惚れた弱みと言うやつか。


「でね、もう主人公の俺TUEEEEがね!とにかくカッコイイし、技名とかが厨二ぽくていいんだよ!!」

「そっか、ハズレじゃなくて良かったよ。帰ってきたらPOP用におすすめポイント教えてくれると助かるよ。あ、ちーちゃんそろそろ家出る時間だよ」


ちーちゃんの止まらない感想を聞きつつ玄関に向かいドアを開けた。




何かおかしい。いつもだったら玄関のドアを開けると、家賃6万のアパートの廊下があるはずだ。隣の肉屋のベランダも……。


間違っても、のどかな森は広がってなかったはずだ。透き通った泉も遠くの方に小さく見えるヒストリカルな城なんてものもあっちゃいけない。


「ぽんくん?遅刻しちゃうよ?」


後ろからちーちゃんが何か言ってるようだが、それどころではない。ひとまず、そっとドアを閉めてみた。



「ぽんくん?」

「あのさ、ちーちゃん。僕達ってアパートの2階に住んでるよね。玄関開けたらさ、コンクリートの廊下と隣の肉屋さんの家の2階にあるベランダが見えてたよね?」

「うん、そうだよ。なになに、ついに玄関開けたらそこは草原でしたな感じの異世界トリップとかしちゃった?」


僕は頭がパニックだというのに、ちーちゃんは最近流行りの異世界トリップなの!?とかワクワクしている。


いや、まあそんなラノベ展開が現実で起こるわけない。ちーちゃんの話を聞きすぎてちょっと幻覚が見えたに違いない。

昨夜見たちーちゃん今期イチオシのアニメの影響かな。



「ちーちゃん、ラノベやアニメじゃないんだから異世界トリップなんてないよ。遅刻しちゃうから出なくちゃね。」

「ぽんくんは夢がないなぁ。玄関開けたらとかマンホールに落ちるとか事故にあって異世界トリップしたり、ゲーム世界に入っちゃったり流行りですよ!私とぽんくんに起きたっておかしくないと思うの!」

「ほら、もう行くよ。」


異世界にはドラゴンがどうの魔法がどうこう言ってるちーちゃんを軽く流しつつ、深呼吸をする。


よし、と勢いよくドアを開ける。



「ぽんくーん、ねぇねぇ、ぽんくん!!ぽんくん大っきいから玄関から出られないよ」



あぁ、やっぱり夢や幻覚じゃないのか。再度開けた玄関の先には美しい緑の森、透き通ってキラキラ輝いている泉、明らかに日本にはないであろう洋風な城。


さっき見た景色と変わらなかった。

僕の日常はどこへいった!!!?


「ぽんくん?」


目の前の現実がなかなか受け入れられない僕は腰が抜けてしゃがみ込んでしまう。


「わっ、ぽんくん大丈夫?どうした……のぉぉぉぉぉお!!!?って、え?なにこれ!やっぱりいきなり異世界と繋がっちゃった感じ!!?」


僕と違って、驚きつつも喜んでる様に見えるちーちゃん。


「わぁ、これがラノベ定番となりつつある異世界ってやつ!本当に日本じゃないね。ぽんくん凄いよ」


はしゃぎながら僕の手を引っ張るちーちゃんの勢いに負け僕達は玄関から出た。

柔らかな草で覆われた地面を足の裏に感じた時、ぶわっと風が吹きとっさに目を瞑ってしまった。



目を開けたら、さっきまでそこにあった玄関が消えていた。どうやら僕達夫婦は、よく分からない世界から帰れないらしい。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ