表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
子猫転生  作者: ニャンコ先生
第ニャー部 下巻
56/57

怠惰な襲撃の一日後日談編 そのニャー

「にゃ……?」

「新会長?」

「生徒総会?」



 突然の成りゆきに、僕らを含めて生徒のみんなは戸惑っている。




 ま、まさかクーデターなのか……!?


 僕はニーオの話を思い出していた。


 この生徒会には変なルールがある。

 昨日の夜警説明会で入れ替わりを阻止あるいは成功させた者のみが、生徒会長になれるというものだ。


 僕とニャルミは知らず知らずのうちにそれを達成していた。

 そしてニャルミは昨日のヒーロー、いやヒロインだ。


 だけどいくらなんでも一年生に生徒会長ってのは……。

 それに現生徒会長の立場ってのも考えてあげようよ。



「そういえばにゃー、わたし生徒会長ってまだ見たことないにゃー」

「わたしもだにゃー! どんな人なんだろうにゃ」

「えっ、入学式で見たじゃない。知らないとは言わせないにゃー!」



 それは何度も聞かされた話だ。



 まあそんなことより今は……。


 いや待て、よく考えろ。


 何かが引っかかる。






 ニャリーン。




 その瞬間、何かが氷解したように感じた。






 そうか! ひらめいたぞ!



 わりととんでもない話だが、一つ仮説を立てられる。


 検証が不十分だから矛盾もありそうだが、その仮説どおりなら説明がつきそうだ。

 だけどその仮説の行き着く先には、あまり好ましい未来が待っている気がしない。



 僕を抱きかかえているニャルミは、突然はじまった生徒総会に集中している。

 どうやら、僕のひらめきには気がついていないようだ。


 だがそれもしょうがないだろう。

 ニャルミの夢は、ニャルカお姉ちゃんの跡をついで生徒会長になることだ。

 そして今、その生徒会長の選出というイベントが執り行われようとしている。


 もしかしたら、と期待をしているはずだ。


 僕を抱きかかえているニャルミの手が、じっとりと汗ばんでくる。

 僕はそれを避けて、ニャルミの肩によじのぼる。


 すまない、ニャルミ。






 ニャーフック副会長は、淡々と議事を進めている。



「では現生徒会長退任案に反対の方は、その場で挙手をお願いします。

 反対理由がある場合、発言していただいてもかまいません」



 あちこちでちらほらと手が挙がる。

 だがその数は圧倒的に少ない。


 新一年生の大半は、事態をよく理解できていないようだ。

 そのため賛成も反対もできず、態度を保留している。

 だが結果的に、それは賛成していると受け取られる。


 上級生もあまり関心がないようだ。

 まあそうだろうな。

 僕の推理が当たっているなら、それは多分どうでもいいことだ。



「数えるまでもありませんね。

 賛成多数により、解任案は議決されたとものとみなします」



「横暴にゃ!」

「生徒会長がかわいそうにゃ!」



 勇気のある誰かがそう叫んだ。


 それにニャーフック副会長が答える。



「申し訳ありません。

 わたしは副会長として、連日多大な負担をかけられています。

 だからこそ言わせてもらいます。

 わたしは、傀儡として都合のよい生徒会長がほしいのです」



 え?! 都合のよい傀儡?!

 そう言い切っちゃうの!?



「それが本音かにゃ!」

「生徒会を私物化するなんてひどいにゃ!」



「なんとでもおっしゃってくださって結構です」



 副会長は動じない。

 それゆえに、緊張が高まっていく。

 静まり返った会場に、誰かの叫び声が響く。



「何度でも言うにゃ! 生徒会長がかわいそうにゃ!」



 そんな中、存在感のある男が一人、それに対抗するように大声を張り上げた。



「聞いてくれ!

 生徒会長ファンクラブ代表として言わせてもらう。

 この件については、つい先刻ニャーフック氏より相談を受け、受諾している。

 あまりにも急な話だったため、一部のメンバーにしか連絡をまわせなかった。

 本当にすまない」


「そんにゃあ……」

「根回し済みだったのかにゃ……。大人ってきたないにゃ」


「なんと言ってくれもかまわない。

 そして俺は、新生徒会長ファンクラブ設立を宣言する!

 これは旧ファンクラブを移行し、メンバーもそのままだ。

 メンバーの脱退は許されない。

 全員、新会長の補佐の任に当たってもらう」


「えっ!?」

「鞍替えしろって言うの!?」

「そんなこと、許されるわけないでしょ!」


「落ち着け! 今は生徒総会中だ!

 ファンクラブ内部のいざこざを解決する場ではない!

 俺に非難があるのなら、後でまとめて聞いてやる!」



 そこへニャーフック先輩が加勢する。



「確かにそうですね。今は生徒総会です。

 クラブの運営方針を話し合う場ではありません」



 そう念を押されてしまっては、反対分子も黙り込むしかない。



「くっ」

「グルだったかにゃー!」

「覚えてろにゃー!」



 強引なやり方ではあるが、ファンクラブ内部のごたごたはそれで収まったようだが、



「では現時刻を持って前会長は解任されたものとみなします。

 引き続き、新会長の選出を執り行います」



 ニャーフック副会長はそう宣言すると、僕らのところへと歩み寄る。




 やはりそうか。


 仮説は正しかった。


 全ての謎が解けた。



 肩の上に逃げていた僕をニャルミがつかんで胸に抱き寄せる。

 僕の毛皮で手の汗を拭くのはやめてくださいニャー。




「わたしの一存で申し訳ないのだが、新生徒会長候補者を推薦させてもらいます」




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ