怠惰な襲撃の一日編 そのニャー
学園の構造説明回になります
お話をあまり進めてこなかったツケの解消回の一つです
細かい設定とかお好きな方にはネコにマタタビかもしれません
このお話は読み飛ばしても大丈夫かもです
特に前半は学園の設定が中心です
次話冒頭に前回のあらすじをつける予定
唐突だが、この学園の構造について少し解説しておこう。
この学園は正方形のような形であり、その一辺は五百メートルくらいである。
その内部は約百メートルごとに区切られ、全部で二十五のブロックに分けられている。
ブロックごとに土地用途は割り当てられているが、列ごとに大まかに役割が決まっている。
一番西の五ブロックは住宅街だ。
そのうち二ブロックは食堂街や倉庫などに用いられている
残りの三ブロックで教職員と砦守備隊員、およそ三百人が暮らしている。
ちなみに僕とニャルミが住んでいるのもここだ。
それに対して一番東の列は学生寮となっている。
こちらも二ブロックは食堂街や倉庫だ。
そして同じく残り三ブロックに生徒およそ六百人が住んでいる。
人口密度的には倍になるが、ニーオの話ではそれほど手狭でもないらしい。
『成績や寄付金の額などによって、広さや設備に違いがあるみたいです。
とは言っても、最低ランクの僕が住んでいる寮でさえ綺麗だし広いし快適ですよ。
先輩達もやさしいし、みんな楽しくやっております』
魔法使いの卵は準貴族みたいな扱いなんで、それなりの待遇が保障されているのだ。
中央の三列は、西から事務局、商店街、学園校舎として使われている。
それぞれの区域にもそれなりに人が住み込んでいて、学園全体の人口は千人を超える。
また、この学園から五キロメートルほど離れた場所に、なんとかいう街があるそうだ。
生活に必要な物資は一旦その街に集められ、そこから学園に運ばれてくる。
千人以上が生活しているのだから需要もそれなりに多く、ほぼ毎日何かしらの物資が届く。
学園関係者には、その街に家族とともに住んで通勤している人もいるそうだ。
五キロなら馬車や徒歩でも十分通える距離なのだろう。
そういった人も含めて、だいたい毎日百人以上の行き来があるらしい。
学園の内部構造と住人状況についてはそんな感じだ。
次に砦とした見た場合の学園構造を説明しよう。
先程説明した学園の敷地からはみ出るように、四隅に大きな塔がそびえている。
そしてその塔をつなぐように、学園全体を城壁が囲む。
城壁の中間にはさらに小さな塔が立っていて、これが城門の役目も果たしている。
合計八基の塔と城壁が防衛の要だ。
塔は高さは六、七メートルくらいだろう。
屋上からも魔物を狙えるようになっている。
城壁は高さ三メートル、幅五メートルほどだろうか。
魔物の襲撃の際は、この城壁の上から一斉に魔法を放つことになるのだそうだ。
いずれも将来的に増強計画があるようだが、現在は平野部に魔物を侵入させないための地形改良で手一杯らしい。
さて、高さ三メートルという城壁の高さには、やや不安になる生徒もいるようだ。
『でも、魔物を相手にするのにこの城壁の高さは低すぎませんか?
本当に大丈夫なんですか?』
昨日のオリエンテーションで案内された時、生徒の一人がそんなことをたずねた。
すると続けざまに三人の兵士達がそれに答えてくれた。
『砦を守る戦力の大部分は、火術士、つまり火属性の魔法使いたちだ。
その攻撃は、威力の高い投石にたとえることができる。
つまりその特性上、城壁が高ければ術者の安全度は増すのだが、その分命中率は落ちることになる。
命中率と安全性、この二つの最良の組み合わせを模索した結果が、現在の姿なのだ。
ある意味これがベストの高さなんだよ』
『この城壁の高さで人間を相手にするのなら、梯子をかけられたりする心配はある。
けれども魔物にそこまでの知恵はない。
無理やりよじ登ろうともがくか、まわりをうろうろするくらいだ。
城壁に突撃をかましてくることもあるが、それを見越して幅を厚く作ってある。
突破される危険は無いよ』
『この厚みは別の意味でも君達を守ってくれるだろう。
生徒諸君が戦闘に直面する場面は少ないと思うが、もしかしたら城壁の上で魔物と対峙することがあるかもしれない。
しかし心配ご無用、その時はこの厚みが物を言うのだ。
君達はただ後方に引けば良い。それで攻撃を受ける可能性はほとんど無くなるだろう。
そしてすぐに手近な守備兵たちが援護にかけつけてくれるはずだ。
彼らが君たちを守ってくれる。その時は落ち着いて指示に従って欲しい。
もしまだ心配だとしても、これまでこの設備で魔物の侵入を防いできたという実績を信じてほしい』
おそらくこの質問は毎年されるのだろう。
手慣れた答え方を聞いてそう感じた。
詳しいことは明日の夜警説明会で聞いてくれ、と話はしめくくられた。
明日っていうのはつまり今日だけどね。
さて、そんな城壁の高さにあわせるように、街の建物はほぼ全てが平屋建てである。
これは有事の際、見通しを良くして連絡を取りやすくするためだそうだ。
何かが起きても一目で分かるという利点もあるらしい。
『襲撃への防御ってのは、対応までの速度が命運を分ける。
そのために我々は努力を惜しまないのさ。
だから多少不便かもしれないが、こういう構造になっていることを受け入れてほしい』
オリエンテーションで話をしてくれたおっちゃんが、熱っぽくそんなことを語ってくれたのを覚えている。
『僕にはむしろ平屋でありがたいですね。
この足ではちょっとした段差も大変なんですよ』
『そうか、そんな利点もあるんだな』
おっちゃんはそう言って笑った。
以上、街と砦、二つの観点から見た学園の構造の話をしてきた。
説明が足りていないところも多いが、だいたいの様子は分かってもらえたと思う。
話を戻そう。
何故こんな話を長々としてきたのか。
これまでの話を要約すると、この学園は周囲を城壁で囲まれている上に、狭い土地を有効利用しようと建物が所狭しと並んでいるということになる。
ここまで言えばお分かりだろう。
つまり早朝は陽のあたる場所をみつけるのが難しいのだ。
それを言いたかったのだ。
他の猫たちにとっても、陽だまり探しは切実な問題らしい。
この時間日光浴をするためには、高いところに登れば良いと言うのはすぐに分かる。
だけど登りやすくて落ちつける場所は意外と数が少ない。
それゆえ自然にみんな同じ場所へと集まる。
するとどうなるか。
集会が起きるのだ。
そうなのだ! 夜中ではないが、早朝の猫集会なのだ!
そういう事情を推測できたのは、僕の探知能力のおかげだ。
人間の動きにはあまり興味がないけれども、猫達の動きは気になるからね。
……念のために強調しておくけれど、今のことは本当だよ?
女の子達が集団入浴場でどうやって身体を洗っているかとか気になるわけがない。
女の子達がどんな寝相で寝ているかとか気になるわけがない。
ニャン・パラリーの名にかけて誓っても良いけれど、僕はこの学園にきてから一度もそんなところを探ったことがないんだ。
だって女子寮や入浴場は、魔力遮蔽板で囲われちゃってるんだよね……。
覗きたくても覗けないんだよね……。
猫の姿で紛れ込むってのは考えたけれど、それをやったらニャルミに何をされるか分からないからね。
ちなみに男子寮は、予算の都合上現在でも大部分が素通しだそうだ。
その代わりと言ってはなんだけど、少し部屋が広めに作られているらしい。
さて、僕はその情報をニャルカお姉ちゃんから教えてもらっていたので、女の子達を探る無駄な努力はしなくてすんだのだ。
……もとい、面接試験の時に魔力遮断室を作ってくださいとお願いしたのだ。
着ぐるみの着脱のために、そういった部屋がどうしても欲しかったんだよね。
優れた探知能力者に探られない限り、何をやっているのか分からないとは思うけれど、念には念を入れたかったんだ。
結局ニャルミと一緒に全部屋遮断完備の一軒家に住まわせてもらえたので、その心配はなくなったんだけれども。
また話がずれてしまった。元に戻そう。
えーと、まあそういったわけで、猫達がどこで何をしているのか、僕はついつい探ってしまうのだ。
そして昨日の早朝、猫達の集まりを発見したのだ。
学園に住む猫として、そのうち参加せねばと考えていたのだが、それがまさか今日になるとは思いもよらなかった。
そんなわけで、実を言うとまだ心の準備が整っていない。
期待と不安で高ぶった気持ちをうまく処理できていない。
だけど希望はある。
集会に参加することが最良だと、僕の『予感』が告げているのだ。
僕は覚悟を決め、集会場へと猫足を進めた。
おまけ
被るところ多いですが以下設定資料
変更があるかもしれません
◎学園構造
500メートル×500メートル
四隅に塔がはみ出す、サイズは50メートル×50メートルくらい
塔をつなぐように高さ3メートル幅5メートルの城壁が囲む
下図Cと3に門と小さな塔
100メートルごとに区切られ25ブロックの構造
塔ABCDE塔
1■■■■■1
2■■■■■2
3■■■■■3
4■■■■■4
5■■■■■5
塔ABCDE塔
A列:住宅街 守備兵と教師など学園で偉い人たちの住居
3ブロックで300人 1人当たり平均面積100平方メートル
・10メートル×5メートル ×8アパート型 単身用
8畳2部屋 専属管理人さんつきで掃除や簡単な料理など対応
・10メートル×10メートルの家 単身用又は家族用
8畳2部屋+風呂トイレ炊事場+玄関&収納場所
・10メートル×15メートルの家 単身用又は家族用
単身用+6畳1部屋+3畳小部屋2部屋
※ニャスターとニャルミが住んでるのはここ
・10メートル×20メートルの家
住宅街では一番グレードが高い
こちらの地区は全体的にもう少し広い設定でいいかも
A1は倉庫 A3に桜並木と食堂街、軽食、カフェ、食料品店など
B列:事務局 砦運営に関する様々な設備が並ぶ 多くは倉庫
警備部 倉庫 メイドさん達の住居100人 事務員住居100人
仕事は給料支払い、守備隊の装備品管理、建築物の補修整備など
手紙など他の街への連絡事務もここで扱っている
B1は倉庫
B3に守備隊総本部
B5守備兵用の訓練場
C列:商店街 書店、服飾・日用品店、家具店などが軒を連ねる
5キロ先の街からの支店が多く、売れ筋以外は注文も受けている
C3に中央砦と劇場、多目的ホールなど
C1とC5は小広場50x100
C5にはさらに厩舎
D列:学園 校舎、講堂、グラウンド、図書館などが並ぶ
D1グラウンド兼魔法練習場兼作業場
D2グラウンド兼魔法練習場、教員棟、クラブ棟
D3大校舎3棟 1棟9教室 一学年1棟 1教室は通常倉庫代わり
教室の広さは10x10メートル、25人収容
参考:普通の教室は7x9メートルくらいらしい
小校舎2棟 1棟5教室
D4図書館と学生用ホール
学生用ホール50×50メートル 椅子幅50cm 入学式はココ
図書館L字型 魔道書は奥
D5その他学園設備
学園管理用の倉庫や事務棟、事務員住居
学園設備や学生寮の管理清掃、
E列:学生寮 学生寮 600人
1人当たり面積50平方メートル 六畳間=10平方メートルくらい
共有スペースなどを考えれば六畳間×2部屋が平均か
成績や家柄、寄付金などによってかなり変わる
基本ベッド、机、クローゼット据え置き
他に必要な家具や雑貨類など、卒業時に先輩から後輩へ受け継がれることが多い
女子寮及び入浴設備などは魔力遮断処置が施されている
男子寮の遮断設備は一部を除いてあとまわしだが、立替とともに少しずつ増やしている
増員対応でリフォームした寮はもちろん未処置のものだった
学生にもメイドさんがついているところもある A列のメイドさんとは別系列
E3に桜並木と学生向け食堂街、軽食、カフェ、食料品店など 入学式の桜並木はここ
E5は倉庫
・守備兵はA-C列、教職員はA-D列、学生はC-E列が基本生活圏
・倉庫が多い
・生活物資は5km先の街から届けられる
1000人超分の物資は近隣の街や村から『5km先の街』に集められる
・5km先の街には予備兵や休暇中の兵士達など多くの関係者が住んでいる
・家族は5km先の街に住んでることが多い
・職員の中には5km先の街に住んでいて、毎日通ってくる人もいる
・商人など含めて毎日百人以上の出入りがある




